yoga school kailas

ヨギン

 ヨギンは、高貴な家庭に生まれたが、幼いころから精神的な傾向を示し、日に数時間を瞑想に費やしていた。師ラーマクリシュナとの出会いによって、神を悟ることへの渇仰は確固として燃え上り、一日のほとんどを修行と瞑想に費やすようになった。
 このようなヨギンの態度を、家族や親戚たちは大いに心配した。「狂ったブラーミン(ラーマクリシュナ)」の影響を受けて、ヨギンも気が狂い、世を捨ててしまうのではないかと思ったのだ。
 そこで彼らは一計を案じた。当時、実家を離れて叔父の家に暮らしていたヨギンに、実家で誰かが病気になったという嘘の知らせが届けられた。心優しいヨギンは、愛する母親が病気になったのかもしれないと思い、急いで実家に帰った。しかしそれは、ヨギンを結婚させるための策略であった。

 ヨギンは世俗を捨て、一生独身で神の道を歩こうと決意していたが、心優しい彼は、両親の強い懇願を拒むことができず、しぶしぶ結婚に承諾した。

 こうして結婚したヨギンは、もう自分の人生は終わったと感じた。独身の修行生活の決意がくじかれたという事実は、彼の心に重くのしかかり、みじめな気持ちになった。彼は常に暗く不機嫌になり、くよくよし、否定的になり、自分の選択の過ちを深く悔いるようになった。

 また、自分を可愛がってくださり、自分の修行者としての将来に大きな期待をかけてくださっていた師は、自分が一時の心の弱さからそれを裏切ったと知らされたら、さぞ失望するだろうと考えたヨギンは、師の前に顔を見せることすらできなくなった。

 師ラーマクリシュナは繰り返し何度も、自分に会いに来るようにとヨギンに伝言を送ったが、ヨギンはそれを拒み続けていた。

 そんなあるときラーマクリシュナはヨギンの友人に、「ヨギンは以前にカーリー寺院の職員から受け取ったお金を返していない」と伝えた。それを伝え聞いたヨギンは、大変感情を傷つけられた。確かに以前、職員に買い物を頼まれてお金を渡されて、そのわずかなおつりが手元に残っていた。しかし結婚をしたことによってカーリー寺院に行きづらくなり、おつりを返せないままになっていたのだ。とはいえそれは非常にわずかな額であった。そんな些細な話を、わざわざ自分の友人に伝えるとは!
 ヨギンは心傷つきつつ、最後に、そのおつりを返すために、もう一度だけカーリー寺院を訪ねようと決心した。それが最後の師への訪問となるであろうと。

 こうしてヨギンはある日、久しぶりにカーリー寺院の師ラーマクリシュナの部屋を訪れた。
 ヨギンが部屋に入ってくるなり、ベッドの上に座っていたラーマクリシュナは、腰布を小脇に抱えて子供のようにヨギンのもとに駆け寄ると、彼の手を握りしめて、こう言った。

「結婚したからって、それが何だ。私だって結婚しているじゃないか。何を恐れることがあろうか。
 これ(師ご自身を指し)の恩寵があれば、たとえ十万回結婚しても、害を受けたりはしない。
 家住者としての人生を送りたいなら、ここに奥さんを連れておいで。お前の霊性の伴侶になるようにしてあげよう。だが出家修行者として生きることを望むなら、お前の世間への執着を食い尽くしてあげよう。」

 法悦状態に入りつつ語られたこの師の言葉を聞いて、ヨギンはものも言えないほど驚き、そして心の重荷が取り除かれた。現世放棄と神への渇仰心がよみがえり、新たな希望と力強さに満たされた。

 しばらく師と話し、部屋を去る直前に、ヨギンはここへ来た当初の理由である、返していなかったおつりの話を持ち出したが、ラーマクリシュナはそれには全く無関心だった。そこでヨギンは、ラーマクリシュナがおつりのお金の話を友人に伝えたのは、自分をここに来させるための口実に過ぎなかったということに気付いた。ヨギンの師への愛と敬信の思いはより一層強まった。

 ヨギンは他の法友たちと共に師への奉仕と修行に明け暮れるようになった。そして師の死後、完全に世を捨てて出家し、スワミ・ヨーガーナンダとなった。

 師の死後はヨギンは、師の妻のホーリーマザー・サーラダーデーヴィーへの無私の献身的奉仕に特に専念した。

 ラーマクリシュナの約束された出家弟子の中で一番最初に世を去ったのはこのヨギンであった。彼が亡くなったとき、弟子たちのリーダーであったヴィヴェーカーナンダは、「これは終わりの始まりだ」と言って悲しんだ。

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