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「ヴィヴェーカーナンダ」(11)

 1885年、後に咽頭癌と診断されたラーマクリシュナの喉の痛みが始まり、その症状はどんどん悪化していきました。弟子たちは、頻繁に医師の診断を受けられるように、カルカッタに部屋を借り、ラーマクリシュナはそこに移り住むことになりました。ラーマクリシュナがそこに住んで治療を受けている間、若い弟子たちはかわるがわるやってきては師の身の回りの世話をし、また、家住者の弟子たちは、家賃その他の金銭的バックアップをしました。そしてラーマクリシュナの担当医となったドクター・サルカルは、彼らの献身的な奉仕に感動し、無償でラーマクリシュナの治療を行なうことを約束しました。

 2ヶ月以上のカルカッタでの治療にも効果が見られなかったため、医師は、カルカッタ郊外の空気の良い場所への転地を勧めました。そこでラーマクリシュナは、カーシープルという場所に引っ越すことになりました。

 ここで大きな問題が生じました。これまでは、若い弟子たちが交代で通いながら、ラーマクリシュナの面倒を見ていました。しかし今度の場所はカルカッタから遠いので、通いではとても師への奉仕はできません。家族もその他のことも二の次にして、カーシープルに泊り込み、ラーマクリシュナのお世話をする弟子たちが必要になったのです。

 このころナレーンドラは、大きな二つの問題を抱えていました。一つは法学士試験のための勉強であり、もう一つは、先祖伝来の土地を奪おうとたくらんでいる親戚との訴訟問題でした。この二つの問題が、ナレーンドラがカルカッタから離れることはできない大きな理由となっていました。
 しかしナレーンドラは、あえてそれらへの思いを振り切り、カルカッタから離れ、カーシープルに滞在し、ラーマクリシュナへの奉仕をする道を選んだのでした。それは自分がそのような手本を示さなければ、他の若い弟子たちが、保護者の反対にあったり、勉強や仕事がおろそかになるという理由で、師への奉仕ができなくなると思ったからでした。

 ナレーンドラに触発されて、他の若い弟子たちも、親の反対を押し切って、徐々にカーシプルに泊り込んで、師への奉仕にすべてを捧げるようになりました。最後には、そのような奉仕に身を捧げる若い弟子たちは、12人になりました。

 弟子たちは日々、師への奉仕に明け暮れ、少し時間が空いたときには、ナレーンドラを中心として、瞑想、信仰の歌、聖典の研究、神聖な会話などに日々をすごしました。彼らは至福の流れの中で、月日がたつのも忘れました。 

 ラーマクリシュナが元気なころは、弟子たちは好きなときにドッキネッショルにやってきて、楽しく法を語り合う仲間にすぎませんでした。しかしこのラーマクリシュナの病気に対する一連の奉仕によって、弟子たちの心は今までにないほど強く結束したのでした。そのため、多くの信者が、「師が病気になられた理由の一つは、信者たちの結束を固めるためだったのだ」と信じたのでした。そしてそのリーダーとして、ナレーンドラがいたのでした。

 ある夜、ナレーンドラはなかなか寝付けずにいました。ふときづくと、何人かの若い弟子たちも起きていたので、ナレーンドラは「庭を歩こう」と彼らを誘いました。

 歩きながら、ナレーンドラは言いました。
「師のご病気はきわめて深刻だ。肉体の衣を脱ごうと決めておられるのかもしれない。時間のあるうちに、師へのご奉仕と祈りと瞑想によって、霊的な悟りに至る最善の努力をするのだ。さもなければ師がお隠れになった後、計り知れない後悔をすることになるだろう。
 この仕事を終えてから神に祈ろうとか、あれを終えてから神に祈ろうなどと愚かにも考えて、われわれは時間を無駄に過ごしている。それだから欲望の網に絡め取られてしまうのだ。こうした恐ろしい欲望が、われわれを破滅に導くのだ。そんな欲望は捨ててしまえ! 根こそぎにするのだ!」

 それは寒い冬の夜でした。無限の星空が、地上を見下ろしていました。彼らは樹下に座り、瞑想を始めました。

 しばらくすると、乾いた藁や枯れ草、折れた枝などが積まれているのが目に入りました。ナレーンドラは言いました。
「火をつけよう。サードゥが聖火を燃やす時間だ。われわれも聖火を燃やして、欲望を焼き尽くそうではないか。」

 火をたき、まきをくべながら、自分自身の欲望を供物として捧げているのだと思い描くと、皆の心は、すばらしい至福を経験しました。世俗的な欲望が破壊されて、心が清く澄み切って神に近づくのが感じられたのでした。

つづく

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