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アディヤートマ・ラーマーヤナ(12)「ラーマの即位の決定」

第二章 ラーマの即位の提案

◎ラーマの即位の決定

 ある日のこと、ダシャラタ王はグル・ヴァシシュタを密かに呼び、こう言った。

「おお、大聖仙よ。ラーマは、民たち、学者たち、長老たち、そして上記のすべての長たちの全員から、繰り返し繰り返し称賛を受けております。
 ゆえに、おお、聖者よ、私は一切の偉大なる性質を授かり、私の息子の中の長男である蓮華の眼をしたラーマを、私の継承者として即位させたいのです。私はずいぶん年を取ってしまいました。
 バラタとシャトルグナは彼らの叔父の家へと行ってしまいましたが、われわれは明日にでも、速やかにこの即位式を行う必要があります。どうか誠意をもって、この許可を私にお与えください。
 そして、即位式に必要な一切の材料をお集めください。これについての知識をラーマにお与えください。さまざまな色の旗をあらゆるところに掲げてください。
 そして、金や真珠がちりばめられた天蓋や他の装飾を掲揚してください。」

 次に、大臣の長であるスマントラを呼ぶと、王はこう言った。

「聖仙ヴァシシュタが御身に命ずるものを、すべて集めてきなさい。明日、私はラーマを私の継承者として任命する。」

 王の命令に従って、スマントラは大きな喜びを持って、彼がこれに関して為すべきことを聖仙ヴァシシュタに尋ねた。そこで、最も大いなる叡智を有しているヴァシシュタは、彼にこう答えた。

「明日の早朝、正門に十六人の金の装飾で飾られた処女と、宝珠がちりばめられた金の装飾をつけた象を配置しなさい。
 象は、アイラーヴァタの種類の四本の牙を持つ象を準備し、その上に、聖河の水で満たされた多くの金の壺を用意しなさい。
 そして、御身は新鮮な虎の皮を集めてこなければならない。さらに、真珠のペンダントと宝珠がちりばめられた取っ手がついている儀式用の白い傘も同様に必要となるであろう。
 香りの良い花冠、高価な衣、非常に美しい宝石も準備しておくべきである。そして、よく称賛を受け、手にクシャ草を持った聖者を、適した場所に配置させなさい。
 さらに宮殿に、踊り子、演奏家、フルート奏者、そしてさまざまな種類の音楽の楽器のエキスパートなどのそれぞれの種類のアーティストを集めなければならない。
 そして宮殿の外では、象、馬、そして歩兵の軍隊が直立の姿勢で立つべきである。街の一切の寺院の神々は有り余るほどの供物で供養されるべきだ。さらに、従属国の王たちをさまざまな供養のための品々を持たせて集めて来るのだ。」 
 大臣の長にこれらの指示を出すと、ヴァシシュタは自ら、ラーマの眩く輝く宮殿へと向かった。

◎ヴァシシュタの賛美

 大聖仙ヴァシシュタは馬車でラーマの宮殿へと向かい、三つの門をくぐり、そして、その馬車から降りた。
 一家のグルである彼は、許可なく宮殿に入ることが許されている。グルが来るのを見て、ラーマはすぐに、挨拶の合唱をして彼を出迎えに行き、彼の前で完全な礼拝を捧げた。そしてシーターは水を金の器に入れ、ヴァシシュタを宝石で飾られた台座に座らせ、彼の御足を儀式的に洗ったのだった。それからラーマはシーターと共に、その水を自らの頭に振りまき、こう仰った。

「われわれは、御身の御足の水を自らの頭にかけることができて、本当に祝福されております。」 

 このように語ったラーマに、聖仙は微笑みながらこう言った。

「あなたの御足から流れる水であるガンガーを頭に受け、パラメーシュワラは偉大になりました。それと同一の聖なる水は、わが父ブラフマーの欠点の一切を破壊しました。
 あなたが今おっしゃった、私の足の水があなたを浄化するということについてのことは、ただ世間の一般的な教えに過ぎません。なぜならば、あなたは真に至高者であられ、あなたのコンソートであるラクシュミーと共に地球に降誕された、一切の主であられますから。
 私は知っております、おお、ラーマよ。あなたはデーヴァたちのある目的の成就、すなわち、ラーヴァナの滅亡とあなたの信者の心の中の信仰心を生じさせるために、地球に降誕されました。
 その事実はそのようでありますが、デーヴァたちの目的については厳密に保持されるべきです。ゆえに、私は時期を早めては、それ以上は何も明かしませぬ。あなたがあなた御自身の不可思議なる方法で物事を為されますように、定められたときの中にそれをおまかせいたします。ゆえに、私はグルという態度をとり続けましょう。そして、あなたは弟子の態度をとり続けてください。しかし、おお、主よ、あなたは真実には、すべてのグルのグルであられ、すべての父の祖先であられます。
 感覚によっては知覚せられないにもかかわらず、あなたは一切の者の内の遍在者であられ、世界の生成の進み具合を管理し、支えている御方であられます。御自身の意思からのみ降誕されるあなたは、純粋なるタットヴァの身体をおとりになり、あなたのヨーガ・マーヤーの御力によって世界の中に人としてお現れになられたのです。私は司祭職がいかがわしいものだということは承知の上であります。しかし、至高者がラーマとしてイクシュヴァーク王統に降誕されるだろうというブラフマーの言葉を早くに知り、私は、おお、ラーマよ、あなたのグルとして、あなたと関わり合いを持つために、この卑しい司祭職でさえをも受け入れたのです。
 おお、ラグ族の喜びよ! 私の願いは今叶えられました。私はまた、あなたのグルの役割へと戻ります。そしてもしあなたが、弟子がそのグルに借りた恩を返したいと思いますならば、あなたの支配下にあり、全世界を迷妄にするあなたの御力マハーマーヤーが、私をそのように迷妄にしないよう、どうかこの願いをお聞き入れください。
 この特別な状況において、私はあなたの面前で、この場以外で話してはならぬことを暴露してしまいました。それでは、さきほどの訪問の状況へと戻りましょう。私はダシャラタ王に遣われ、ここにやって来ました・・・・・・
 ・・・・・・おお、ラグの子孫よ! 明日、そなたはユヴァラージャ(王権相続者)として任命されるだろう。私はそれをそなたに知らせに来たのである。そなたとシーターは断食し、純潔さと自己制御の規則を遵守し、床の上で夜を過ごすことを義務付けられている。私は今から王のところへ帰る。そなたは明朝、そこへ来なさい。」 

 そのように伝えた後、王家のグル・ヴァシシュタは馬車に乗り込み、大急ぎで帰って行ったのであった。そしてラーマは、傍らのラクシュマナを見て、微笑みながらこう仰った。

「おお、スミトラーの息子よ! お前は、私が明日ユヴァラージャとして任命されるというニュースを知っているか? この件に関しては、私はただ、代理人のようになるだけであろう。お前は真の支配者、娯楽者となるのだ。なぜならば、お前は真に、私の永遠に顕現するプラーナであるからだ。それは疑いのないことである。」 

 そう言うと、彼はヴァシシュタに順守するよう指示された一切の誓いを実行し始めたのだった。

◎カウサリヤーの恐怖

 ヴァシシュタはダシャラタのところに到着すると、起こった全てのことを彼に話した。
 王がラーマを即位させるという意志をヴァシシュタに知らせたとき、その知らせは、たまたまそれを聞いた者たちによって、ラーマの母カウサリヤーとスミトラーに伝わっていた。
 カウサリヤーとスミトラーはこの良い知らせを聞いて大変喜び、知らせを持ってきた者たちに真珠の首輪を贈った。感謝の心持ちで、愛情あふれる母カウサリヤーは、大きな喜びを持ってラクシュミー・デーヴィーを礼拝した。しかし、ある不安が彼女の心をとらえたのだった。彼女は心配そうにこう考えた。

「真理に献身しているダシャラタ王は、御自らが発した言葉を間違いなく貫き通すでしょう。しかし彼は生来、妻に甘く、今はカイケーイーの支配下にあります。ゆえに、彼が最終的に何をするのかが恐ろしい。」 

 そのような不安を持って、彼女は、一切の障害を取り除いてくださるように、ドゥルガーに礼拝したのだった。

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