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アディヤートマ・ラーマーヤナ(23)「バラタ、ラーマの跡を追って」

第八章 バラタ、ラーマの跡を追って

◎ラーマを連れ戻しに行く途上でのバラタ

 大聖ヴァシシュタは聖者たちを引き連れ、大臣たちに囲まれながら、天界の会議そのものであるような王室の会議の中に入った。グル・ヴァシシュタはまるでブラフマー神ご自身のように、その集会の中に座り、バラタをシャトルグナと共に他の席に着くように指示し、次のように、このときに適した言葉をその勇敢なる王子に語った。

「おお、愛しき者よ! 私はそなたの父の命により、そなたを聖別した後、そなたを即位させる。
 おお、気高き者よ! カイケーイー妃はそなたにこの王国を与えるよう王に懇願し、誠実なるダシャラタ王はその約束を遂行するために、われわれにそのことを報告された。
 ゆえに即位式を今、適切なマントラの詠唱と合わせて、この聖者たちの集会の中で執り行う。」

 このように聞くと、バラタはこう言った。

「ああ、偉大なる聖仙よ! 私にとってこの王国は何の用途もありません。
 王の中の王ラーマ様はわれわれすべての支配者であられ、われわれはあの御方のしもべなのです。明日の朝、ただちに私はあなた方皆さんと、カイケーイーという悪魔を除いた私の母方と共に、ラーマ様を連れ戻しに参りましょう。
 私は、ラーマ様が女の殺戮を是認していないという事実がなかったならば、私のあのいわゆる母という者を殺していたでしょう。
 明日の日の出に、私はシャトルグナと共に、あなた方皆さんが私と共に行く準備ができているかいないかにかかわらず、歩いてダンダカの森へと出発いたします。
 ラーマ様が森へ行ったのと同じように、私は木の皮の衣を纏い、果物と根を食べ、地面の上で眠り、髪をジャータにしてここを発ちましょう。私はこの規則を、ラーマ様が帰還されるまで遵守します。」

 このような決意を宣言すると、バラタは無言になってしまった。そしてすべての聖者たちは彼の決意を称えたのであった。

 翌朝、バラタが宣言通りに都を発つとき、スマントラ大臣は馬と象とを伴った軍隊に、彼について行くように指示した。
 カウサリヤーのような王家の女性たち、ヴァシシュタのような聖者たちなどは、皆が一緒になって広大な国の地域を守護しながら、バラタの後ろと横を移動した。
 そしてバラタと彼の従者たちは、シュリンガヴェーラの町に到着した。シャトルグナに命じられた兵隊の者たち等は、ガンガーの岸に野営の準備をしたのであった。

◎グハ王との出会い

 彼の侯国にバラタが到着するのを聞くと、疑いを抱いたグハ王はこう思った。

「バラタ様は大軍を引き連れて到着された。彼は彼の動きについて何も知らないラーマ様に、何か危害を加えるためにやって来たのであろうか? 私はこの心に思うことの真偽を知る必要があろう。彼の意志が良いものであれば、私は彼がガンガーを渡る手助けをしよう。
 しかし彼の意志が邪悪なものであるならば、私と私の縁者と私に従属する者たちは河からすべての舟を隠し、武器を手に持って四方八方から彼らの接近を防ぐであろう。」

 このようにすべての従者たちに指示すると、グハ王は手にたくさんの供物を持って、バラタが野営しているところへ行った。
 彼は多くの友と従属者たちと共に武器を携え、それらの供物を持ってバラタに会いに行き、彼の前に供物を捧げた。
 グハ王はそこでシャトルグナと大臣たちと共にいるバラタを見た。雲のような青い肌のバラタは、ジャータを頭の上で結い、木の衣を身に付け、そして絶えずラーマの御名を唱えていた。そしてグハ王は彼の前にひれ伏すと、自分自身の名を告げた。
 バラタはすぐに彼を抱え起こし、彼を大きな愛を持って抱擁し、彼の幸福について尋ねたのだった。それから彼は非常に優しい声で、その友グハに対してこう言った。

「ああ、兄弟よ! あなたがラグ族の末裔のラーマ様と会ったのはこの場所でありますか? 慈悲深き御顔で純粋な心をお持ちのラーマ様が、あなたを抱擁されたのはこの場所でしょうか? あなたは本当に祝福されています。あなたは蓮華の眼のラーマ様によって話しかけられたことで、人生の目的を果たしたのです。あなたがラクシュマナとシーター様と共にラーマ様に出会った場所を、どうか教えてください。そしてそれらについて話してください。ラーマ様とシーター様がお休みになられたその場所へと私を連れて行ってください。
 あなたはラーマ様に非常に愛されております。そしてあなたもラーマ様に信仰を捧げております。」

 バラタはこのようにラーマを何度も何度も思い出し、眼に涙を溢れさせながら、ラーマが夜を過ごされた場所へと向かった。そこで草の寝床とあちこちでキラリと光るシーターの装飾から落ちた金粉を見つけると、バラタは悲しみに打ちのめされて、ひどく泣いたのだった。

 彼はこのように嘆き始めた。
 
「優美の身体をお持ちのジャナカ王の娘シーター様は、宮殿の上階で柔らかい布団をひいた黄金のベッドで眠っておられるのが常でありました。ああ! シーター様は私の過ちのせいで、草の寝床でラーマ様と共にお休みにならなければならなかったのだ。彼女はいかにしてこの試練に耐えられたのか?
 私がカイケーイーの息子として生まれたのは、私の膨大な罪のせいなのだ。私は至高者そのものであられるラーマ様のこの一切の悲哀の原因となってしまった。
 高潔なるラクシュマナの生まれは、真に多くの実を結んでいる。彼は森で暮らしているのだが、常にラーマ様に侍っていられるのだ。
 ラーマ様の召使いのそのまた召使いにさえ仕えることができたのならば、私の生の目的は達成せられたでありましょう。
 愛しき兄弟よ! あなたがもしラーマ様について何か知っているならば、そのすべてを私に教えてください。私は彼がどこにいようが彼の御許へ行き、すぐに彼を連れ戻すのです。」

 バラタの動機が純粋であると分かり、グハ王は彼に愛情を込めてこう言った。

「主よ、あなたは蓮華の眼をしたラーマ様とシーター様とラクシュマナ様へのそのような信仰心を持っていて、本当に幸せであります。彼は今シーター様と弟のラクシュマナ様と共に、チトラクータ山の近くの苦行者たちが住む隠遁地に住んでおられます。そこはガンガーからそう遠くありません。さあ、共にこのガンガーを渡って、早くその場所へ行きましょう。」

 そのように言うと、彼は速やかにバラタにその軍隊と共に河を渡らせるために、五百隻の舟を集めてきたのだった。グハはバラタ用にと王家の舟を持ってきた。
 彼はバラタとシャトルグナを座らせ、ラーマの母とヴァシシュタはその同じ舟に、カイケーイーとその他の女たちは別の舟に乗せてから、ガンガーを渡り、バーラドヴァージャのアシュラムへとやって来た。少し離れたところに兵隊たちを待機させ、バラタは弟と共にそのアシュラムへと入って行った。

◎バーラドヴァージャのアシュラムにおけるバラタ

 そこに座っているバーラドヴァージャを見ると、バラタは大きな尊敬を持って彼の前にひれ伏した。
 その訪問者は木の皮の衣を身につけていて髪をジャータにしているにもかかわらず、ダシャラタ王の息子であるということを聞いて、聖仙は大変喜んで彼を歓迎し、彼の幸福について尋ねたのだった。

 聖仙は彼にこう尋ねた。

「あなたは今王国を統治しています。なのになぜに木の皮の衣を身につけているのですか? なぜあなたはこの苦行者が住む森へと来たのですか?」

 バーラドヴァージャの言葉を聞くと、バラタは眼に涙を溢れさせながらこう言った。

「ああ、聖者様! 一切の衆生の心をお読みになれるあなたは、常にすべてのことを熟知しております。それにもかかわらず、あなたがこれを私に尋ねられましたのは、真に私の幸運であります。私はラーマ様を森へ追放したカイケーイーの悪しき計画のことは少しも知りませんでした。ああ、偉大なる聖者様! あなたの聖なる真我はこの事実の目撃者でありましょう。」

 こう言うと、バラタは非常に悲しい気持ちになり、聖仙の御足をつかむとこう言った。

「ああ、師よ! あなたは私が無実であるか否かを理解することがお出来になります。
 ああ、聖者様! 誠実なる王ラーマ様が生きておられるならば、私は王国と共に何をすればよろしいのでしょうか? 私はラーマ様の永遠なるしもべにすぎないのです。
 ああ、偉大なる聖者様! ゆえに私はラーマがおられる場所へと行き、彼の御足に跪くのであります。ヴァシシュタ様と優れた民たちと共に、私はラーマ様の即位式を、私が持ってきた一切の必要な材料を使ってここで執り行い、ラーマ様を王として、彼の妻と共にアヨーディヤーへと連れて帰るのです。そして私は彼の最も卑しいしもべとして、彼にお仕えし続けるのです。」

 これらのバラタの言葉に驚き、聖仙は彼を抱擁すると、こう言った。

「愛しき者よ! 智慧の眼を使って、私は起こったことをすでに知ることができていました。後悔してはなりません。あなたのラーマに対する信仰心は、真にラクシュマナのそれよりもさらに偉大であります。
 おお、罪なき者よ! 私はあなたとあなたの従者たちを歓迎致したい。ゆえにあなたは今夜はここで食事を取って泊まり、明日ラーマに会いに行くとよいでしょう。」

 バラタはこの提案に同意した。そこでバーラドヴァージャは無言で彼の供儀の部屋に向かうと、彼の客人の一切の必要なものを満たすことを望んで、天界の牛カーマデーヌを瞑想した。すると、カーマデーヌは物理的な補助なしで、一行のすべての要求したものを創りだした。バラタの要求したものに従って、そのすべてのものがバラタの従者の一団を大いに満足させるように大量に現れたのだ。
 偉大なるヨーギー・バーラドヴァージャはまず最初に、シャーストラに従ってヴァシシュタをもてなし、次にバラタをもてなし、そして彼の一行の他のメンバーをもてなしたのだった。
 この天界のようなアシュラムで夜を過ごした後、バラタは翌朝、聖仙に敬礼し、許可を得てから、ラーマのいらっしゃる所へと、弟と共に出発した。
 チトラクータに着くと、バラタは少し離れた場所に軍隊を待機させ、ラーマに会いたいと強く切望して、シャトルグナ、スマントラ、そしてグハと共に、そこに暮らしている苦行者たちの隠遁所へと行った。彼はラーマの住居をその場所の至る所に探したが、見つけることができず、ラーマとシーターとラクシュマナが暮らしている場所についてそこのリシに尋ねた。

 彼らはバラタにこう話した。

「山を越えたガンガーの北側に、アムラ、パナサ、プッナガ、コヴィダラ、チャンパカ、そしてバナナの木のような果物がそれぞれたわわになっている大きく育った木に囲まれた庵があります。そこであなたはラーマの住処を見つけるでありましょう。」

 そこでバラタは大変喜んで、弟と大臣たちと共にその場所へと向かった。
 バラタと彼の弟シャトルグナは、少し離れた所から、日干しのために木の皮の衣と鹿の皮が掛かっている木のこずえにあり、苦行者たちが度々訪れる、栄光なるラーマの住処を見つけたのであった。

 

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