yoga school kailas

「パーンドゥ一家の避難」

(13)パーンドゥ一家の避難

☆主要登場人物
◎ユディシュティラ・・・パーンドゥ兄弟の長男。ダルマ神の子。
◎ヴィドラ・・・ドリタラーシュトラ王の主席顧問。マハートマ(偉大なる魂)といわれ、人々から尊敬されていた。
◎クンティー・・・パーンドゥ王の后。パーンドゥ兄弟の母。
◎ドゥルヨーダナ・・・クル兄弟の長男。パーンドゥ兄弟に強い憎しみを抱く。
◎ビーマ・・・パーンドゥ兄弟の次男。風神ヴァーユの子。非常に強い。
◎ドリタラーシュトラ・・・クル兄弟の父。パーンドゥ兄弟の叔父。生まれつき盲目の王。善人だが優柔不断で、息子に振り回される。
◎ビーシュマ・・・ガンガー女神と、クル兄弟・パーンドゥ兄弟の曽祖父であるシャーンタヌ王の子。一族の長老的存在。

 パーンドゥの家族たちは、ドゥルヨーダナたちにそそのかされてヴァーラナーヴァタの地に行くことになったわけですが、その出発のとき、ヴィドラが、ユディシュティラにこう言いました。

「狡猾な敵の意図の機先を制する人のみが、危険から免れることができます。
 鋼の武器よりも鋭い武器があり、滅亡を免れる賢者は、身を守るすべを知っていなくてはなりません。
 森を焼き尽くす大火事も、穴に身を隠すねずみや、土中にもぐるヤマアラシを損なうことはできません。
 賢者は、星を見ることによって、自分の位置を知るのです。」

 賢者ヴィドラは、ドゥルヨーダナに悪業を積ませたくないために、ドゥルヨーダナの悪しき計画とそれから逃れる方法をパーンドゥ一家に伝えたかったのですが、クル族の者たちもいるところではっきりと言う事はできなかったので、このような暗号的な言葉で伝えたのです。

 ユディシュティラはヴィドラのメッセージの意味を理解し、それを母親のクンティーにも伝えました。こうしてパーンドゥ家は、クル族の悪意を知ったのですが、表面上は気づかぬふりをして、ヴァーラナーヴァタへと旅立ちました。

 パーンドゥ一家がヴァーラナーヴァタにつくと、その地の人々は大喜びで大歓迎しました。彼らがドゥルヨーダナによって用意された宮殿に入ると、ユディシュティラは、宮殿の中を丹念に調べました。そして宮殿の素材がすべて、非常に燃えやすい素材でできていることを知りました。
 しかしパーンドゥ一家は、何にも気づいていないふりをして、その宮殿に住みました。

 しばらくして、一人の男がパーンドゥ一家のもとへやってきて、こう言いました。
「私は、穴掘りに熟練した者です。ヴィドラ様の命令で、あなた方をお守りするためにやってきました。」

 こうしてこの男は、その後、何日もかけて、人々に気づかれぬように、宮殿の中から外へと抜けるための穴を掘り、逃げ道としての地下道を作ったのでした。

 ドゥルヨーダナの手下として、パーンドゥ一家殺害計画を実行するために、プローチャナという男が、ヴァーラナヴァータにつかわされていました。プローチャナは、パーンドゥ一家の住む宮殿の門の前に居を構え、表向きはパーンドゥ一家の世話役を演じながら、彼らを監視し、一年ほどたったときに宮殿に火をつけ、まるでそれが偶発的な事故であったかのように見せかけてパーンドゥ一家を殺すのが、プローチャナの役割でした。

 一年ほどの月日がたち、プローチャナは、そろそろ機が熟したと思い、殺害計画の実行の準備を始めました。また慎重にプローチャナを観察していた聡明なユディシュティラも、ついにそのときがやってきたことを悟りました。そこでユディシュティラは、兄弟と母にそのことを告げました。
 その夜、パーンドゥ家は、召使たちを集めて、大きな宴会を開きました。その狙いは、ドゥルヨーダナたちと通じているこの召使たちに大量の酒を飲ませて眠らせて、自分たちが逃げ出すための隙を作ることでした。

 真夜中、ビーマは自ら先手を打って、宮殿に火をつけました。そしてパーンドゥ一家はこっそりと、秘密の地下道を通って逃げていきました。火は燃えやすい材質でできている宮殿にあっという間にまわり、宮殿を焼き尽くしました。また、宮殿の前に建ててあったプローチャナの館にも炎はまわり、プローチャナも焼け死んでしまいました。

 パーンドゥ一家の住む宮殿が火事になったとき、人々は、「ああ、これはきっとドゥルヨーダナの仕業に違いない。彼は何の罪もないパーンドゥ家の人々を、殺そうとしているのだ!」とうわさしあい、悲嘆にくれました。

 宮殿は完全に灰と化し、後には何も残されていませんでした。人々はパーンドゥ一家も焼け死んだと思い、その報告をハスティナープラに送りました。報告を受け取ったドリタラーシュトラ王の心は複雑でした。愛する息子の思いがかなったという喜びとともに、愛する親戚一族が死んでしまったという悲しみもまたありました。

 ドリタラーシュトラと息子たちは、パーンドゥ一家のための葬儀を執り行い、この火事が自分たちの策略であるということを人々に悟られないように、悲しみに沈んでいるふりをしていました。

 何人かの人は、ヴィドラがそれほど悲しんでいないということに気づいていましたが、それは彼の悟りの境地ゆえであると考えていました。しかし実際は、パーンドゥ一家が無事逃げおおせたということを知っていたからでした。

 何も知らないビーシュマが悲しんでいるのを見てヴィドラは、パーンドゥ一家は実はこっそりと逃げ出すことができたのだとつげ、ビーシュマを安心させました。

 さて、宮殿から遠くへと逃げていったパーンドゥ一家は、疲れ果てていました。そこでビーマは、母親のクンティーを自分の肩に乗せ、四人の兄弟たちを背中に背負ったり腕で抱えたりして歩いていきました。母親と兄弟全員をこのように一人で背負っても、ビーマはまったく疲れることがなく、堂々とした歩幅で、歩いていったのでした。

 ガンジス河にたどり着いたとき、そこでは、彼らの秘密を知る船頭が、一艘の小船を用意して待っていました。彼らはその船に乗り、夜の暗闇の河を渡りました。向こう岸に着くと、森林の中を再び一家は歩いていきました。一晩中歩き続け、疲労が頂点に達したパーンドゥ一家は、森の中で一休みし、そのままぐっすりと眠り込んでしまいました。

 ビーマだけは一人元気で、森を歩き回って池を探し当てると、そこから水を汲んできて家族に飲ませました。そして家族たちが眠る横で一人起きて、深く考え込んでいました。
「森に生える草木でさえ、互いに助け合って平和に暮らしているというのに。だのになぜ、邪悪なドゥルヨーダナやドリタラーシュトラは、親戚である私たちを殺害しようとするのだろうか。」
 心の清いビーマは、どうしても彼らの腹黒い動機を理解することができず、悲しみに沈みました。

 パーンドゥ一家は、多くの困難にぶつかったり、多くの危険を乗り越えたりしつつ、さらに進んでいきました。その旅の途中で彼らは、聖者ヴィヤーサに会いました。クンティー妃が、自分たちに降りかかった不幸について述べると、ヴィヤーサはこう言って彼女を励ましました。
「いかに徳のある者といえども、過去にひとつも罪を犯していないものはいない。
 いかなる罪人といえども、常に悪の中にとどまっておられるほどの悪人はいない。
 人生はあざなえる縄のごとくで、この世の中に、過去に一度も善をなしたことのない者はいないし、また過去に一度も悪をなしたことのない者もいない。
 いかなる人間も、己の行為の結果は自分自身で受けねばならぬもの。さればこそ、悲しみに負けてはならぬぞ。しっかりしなされ。」

 その後、パーンドゥ一家は、ヴィヤーサの助言に従ってブラーフマナの衣装を身に着けて変装し、エーカチャクラの町へ行きました。そこであるブラーフマナの家に滞在し、好機を待つことにしたのでした。

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする