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聖者の生涯『釈迦牟尼如来』(11)

 さて、その頃、ヴァラナシの地には、ヤサという名の、良家の豪商の息子がいました。彼の性質は柔和で洗練され、季節ごとの宮殿を持ち、日々、美しい侍女達に囲まれて愛欲を満たす日々を送っていました。
 ある夜、侍女達に囲まれて楽しんだ後、ヤサは眠ってしまいました。侍女達も眠ってしまいました。
 夜明けごろ、一番最初に目覚めたヤサがふと周りを見渡すと、侍女たちが、ある者は髪を乱し、ある者はよだれをたらし、醜い姿を顕にして眠っているのを見ました。ヤサはそれを見て、『まるで墓場のようだ』と感じ、現世を嫌悪する心が生じました。そうしてヤサは、『ああ、実に悩ましい。ああ、わずらわしい』と言いながら、黄金のサンダルを履いて、宮殿を出て行きました。

 ちょうどその頃世尊は、戸外で経行をしていましたが、遠くからヤサがやってくるのを見て、座に座りました。そこへヤサがやってきて、『ああ、実に悩ましい。ああ、わずらわしい』と言いました。それを聞いて世尊はこう言いました。

『ここには悩みは無い。ここにはわずらわしさも無い。ヤサよ、こちらへ来て座りなさい。私は、君のために教えを説こう。』

 そこでヤサは大いに喜び、黄金のサンダルを脱ぎ捨てて、世尊の傍らに座りました。
 世尊はヤサに、『順序に従った訓話』を行ないました。すなわち、

1.布施のすばらしさ
2.戒のすばらしさ
3.天界に生まれることのすばらしさ
4.欲望のデメリットと、欲望から解放されること(解脱)のメリット

 これらの教えを段階的に説いていきました。そうして世尊は、ヤサの中に、健全な心、柔和な心、偏見にとらわれない心、歓喜の心、澄み切った心が備わったのを知り、最高の教えである『四つの真理』をお説きになったのでした。その教えを聞いて、ヤサの中に、けがれの無い法眼が生じました。

『およそ原因と条件によって生起する性質のものは、すべて消滅する性質のものである』

と。

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