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「ヴィヴェーカーナンダ」(12)

 ある日ラーマクリシュナはナレーンドラを呼び、こう言いました。
「私は彼らをお前に任せるよ。彼らがよく修行に励み、そして家には帰らないよう、見てやっておくれ。」

 ラーマクリシュナは、自分の今生の肉体の生命の終わりが迫ってきたことを知り、彼の第一の弟子であるナレーンドラを、将来彼がなすべき偉大な仕事に耐えうるよう、ひたすら訓練をし続けたのでした。
 そしてナレーンドラも、ラーマクリシュナの弟子たちのリーダーとしての自覚を高めていき、様々なかたちで、自分とともにラーマクリシュナに奉仕する若い弟子たちを導いていったのでした。

 ある日、若い弟子の何人かが、ラーマクリシュナのそばに行くのをためらっていました。ラーマクリシュナがかかっている病気は感染するという噂が広まっていたからです。ナレーンドラは彼らをラーマクリシュナの部屋に引っ張っていきました。部屋の片隅には、ラーマクリシュナが食べ残したオートミールの粥が入っているおわんがありました。それは食べ残しなので、ラーマクリシュナの唾液が混じっていました。ナレーンドラはそれを手に取ると、その中身を飲み干しました。これを見て若い弟子たちは安心するとともに、ナレーンドラの師への愛と献身に感動したのでした。

 
 あるとき、ゴーパールという信者がラーマクリシュナに、どこかの修行僧たちに、黄土色の法衣と、ルドラークシャの数珠を贈りたい、と言いました。するとラーマクリシュナは、自分の若い弟子たちを指して言いました。
「この連中よりも良い僧は、どこにも見出せないだろうよ。法衣と数珠は彼らに贈りなさい。」

 そこでゴーパールは、法衣と数珠をラーマクリシュナに布施し、ラーマクリシュナはある儀式を行なって、自分への奉仕のために集っていた若い弟子たちに、それらを分け与えました。
 師への愛によって、師の病気の看護のために、家族も学業も仕事も捨てて集まってきた若い弟子たちは、ナレーンドラを中心に徐々に法友として結束を高めていき、知らず知らずのうちにラーマクリシュナに訓練され、そしてついにここに、出家者の法衣と数珠を贈られたのです。これはつまり、後のラーマクリシュナ僧団の基礎の始まりでした。

  
 最愛の師がもう長くはもたないということを考えるにつけ、ナレーンドラはひたすらに修行に打ち込みました。ある日ナレーンドラはラーマクリシュナに、三、四日間、自由にサマーディに没入できる力がほしいと願いました。するとラーマクリシュナは、こう言いました。

「お前は愚か者だ。それよりもっと高い境地がある。それは、『おお神よ! 汝は存在するもののすべてである』と、お前はいつも歌っているではないか。」

 ラーマクリシュナは、あらゆる衆生の中に神を見、彼らの幸せのために奉仕する道を、ナレーンドラに求めたのでした。

 またあるとき、同じような願いをしてきたナレーンドラに対して、ラーマクリシュナはこう言って叱りました。

「恥を知りなさい! お前はそんなつまらないものを求めているのですか。お前は大きなバンヤンの樹となり、無数の人々がその木陰で休息するようになると、わたしは思っていた。それなのに、いま自分だけの解脱を求めています。」

 このように叱られたナレーンドラは、ラーマクリシュナの心の偉大さを知り、激しく涙しました。

つづく

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