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頭陀の行

 仏教で『頭陀(ドゥータ)の行』というのがあります。
 お釈迦様の死後にリーダーとして教団を率いたマハーカッサパが『頭陀第一』といわれていたのは有名ですが、頭陀の修行は必ずしも全ての人がやらなければいけないわけではありません。

 しかし今日、ヨーガ教室でその話が出たので、参考までに頭陀の修行を簡単に紹介しましょう。

 そういえば前にも書いたような気もするので(笑)、重複する部分もあるかもしれませんが。

 具体的に言うと、まず頭陀の修行とは以下のようなことをすることです。

1 粗末なぼろ布で作った衣を着る。
2 三衣以外は着ない。
3 常に乞食によって飲食を得る。
4 家を選ばず次第に乞食する。
5 一つの席で食事し、終わるまで席を立たない。
6 乞食して与えられた食物だけを食べる。
7 食事をとった後、また食べるということをしない。
8 森林に住む。
9 樹下に座る。
10 戸外に住む。
11 墓地に住む。
12 指定された横臥所に満足して住む。
13 常に座り横臥しない。

 まあつまり主に衣食住に関することですね。
 これらは昔のインドの仏教の出家修行者の話なので、現代の我々にはストレートには当てはめられませんが、少し解説してみます。

 1はお釈迦様の時代からの習慣で、出家修行者は、ゴミ捨て場で見つけてきたような古布を縫い合わせた着物を着ることになっていました。 
 2の三衣というのは、出家修行者に規定された着物ですね。

 3と6は、当時の仏教修行者は食べ物を蓄えることすら許されず、毎朝、托鉢をして家々を回って食事を得ていました。それ以外、たとえば食事を蓄えたり、お金を蓄えてそれで食糧を買ったりということをしてはいけないということですね。 
 4は、あの家はお金持ちっぽいから良い食事が期待できそうだとか、この家は貧乏そうだからやめておこうとか、そういうふうに家を選ぶことなく托鉢するということですね。
 7は、一日一食ということです。ちなみに仏教の出家修行者は、午前中に一食のみ食べ、午後以降は食べることを禁止されていました。

 8~11は、出家修行者は家の中に住まずに、森林、戸外、墓地などを住居とし、樹下に座って瞑想するということです。
 12は、たとえば自分の師などから寝る場所を指定された場合、そこがどんなところであろうとも、頓着せずに満足するということですね。
 13は、夜も横にならないということです。横にならずに24時間修行し続けられれば一番ですが、仮に寝るとしても、横にならずに座ったまま寝るということです。

 だからまあ、現代社会に生きる我々がこの頭陀の行をやるとしたら、次のような感じでしょうか。
・少ない粗末な衣服で満足する。
・一日一食にする。
・食物のえり好みをしない。味覚を追い求めるような食生活をしない。
・夜も横にならずに、座ったまま寝る。
・住居も贅沢をしない。
・可能ならば、たまに森林や野外で寝たりしてみるのもいいかもしれません。

 さて、繰り返しますが、これらの修行は、必ずしも全ての人が行なわなければならないものではありません。しかし経典には、これらを行なった場合に得る徳というのが羅列されてありますので、ご紹介しましょう。

1 行ないがきわめて清浄になる。
2 実践道が良く完成される。
3 身体と言葉による行為は善く守られる。
4 心の行為はきわめて清浄である。
5 よく精勤に励むようになる。
6 恐怖は滅する。
7 無常を知り、諸々の悪しき見解を離れ去る。
8 怒りは静まる。
9 慈愛が心中に確立される。
10 食物に関する正しい観察が完全に会得される。
11 すべての生命たちに尊敬される。
12 食物の適量を知る。
13 夜分の修行に励む。
14 家なきものである。
15 快適な場所ならばどこでも住する。
16 悪を厭う。
17 孤独を楽しむ。
18 常に怠惰でない。

 気をつけたいのは、頭陀の行をやっただけで、上記の要素が身につくとは思えないということです。あくまでも、頭陀の行をベースとして、正しい教えを学び、正しいもろもろの修行を行なうことで、上記の要素が身につくと考えたほうがいいかもしれません。

 また、頭陀の修行を行なうに値する人という条件も挙げられています。

1 信仰ある者
2 悪に対して恥を知る者
3 堅固な者
4 偽らない者
5 目的に向かう者
6 軽薄でない者
7 学習を欲する者
8 学ぶべき事柄を堅く受持する者
9 瞑想を多く修習する者
10 慈愛の心に住する者

 ちなみに頭陀はサンスクリット語でドゥータという言葉の音訳で、原義は、ふるい落とす、払いのける、などの意味があるようです。衣食住へのむさぼりを払いのけ、仏道修行を進む条件を作るということでしょうね。

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