yoga school kailas

解説「ミラレーパの十万歌」第三回(6)

◎強さが必要

 このように、命の熱と、二つの気道に対する、わたしの力は示された。
 瞑想によって起こる四つの病に気をつけながら、
 内的修行を続けることによって、
 冷たいプラーナと熱いプラーナは、精髄となった。
 こうして、怒り狂う風はおさまり、
 嵐は征服されて、その力を失った。
 デーヴァたちの軍隊も、私には匹敵しない。
 わたし、ヨーギーは、この戦いに勝利した。

 トラの皮を着た、誠実なダルマの息子よ。
 わたしは、狐の毛皮を着たことはない。
 巨人の息子よ、私は恐怖から逃げ出したことはない。
 百獣の王ライオンの息子よ、私は常に雪山に住んできた。
 生きるために仕事をするなどということは、わたしには冗談のようなもの。

 はい。まず最初の表現、これもトゥモのヨーガの表現だね。「二つの気道に対する、わたしの力は示された」「命の熱」――これもトゥモの熱のことですね。
 「瞑想によって起こる四つの病」っていうのは、これはさっきもちょっと出ましたが、地・水・火・風ね。つまりわれわれのこの肉体を形成する元素があるわけですが、それが瞑想に入ったときにそのバランスが崩れる場合があります。それによって、まあ、いろんな病にかかる場合がありますよと。
 それは、なんていうかな、よくも悪くもないんだね。つまり病にかかったから失敗っていうわけではないんです。つまりそれはしょうがないっていうことなんだね。もうちょっと具体的なことを言うと、瞑想するとね――ちょっとこれは皆さんにもよく言ってることなんだけど、ヨーガって、最初の段階では健康になります、もちろん。つまり例えば神経の問題でいうと、アンバランスだった自律神経が整ってくるので、とっても健康になります。ね。あるいはもちろん地・水・火・風にしろ、あるいはカパ、ヴァータ、ピッタにしろ、いろんなアンバランスがバランスがとれてきて体が非常に健康になる。そして生命力にもあふれ、「あ、非常にいいですね。」――でもこれは途中段階までなんです。もちろんそのままそれだけで人生を終えてもそれはそれで問題ないんだけど。その人が、「よし、そろそろじゃあ本格的に――ただ健康とかじゃなくて、悟りの修行に入りましょうか」となると、今度は逆に神経のバランスは狂いだします。あるいは肉体のいろんなバランスは狂いだします。だから気を付けないと――気を付けないとっていうか、つまりまあ、それは浄化と言ってしまえば浄化なんだけど、いろんな病気とかが起きる場合があるんだね。でもそんなのは気にせずに――その段階に入ったらね。つまりそれはすべて自分のカルマだから。つまり自分が過去に積んできたいろんな悪業が――もうちょっと物理的な言い方をすると、いろんな悪業がわれわれの体のいろんなところに詰まりとしてあります。で、その詰まりを通そうとするときに病気になるんです。ちょっと物理的に言ってしまうとね。もちろんそれは治そうと思えば治せます。しかし早く浄化したいんだったら、治さず突っ込んだ方がほんとはいいんです。ね(笑)。ここら辺が難しいところです。もちろん治したっていいんだけども、でも治すとまたいったん戻って、また少しずつそこを浄化するっていう感じになるね。でも一気に浄化するときは、その溜まってたいろんなけがれがバーッて噴出するので、ちょっと病気みたいな感じになります。で、体のいろんなところに悪いものが出てきたりする。でも修行者は関係なく修行を進めるんだね。
 チベットの――今はどうか分かんないけど、昔のチベットとかでは、よくね、いわゆる独居修行を、一回三年ぐらいの修行を、一生の内に何回もやると。で、その独居修行中に死んじゃう人もよくいたそうです。つまりまあ、そこで病気になったからって出ちゃいけないんだね。それも自分のカルマと思ってそれと戦いながら、瞑想を続けると。で、それで、「さあ、乗り越えました」っていうハッピーエンドだけじゃなくて、そのまま死んじゃう場合もある。でもそれはそれで、なんていうか、しょうがないって言ったら変だけど、それはそれで本望っていうかな。さっきの話じゃないけど、そういう、なんていうか、激しいところがあるんだね。もともとね、こういう修行っていうのは。もちろんそれは皆さんがどういう道を選ぶかはそれぞれの選択次第だけども、さっきも言ったように、こういうちょっと激しい系のエッセンスも頭に入れといた方がいい(笑)。ね。それでバランスを取るようにしてください。
 だからさ、なんかすごい大病にかかってね、それでも放っておけとまでは言わないけども――それは皆さんが選択すればいいけども――ちょっとぐらいですよ、「ああ、ちょっと風邪ひいた。おれは駄目だ、修行できない」とかね(笑)、そんなのは駄目だと思うね(笑)。ちょっとぐらいの例えば浄化が起きても、あるいはちょっとぐらいの何か――これは病だけじゃなくてね、現実的にいろんな苦しいことが起きても、それはもう自分の浄化なんだって考えて喜んで、頓着せずにね、突っ込んでくと。そういう強さも必要だね。

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする