yoga school kailas

2011年インド修行旅行記(2)「Tさんの振動」

◎Tさんの振動

 このウッタルカシーでの修行合宿中、生徒のTさんの激しい体の振動が止まらなくなってしまいました。これはヨーガ経典にも記述があるダールドリー・シッディまたはプーチャリー・シッディと呼ばれるものの前段階で、本格的なヨーガ修行においては珍しいことではありません。これがもう少し進むと、意志とは関係なく体がものすごく飛び跳ねるようになり、そのために「蛙のように飛び跳ねるシッディ」と呼ばれるのです。わたしもまだ十代の頃、朝から晩まで勝手に体がものすごく飛び跳ねるので、困ってしまった頃がありました(笑)。
 シッディとは「成就」という意味ですが、この場合は修行の完全なる成就というわけではなく、ある段階までの成就を意味します。ヨーガではこのように、実際に心身に起きる神秘的現象をもって、その進度を測るのです。
 ダールドリー・シッディに関しては、経典には仰々しいことが書かれていますが、私の経験では、何段階かの意味があります。その初歩段階の意味は、少なくともクンダリニーが覚醒し、それがスシュムナー管を上昇し、しかしまだある気道の詰まりにぶつかっていることを意味しています。より高度なダールドリー・シッディには、また別の意味があります。
 さて、Tさんの場合は、まだ完全なダールドリー・シッディとまではいかない振動でしたが、それがあまりにも強烈で、ずっと止まらない振動だったので、本人も周りもびっくりしてしまったようでした。
 Tさんはまだ修行を始めたばかりで、以前はよく、「私にどうか神秘体験をお与えください」と神に祈っていたそうです。しかしあるときから、そのような願いを神にしてはいけない、と思い直し、「神秘体験などはいりませんから、どうかあなたへの変わらぬ愛をお与えください」と神に祈るようになったそうです。そのようにエゴを放棄し、純粋な愛だけを願うようになったとたん、このような神秘体験が与えられたので、その素晴らしい法則性に、Tさんも周りの法友たちも感動していました。
 また、私はTさんに、日々の修行メニューを与えていたのですが、それは新人にしてはちょっと厳しく思えるもので、たとえばムドラーという激しい行法を毎日一時間やることなどが課せられていました。Tさんは、教室の法友達のことは大好きなのですが、もともと修行は好きではなく、特にムドラーなどの苦しい行法は大嫌いだったそうです。しかし師である私から指示されたということで、毎日泣きながら一時間、激しいムドラーを続けていました。
 もちろんムドラーはもともとクンダリニー覚醒の技法なので、その効果もあったかもしれませんが、それよりも、師の指示を泣きながらも忠実に守り続けたというその誠実さが、Tさんにこのシッディをもたらしたのではないかと思います。

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