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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(98)

◎パトゥルと学識のあるゲシェ

 あるとき、ゲルク派のある学識のあるゲシェが、著名な学者ミパム・リンポチェと論争をしようと思い立った。ミパムはそのとき、ザチュカのジュニオン僧院で暮らしていたので、ゲシェはその方向に向かって出発した。道中、彼はふと、その前に数人のニンマ派の学者と論争して、自分の論争の技術を試す必要があると思った。
 ある夜、ゲシェは足を止めて、地元の人々に、この辺で論争をできるほど哲学に精通したニンマ派の学者がいるかどうか尋ねた。ある男が「森の中にある小屋にパトゥルという方がいます。彼は少しばかり経典のことを知っているようですよ」と言った。
 ゲシェは、練習相手になる著名な学者が見つからなかったことにがっかりしたが、それでも一応、森に入って、パトゥルの隠遁所に向かった。パトゥルの隠遁所の助手が、論争の練習をしたいというゲシェが隠遁所に向かってきているとパトゥルに警告した。
 助手がそれをパトゥルに話すや否や、ゲシェが到着した。パトゥルは、使い古した羊の皮のコートを拾い上げて、それを裏返しにして、毛皮の部分が外になるように着た。そして本来足を置くところに頭を置き、枕に足を置いて、寝台に横たわった。
 ゲシェは扉をノックしたが、パトゥルは応答しなかった。数回ノックしたあと、ゲシェはゆっくりと扉を開いた。
 そこでゲシェは、裏返しになった羊の皮のコートを着たパトゥルが、足を枕に乗せ、頭を本来足を置くところに乗せて寝台に横たわっているのを見た。
 ゲシェは言った。

「なぜそのように横たわっているのですか? 頭を置く場所と足を置く場所の見分けがつかないのですか?」

「親愛なるラマさん、あなたはそんなに論理に長けていないようだ。」

 パトゥルは明るく返答した。

「わたしの頭がある場所が枕であり、わたしの足があるところが足を置くべき場所です。」

 困惑したゲシェは、こう述べた。

「羊の皮のコートを裏返しに着ているあなたは奇妙です。毛皮の部分が内側ではなく、外側になっていますよ。」

 パトゥルは肩をすくめて、指摘した。

「わたしは、毛皮の面を外側にし、皮の面を内側に着ています。ちょうど、羊と同じようにね!」

 このピリピリした初対面のあと、ゲシェはパトゥルにニンマ派の見解を聞いた。パトゥルは驚くほど易々と広範囲な知識をもって答えた。

 ゲシェは、パトゥルの隠遁所を発ち、歩きながら考え込んでいた。

「人々は、パトゥルは少しばかり経典のことを知っていると言っていたが、パトゥルと論争をして勝つことができなかった。ならばわたしが、偉大なるミパムと論争して勝てるわけがない。ただ単に自分の顔に泥を塗るだけだ!」

 このようにして、ゲシェは諦めて家に帰ったのだった。

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