アディヤートマ・ラーマーヤナ(43)「猿の捜索」
第六章 猿の捜索
◎捜索を命じられた猿たち
スグリーヴァとラクシュマナは、少し離れたところに、洞窟の入り口で座っているラーマ――鹿の皮とぼろぼろの衣をまとい、頭頂をジャータで飾り、大きな眼に微笑みを湛え、シーターとの別離に心を乱し、そこに穏やかに座り、近くの鳥や動物を観察しておられるラーマを見つけた。青い肌のラーマを見るや、彼ら二人は馬車から降りて彼に近づき、彼の御足に跪いて礼拝した。
すべての正しい行為のダルマの師であられるラーマは、スグリーヴァを抱擁し、彼の幸福について尋ねると、彼を側に座らせ、伝統に則って彼を歓迎されたのだった。
そしてスグリーヴァは、深い信仰心を表現した態度で次のように言った。
「おお、主よ! ご覧ください。猿たちの強大な軍が集まっております。さまざまな大陸、湖、山々から、無数の猿がここに集結いたしました。彼らは皆、山で生まれましたが、実際はデーヴァたちの一部から生じたのであります。彼らはスメール山やマンダラ山のように大きく、変幻自在であり、また、あらゆる戦の形態を熟知しております。
その上、彼らは皆、凄まじく強いのであります。――ある者は力において一頭の象と等しく、またある者は一万頭もの象と等しい力を有しています。そしてさらに、推定不可能なほどの力を持つ者もおります。それらの猿の英雄たちは、さまざまな肌の色をしております――ある者は白銀色に光り輝き、ある者は黄金色の肌を持ち、ある者は赤い顔をし、ある者は長い尻尾を持ち、ある者は水晶のように澄み切っていて、またある者は悪魔のようです。それらのさまざまな大きさと姿の猿たちは、轟音を立てて自らの戦への熱望を表現しながら徘徊しております。
おお、主よ! これらすべての猿の英雄たちは、根と果物を常食とし、御身の御名のもとにここに集結いたしました。その上、彼らの他にも、賢明で勇敢なるジャーンバヴァット率いる熊の軍隊もおります。
そしてここには、わが名だたる大臣の長であり、偉大なる力と勇気で名高い一千万の猿たちの主将であるハヌマーンがおります。彼は風神の子であり、限りない武勇を持ち、智者の中でも最も優れた者であり、外交術に長けているのです。
次に、おお、ラーマ様! その他のわが将軍たちの名を、位が高い順にお聞きください。ナラ、ニール、ガヴァヤ、ガヴァークシャ、ガンダマーダナ、シャラヴァ、マインダ、ガジャ、パナサ、バリムカ、ダディムカ、スシェーナ、タラ、そしてハヌマーンの気高く強大なる父であるケーシャリー。彼らは皆、偉大なる特質を授かり、好戦的な性質においてはインドラ神と同等のものを持っております。彼らはすべて神から生まれ、一千万の猿の主将であり、御身の命令を遂行するためにここに集結しました。
このヴァーリンの息子のアンガダは、強さにおいてヴァーリンと同格であり、悪魔の軍を滅ぼす能力があります。そしてこれらの他の者たちもそれぞれが皆、山の一部を投げ飛ばすことができ、敵の部隊を破滅させることに長けており、御身のために命を捨てる覚悟をしてここに集まったのです。おお、ラグ族の中で最も気高き者よ! 彼らは皆、すぐにでも御身の命を遂行できますゆえ、お好きなようにお使いください。」
ラーマは、眼に歓喜の涙を浮かべつつ、スグリーヴァを抱擁して、こう仰った。
「おお、スグリーヴァよ! 御身はわれわれが取り掛からねばならぬ使命のただならぬ本質を理解している。ならば、ぜひともジャナカの娘のシーターの居場所の捜索を始めてくれ。」
大いなる歓喜に包まれながら、スグリーヴァは、シーターの捜索に取り掛かるよう、すべての強力な猿の従者たちに命じた。その一方、至る方向にさまざまな種類の猿を派遣しながら、十分な検討の後、彼は従者の中から南方に送るための特別部隊を選抜した。この部隊には特別に、太子アンガダ、ジャーンバヴァット、大勇者ハヌマーン、ナラ、スシェーナ、シャラバ、マインダ、ドゥヴィヴィダが選抜されたのだった。スグリーヴァはこの捜索隊に次のように命じた。
「御身らは、徳高く美しいシーター様の捜索に一寸も努力を惜しんではならぬ。一カ月の猶予の内に捜索を終わらせるのだ。シーター様を発見できなくとも、その期間の経過の後、一日でも遅れて帰還する者は、私の手で、死刑を含む厳しい罰を与える。」
これらの指示を与えて、強力なる猿たちを派遣した後に、スグリーヴァはラーマの御前で礼拝し、彼の側に座った。
旅立とうとしているハヌマーンを見つけると、ラーマは彼を側に呼び、こう仰った。
「シーターに正しく認識できるよう、印として、私の名が刻まれたこの指輪を、ひそかに彼女に渡すのだ。おお、猿の主将よ! 私はお前がこの計画において最重要の使者であると見なしている。お前の武勇は十分に理解した。さあ、行きなさい。どうかお前の努力が実を結ばんことを。」
◎スワヤンプラバとの出会い
王にシーターの捜索を命ざれたアンガダとその他の猿たちは、長い間あちらこちらを探し彷徨っていた。
ヴィンディヤーという名の森で、彼らは鹿と象を食って生きている獰猛で巨大な悪魔に出くわした。
これらの偉大なる猿たちの何人かが、この怪物をラーヴァナだと思い、熱烈な叫び声をあげながら拳でその怪物を殴った。
その怪物がラーヴァナではないと気づくと、彼らは他の森へと向かった。そこで彼らは飲み水の問題に直面したのだった。
喉と舌を乾かせながら深い森を彷徨っていると、彼らは草と蔓の茂みで隠れた大きな洞窟を発見した。
ハンサのような鳥が翼から水を滴らせながらそこから出てくるのを見て、そこの中に水があるに違いないと思った彼らは、その中に入っていくことに決めた。まず最初にハヌマーンがその洞窟に入り、彼に導かれながら、水を見つけることができるという希望に大いに興奮した何人かが、ハヌマーンの手を取りながら彼について行った。
長い暗闇を抜けると、猿たちは非常に奇妙な場所に出くわした。彼らは水晶のように透明な水の湖をそこで見つけた。そしてそこには、それぞれ一つ一つが約十六杯のジュースを作れるくらいの果物でたわわなる、望みを叶える天樹カルパカ・ヴリクシャのような樹があった。
そこで彼らは、精巧に建てられた家々、たくさんの高価な宝石、衣服、素晴らしい食物の材料を見つけた。しかし、その場所には住人がいなかった。非常に不思議に思ってその場所を調べてみると、ある家の中に、木の皮の衣をまとい、完全に瞑想に没頭して座っている光り輝く女性の姿があった。
その猿たちは心を崇敬と信仰心で満たし、その女性苦行者に礼拝した。彼女は猿たちにこう尋ねた。
「あなた方はどこから、何の目的でここへいらしたのですか? あなた方は誰の使者でありますか? なぜあなた方は私の住居に入って来たのですか?」
その問いに対して、ハヌマーンがこう答えた。
「おお、尊き御方よ! 私が、われわれについてのすべてのことをお話しいたしましょう。アヨーディヤーを支配するダシャラタという名の豊かで強力な大王がおりました。気高く名高い彼の長兄はラーマという名でございます。父の命令に従って、彼は妻のシーター様と弟のラクシュマナと共に森に行って暮らされました。そこで、彼の貞淑なる妻が、邪悪なるラーヴァナによってさらわれてしまったのです。その後、ラーマ様は弟と共に、偶然スグリーヴァと出会い、彼と同盟を結びました。同盟者として、スグリーヴァはラーマ様の妻の捜索を開始し、われわれ全員をそのために派遣されたのです。この森を通ってシーター様を探していると、われわれはとても喉が乾いていることに気づき、喉の渇きに駆られて、恐ろしい暗闇の洞窟の中に入って参りました。そして幸運なことに、あなたを偶然見つけたのであります。われわれはあなたがどなたなのか、なにゆえにここに住んでおられるのかを知りとうございます。どうか教えてください。おお、気高き御方よ!」
猿たちを見て非常に喜んだその女性苦行者は、彼らにそこに実っている果物や甘露のような水を、お腹が満たされるまで飲み食べしてから、彼女の物語を聞くようにと言った。猿たちはそれに従い、空腹と喉の渇きを満たした後に、彼女の周りに集まり、合掌して礼拝した。それから、神のようなその女性苦行者は、ハヌマーンを呼んでこう言った。
「昔々のことでした。神のような容姿のヘーマという名のヴィシュヴァカルマの娘がおりました。踊りの能力によって、彼女はマヘーシュワラを懐柔したのです。お喜びになった主マヘーシュワラは、彼女に住処としてこの場所を与えられました。彼女は、長い年月の間この場所に住みました。
私は彼女の友です。私はマハーヴィシュヌに献身していて、解脱を熱望しております。私の名はスワヤンプラバといい、ディヴィヤーという名のガンダルヴァの娘です。
わが友ヘマはブラフマーローカに至る前に、私にこう言いました。
『あなたは、他の生き物のいないこの隠遁地で暮らして苦行をするのです。
トゥレータ・ユガにおいて、永遠なる、朽ちることなき御方、ナーラーヤナが、ダシャラタの子として降誕されます。彼は、地球の重荷を軽くするために、この森を彷徨われるでしょう。
彼の妻のシーターを探しに、猿の部隊がこの洞窟に来きます。彼らに適切なもてなしをなし、そして心からの礼拝をラーマに捧げるのです。その後、あなたはヨーギーの唯一の目的であるヴィシュヌの境地に達するでしょう。』
ゆえに今すぐに、私は急いでラーマに会いましょう。
あなた方皆さんは眼を閉じてください。そうすれば、一瞬でこの洞窟の外に出るでしょう。」
猿たちはそれに従った。気がつくと彼らは、今しがたいた森の中にいたのだった。
◎スワヤンプラバの賛美
次に、その女性苦行者スワヤンプラバはただちにその洞窟を去り、ラーマがいらっしゃる場所へと行った。ラクシュマナとスグリーヴァと共におられるラーマを見るや、その気高き女性は、彼の周りを繰り返し回り、身体全身に鳥肌を立てながら彼の前で礼拝した後、感情で声を詰まらせながらこう言った。
「ああ、偉大なる御方よ! 私はあなたのしもべでございます。あなたにお会いしにここにやって参りました。あなたの御姿を見るために、私は苦行をしながら数えきれない年月の間を洞窟で暮らしてきました。わたしの為した苦行は、今日実を結びました。あなたはすべての者の心の内にも外にも住んでおられるにもかかわらず、マーヤーの範疇を超越しているために目に見えません。その至高者に、私は今、礼拝いたしました。あなたは役者のように、マーヤーというカーテンの裏に隠れております。人間として化身されても、あなたは無智によって視覚を損なってしまった者たちには認識できないのです。あなたは、大望を抱いてバクティを追い求める者たちに対して、信仰を通じて交流を授けるために降誕されました。ああ、至高主よ! 私のようにタマスに浸されている者が、いかにしてあなたを認識できるでしょうか? ああ、ラグ族の主よ! 哲学者たちにはあなたの真の本性を理解させそうと努めてください。しかし、私に関して申し上げると、私はあなたのこの御姿に満足しております。この御姿が永遠に私の心の中で光り輝き続けますように。そして私は解脱の道を示されるあなたの御足を拝見いたしました。
モークシャを追い求めるすべての者たちに真理を明らかにする御方であり、所有を持たない者たちの中の富であられるあなたは、輪廻に沈む者たちの眼には見えず、富や縁者や権力に自惚れている者たちに対しては、言葉の対象にさえもなりえないのです。
プラクリティのグナを超越したあなたに礼拝し奉ります。
あなた以外に何も富を持たない者たちの富であられるあなたに礼拝し奉ります。
永遠にご自身の至福の中に浸っていらっしゃるあなたに礼拝し奉ります。
グナを超越しているにもかかわらず、グナとして顕現されるあなたに礼拝し奉ります。
私はあなたを『時』として見、一切の主として見、始まりも終わりもない御方であると見、すべてのものの中に変化することなく住んでおられる御方であると見、そして一切を超越した至高者であると見ます。
ああ、主よ、誰もあなたの人間としての降臨の不可思議を理解することはできないのです。
あなたにとって、愛しいものはおらず、嫌いなものもおらず、無関心なものもいません。あなたのマーヤーによって視覚を曇らされた者たちは、それらの違いを、あなたに起因するものであると見なします。あなたは生じることなく、行為することなく、一切を支配しているゆえ、デーヴァ、人間、人間に近い生き物の中に化身されたあなたの誕生や行為の物語は、あなたがとられた現われに関することに過ぎないのです。
あなたは本当は不生不滅であられるにもかかわらず、帰依者たちがあなたについての話、救済のための方便としてのあなたの御業を聞くことができるように、あなたはお生まれになるのだと言う者もおります。ある者は、あなたの御降誕は、コーサラ国のダシャラタ王の苦行の達成としてあるのだと言い、またある者は、カウサリヤーの祈りのたまものであると言います。さらに他の者は、ブラフマーの祈りへの返答であると言います。
あなたは、地球から邪悪な悪魔という重荷を取り除くために、人間として降誕されました。ああ、ラグの主よ! あなたの御業や素晴らしい美徳について聞き、歌う者は誰でも、輪廻の海を渡らせてくださるあなたの御足に達するのです。知覚できる対象ではなく、すべてに偏在するあなた――そのあなたのマーヤーのグナの制約によって生じる『私』意識とは異なるあなたを、私は如何にして知り、あるいは称えられるというのでしょうか? 私は、弓矢を身に着け、弟のラクシュマナとスグリーヴァと共におられるラグの主に礼拝し奉ります。」
このように賛美を歌った敬虔な女性苦行者に対して、彼に礼拝した者たちの罪を根絶される御方であられるラーマはこう仰った。
「望むものを言いなさい。」
彼女は素晴らしい信仰心を抱きながらこう答えた。
「私がどんな者の胎内の中に生まれようとも、おお、帰依者たちの主よ、私にあなたへの確固不動の信仰心をお与えください。
私が永遠にあなたの帰依者と結び付いていられますように! そして世俗的な人々とは絶対に付き合うことがありませんように! 私の舌が永遠に信仰心を抱きながら『ラーム、ラーム』とあなたの聖なる御名を唱えますように。
私の心が永遠に――腕輪、足輪、真珠の首飾り、耳飾り、カウストゥバの宝珠で飾り立てられ、光り輝く王冠、黄色の衣、そして弓矢を身に着け、シーターとラクシュマナと共に、青い肌をされたあなたの御姿を思っていられますように。」
ラーマはこう仰った。
「ああ、気高き女性よ! その祈りは聞き入れた。バダリの森に行き、そこで私を思うことで、あなたは五大元素でできているこの肉体を放棄し、ただちに至高者である私に達するであろう。」
ラーマのこれらの甘露の言葉を聞くと、女性苦行者スワヤンプラバは、バダリの森へ行き、そこでラーマを瞑想して肉体を放棄し、至高なる境地に到達したのだった。