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アディヤートマ・ラーマーヤナ(44)「サムパーティとの出会い」

第七章 サムパーティとの出会い

◎猿たちの不安

 猿たちは、シーターの探索で疲弊しきったため、しばらく木の上で休みながら、非常に不安な思いに浸っていた。
 アンガダは、猿たちの一団にこう言った。

「洞窟を彷徨ったおかげで、われわれは探索のために与えられた一カ月の猶予をすでに使い尽くしてしまった。
 それにもかかわらず、いまだシーター様を見つけられておらず、王の命令は達成されていない。今われわれがキシュキンダーに帰ったら、スグリーヴァはわれわれを処刑するであろう。
 とりわけ、彼は私を殺すであろう。私は彼の敵の息子であるからな。彼は私に微塵の愛情もない。ラーマ様がいなかったら、私は生きてはいないであろう。
 ラーマ様の目的を達成できなったからには、邪悪なスグリーヴァはその失敗を口実にして私を間違いなく殺すであろう。
 あの邪悪なスグリーヴァは今、彼にとって母と見なされるべきであろう彼の兄の妻と交際している。ゆえに、おお、猿たちよ、私は彼のもとには断じて帰らぬ。
 だから私は、ここで命を断とう。」

 眼に涙を浮かべながら座っている彼を見た何人かの猿の将軍は、同情して涙を流しながら、彼にこう話した。

「何ゆえにそのように悔やんでおられるのか? われわれが御身を守り、御身の命をお助けいたします。この洞窟の中で一切の恐れなく、共にとどまり続けましょう。
 この洞窟では一切の望みのものが手に入ります。本当にデーヴァの都のようであります。」

 そのように猿たちの間で交わされた内輪の会話を聞いて、人々に慰めを与える能力に長けている風神の子ハヌマーンは、アンガダを抱擁してこう言った。

◎ハヌマーンが皆の恐れを鎮める

 彼はこう言った。

「何ゆえにそのようにお考えになられるのでありますか? そのような悲観的な考えは、御身に相応しからぬことでありますぞ。御身はターラー様のご子息であり、われらの王者に寵愛されているではありませぬか。
 それに、偉大なる能力をお持ちであられる。ラーマ様はラクシュマナにもまして、御身のことを愛しておられます。
 ゆえに、御身はラーマ様を恐れる必要は全くありませんし、とりわけわれらの王については言うまでもありませぬ。私は御身の支持者であります。どうか、思い違いをしたもうな。
 他の猿たちがこの洞窟内の絶対的な安全性について御身に助言したことは、信用なりませぬ。なぜならば、この三界において、ラーマ様の矢が届かない場所などはどこにもないからです。御身に誤った助言をした猿たちと一緒にいてはなりませぬ。なぜならば、彼らは妻子持ちであります。妻子を放棄できずして、どうして彼らは御身と共にいられましょうか?
 私は御身に高度な秘密の真理を解き明かしましょう。おお、ご子息よ! ラーマ様はただの人間ではありませぬ。あの御方は神、永遠なる実在者ナーラーヤナご自身であられます。シーター様は全世界を虜にする彼のマーヤー・シャクティであり、ラクシュマナは全宇宙を支えるアディシェーシャなのです。
 ブラフマー神の祈りに答えて、世界のすべての守護者たちが悪魔の一族を滅ぼすために人間の姿で降誕されました。
 われら猿たちも皆、主の住まう世界ヴァイクンタの住人なのです。至高者が人間の姿をとられたとき、われわれは彼のマーヤーの力により、猿の姿で降誕しました。過去生において、われわれは苦行によって主を懐柔し、彼の祝福を受けました。その結果として、われわれは彼の従者の立場を獲得したのであります。
 今もなお、マーヤーの力によってもたらされたものとして、われわれはあの御方のご奉仕をさせていただき、その後にまたヴァイクンタに達し、幸せに暮らすのです。」

 このようにアンガダを慰めて、ハヌマーンはすべての猿たちと共に、偉大なるヴィンディヤ山へと向かったのであった。

◎サムパーティとの出会い

 その後、シーターを捜索しながら少しずつ前進して行った猿たちは、南の海の沿岸近くにある偉大なるマヘーンドラ山の渓谷に到着した。
 どこまでも陸地がなく、深く、畏怖の念を起こさせるその海を見て、猿たちは皆、怯えあがった。
 彼らはその海岸の傍で歩みを止め、今後どうするかを考えていた。アンガダと他の勇猛なる猿たちは、次に打つ手を共に話し合った。
 彼らはこう考えた。

「あの洞窟を彷徨っていたゆえ、われわれはラーヴァナもシーター様も見つけられずに一カ月の時を費やしてしまった。
 スグリーヴァ様は、非情なる罰を与えるという傾向がある。彼は間違いなくわれわれ全員を殺すであろう。断食して死ぬ方が、スグリーヴァ様の手による死よりましである。」

 このように決め、彼らはダルバ草の寝床を広げてそこに横たわり、断食して死する覚悟を決めたのだった。
 ちょうどそのとき、マヘーンドラ山の洞窟から山のように大きな鷲が出てきて、ゆっくりと彼らが横たわっている場所に近づいてきた。
 断食して死のうとしている猿たちを見るや、その鷲はこう言った。

「食いものがたくさんあるわい。毎日一匹一匹食っていくことにしよう。」

 猿たちはそのような鷲の言葉を聞いて怯えあがった。
 そして彼らはこのように話し合った。

「この鷲はわれわれ全員を食うつもりだ。それに関してはいささかの疑いもない。
 おお、勇猛なる猿たちよ! われらはラーマ様に対していささかの奉仕もしていない。
 それにスグリーヴァ様にも、自分自身に対しても、奉仕を為していない。ゆえに、名誉となる功績なしに、このハゲワシの手で死を下されることで、ヤマの世界に身を委ねようではないか。
 ジャターユを見たまえ――いかにして彼がダルマのために自らを犠牲したことか。ラーマ様の敵に対抗して、彼はラーマ様のために命を捨てたのである。それによって彼は、リシでさえも得ることのできない解放を得たのだ。」

 猿たちのこの言葉を聞いたそのハゲワシのサムパーティはこう言った。

「御身らは、わしにとってたいそう愛しい名であるジャターユのことについて話しておる。どうか、御身らが何者であるかをわしに話しておくれ。おお、猿の英雄たちよ! わしのことは何も恐れたもうな。」

 そこでアンガダは起き上がり、その鷲のところへ行って次のように言った。

「ダシャラタのご子息、ラーマ様が、弟のラクシュマナと奥方のシーター様と共に、この深い森で暮らしておりました。ラーマ様とラクシュマナが狩りに出て行っている間に、邪悪なラーヴァナはシーター様をさらったのであります。シーター様は連れて行かれる間中、『ラーマ、ラーマ』と泣き叫ばれ、ジャターユという名の勇猛なる鷲がその鳴き声を耳にし、ラーヴァナに戦いを挑みました。このようにラーマ様のために戦った末に、彼は英雄なる死を遂げたのであります。
 ラーマ様は彼を火葬されました。それゆえ、彼はラーマ様との合一を得たのです。そしてラーマ様は偶然にスグリーヴァ様と出会い、火(アグニ)を証人として同盟を結ばれました。
 スグリーヴァ様の懇願により、ラーマ様は、誰にも打ち負かすことのできないヴァーリンを殺戮された。このように勇者ラーマ様はヴァーリンから王国を奪い取り、それをスグリーヴァ様に与えられたのです。
 その後、強力なるスグリーヴァ様は、偉大なる力を持つ猿であるわれわれに、シーター様の居場所を突き止めるよう命じられたのであります。

『一カ月以内に戻れ。さもなくば、御身らを罰するであろう。』

――これがスグリーヴァ様のご命令であります。そしてこの山の洞窟の中を彷徨っている内に、われわれは一カ月以上の時を費やしてしまったのです。われわれはまだ、ラーヴァナもシーター様も見つけられておりませぬ。ゆえに、この塩っ辛い海の岸で、断食して死ぬ覚悟を決めたのであります。
 おお、偉大なる鳥よ! もし栄光なる御方シーター様にことについて何か存じておられるならば、どうかお教え願いたい。」

 アンガダの言葉を聞いて、サムパーティはたいそう喜びながらこう言った。

「おお、偉大なる猿たちよ! ジャターユはわしの愛しき弟。長き年月が経過した後に、わしは御身らから弟に関する情報を得ることができた。御身らが探しているものに関する、ある有益な示唆を御身らにお教えいたそう。しかしその前に、弟の葬儀を執り行えるように、わしを海岸へと連れて行っておくれ。
 その後に、御身らの使命に有益なことについてお話しいたそう。」

 この申し出に同意し、猿たちは彼を海岸へと連れて行った。彼は海で沐浴し、死んだ弟に水を献じたのであった。その後に、猿の主将たちは彼を巣に戻した。そしてサムパーティは、猿たちを勇気づける言葉を語り始めたのであった。
 彼はこのように言った。

「トリクータ山の頂に、ランカーという都がある。そこで女悪魔たちに警護されながら、シーター様はアショーカの林に幽閉されておる。そのランカーという都は、海を百ヨージャナ渡ったところにある。鷲に与えられた遠くを見通す能力によって、わしはここから王都ランカーとそこに閉じ込められておるシーター様を見ることができるのじゃ。この百ヨージャナという距離の海を渡り、そこでシーター様を見つけることができる者のみが、彼女の発見という知らせを持って帰ることができるであろう。わし自身も、弟を殺したあのラーヴァナを滅ぼすよう努めたいものであるが、今やわしは翼がない。ゆえに、御身らで何とかして海を渡るのじゃ。その後に、ラグの大将ラーマ様がラーヴァナを滅ぼすであろう。
 さあ、話し合って、御身らの中で誰が、この百ヨージャナの距離の海を跳び越えてランカーに到達し、シーター様と会って話をし、彼女の発見の知らせを持って海を再び跳び越えて戻ってくることができるのかを選定しなさい。」

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