解説「クリシュナ物語」第一回(4)

(二)主はデーヴァキーの胎に宿る
カンサは、他の魔族の王たちと結託して、ヤドゥ族を抹殺する計画にとりかかりました。
その後、デーヴァキーには次々に子供が生まれ、そのたびにカンサに殺されていきましたが、ついに、アナンタと呼ばれる至高者ヴィシュヌの光の一部が、七番目の子供として、デーヴァキーのおなかに宿りました。
そのとき、主ヴィシュヌは、女神ヨーガマーヤーに、次のように命じられました。
「今、デーヴァキーの胎には、わが部分的顕現が宿っている。あなたはそこから彼をとりだして、ヴラジャに住むローヒニーという女性の胎の中に入れてきなさい。
そして私は、わが神的要素のすべてを伴い、デーヴァキーの息子として、地上に降誕するであろう。またあなたは、ナンダの妻ヤショーダーの子として、地上に生まれるのだ。」
主からこのように指示されると、女神ヨーガマーヤーはそれを拝受し、主の周りを右周りに回って礼拝した後、地上に降り、迷うことなく主の指示を実行に移していきました。
まずヨーガマーヤーは、デーヴァキーのおなかに宿っていた胎児を、ローヒニーのおなかに移し替えました。その時、それを知らぬ人々は、デーヴァキーの子供が流産してしまったのだと思い、嘆き悲しみました。
はい。まずここは、次々とそのデーヴァキーの子供がカンサに殺されていくわけですが、ついに七番目と。――まあクリシュナは八番目に生まれるんですが、その一つ前、七番目として、アナンタと呼ばれる至高者ヴィシュヌの光の一部――このアナンタっていうのは、皆さんあのヴィシュヌ神の絵を見たことがある人は分かると思うけど、ヴィシュヌ神ってだいたい後ろにこう蛇が描かれてるんですね。あの頭がいっぱいある蛇ね。あれがアナンタです。あれは至高者の一部といわれている。で、このアナンタがまず降りたわけだね。で、このままだと、つまりアナンタも生まれたらすぐにカンサに殺されちゃうから、ヨーガマーヤー――ここでヨーガマーヤーっていうのは、まあその女神の名前なんですが、これは別名ドゥルガーとかもいわれるんですけど。まあいってみればカーリーとかも同じだけど、マーヤーっていうのはこの宇宙を作り出す神秘的なエネルギーのことですけども、まあその女神だね。つまりこの、なんていうかな、幻の世界である宇宙を創り出す、おおもとの女神みたいなものだって考えたらいいね。だからカーリーとかドゥルガーとか、まあシャクティといってもいいけども、そういうのと同じだと考えていいです。
その女神に指示を与えるわけだね。「自分の一部であるアナンタっていう神がまずデーヴァキーのお腹に入るから、このままだと殺されちゃうから、おまえは行ってそのお腹の中からその赤ちゃんを取り出して、別の所にいるローヒニーという女性のお腹の中に入れてきなさい」と。で、言われたとおりにヨーガマーヤーはその力を使って、デーヴァキーのお腹の中にいた七番目の子供を取り出して、ローヒニーのお腹に入れた。で、そのデーヴァキーはお腹膨れてたのにいきなりなくなっちゃったから、だから当然みんな流産したと思ったんだね。流産したと思って、まあみんな嘆き悲しんだというのがここのところだね。
はい。で、次にいよいよ今度はクリシュナの降誕になるわけですね。
その後、今度は至高者ヴィシュヌ自身が、その神的要素のすべてを伴って、デーヴァキーのおなかに入ったのでした。
宇宙の主がおなかに宿ると、デーヴァキーは光り輝き、顔には晴れやかな笑みが浮かびました。それを見たカンサは、今こそ、自分の命を奪おうとする主ヴィシュヌが、デーヴァキーの胎に宿ったのだと知りました。
しかしカンサは、女性であり、自分の従妹であり、しかも妊娠しているデーヴァキーを殺すのは、自分の名声と繁栄を台無しにする行為であり、自分の寿命も短くなってしまうだろう、と考え、その場でデーヴァキーを殺すことはやめました。そして主の化身がデーヴァキーから生まれ落ちるや否や、殺してしまおうと考えたのでした。
こうしてカンサは、絶えず主ヴィシュヌへの敵意を抱きながら、主の誕生を待ち続けたのです。
彼は座るときも、寝るときも、立つときも、歩くときも、食べるときも、何をしているときも、二十四時間、一瞬一瞬、主ヴィシュヌへの強い敵意の思いをもち続けました。
しかしそのように絶えることなく主に集中し続けた結果、やがてカンサは、全世界が主ヴィシュヌで満たされているという真実を、その眼で見たのでした。
はい。この部分もとても深いっていうか素晴らしいところだね。まずデーヴァキーのお腹についにクリシュナが入ったと。まあヴィシュヌ神が入ったと。で、パーッと、つまり至高者がお腹に入ったわけだから、今までとはちょっと違い、デーヴァキーが光り輝き、晴れやかな笑みが浮かんだと。で、それを見たカンサは、「あ、ついに来た」と思ったわけだね。でもここもなんかちょっとカンサ、いい人なんですけど(笑)、いきなりデーヴァキーごと殺しちゃわないで、つまりまあ冷静になったわけだね。デーヴァキーは妊娠している、しかも自分の従妹であり、そして女性であると。つまりちょっと武士道的な精神を出したわけだね。だからそれを殺すのは、ちょっとそれは名声と繁栄を台無しにすると。そしてそのカルマによって自分の寿命は短くなるかもしれないと。よって、生まれた瞬間に殺そうと思ったわけだね。つまり赤ちゃんだから、生まれたら。その赤ちゃんのうちには何もできないだろうと。だから、生まれたら殺そうって思ったわけだね。
で、それから毎日、「さあ、いつ生まれるんだ」と。「さあ、いつ生まれるんだ」と。早く生まれろと。まだか、まだかと。一瞬一瞬――つまり、あまりにも敵意が強かったんで――つまり中途半端じゃなかったんだね。「あいつ、嫌なやつだな。まあいっか」じゃなくて、「くそー、いつ来るんだ」と。「いつだ」と、「いつだ」と。一瞬一瞬、主ヴィシュヌに集中し続けた。食べるときも歩くときも、立つときも寝るときも――つまりこれは怒りなんだけど、でも集中を二十四時間し続けた。それによって、全世界が主ヴィシュヌで満たされているという真実――つまりこれはバクティヨーガの最高の悟りです。バクティヨーガの最高の悟りっていうのは、これはいつも言うように、よくクリシュナの恋人のラーダーの境地としてもいわれるわけだけど、何を見てもクリシュナに見えると。「あ、この世界は、すべてただクリシュナ、主がいるだけであった」っていう真実があるんだね。これは最高の悟りなわけだけど。このカンサ王も――カンサ王はつまり、もう一回言うけど、ヴィシュヌを憎んでたわけです。でも理由が憎しみであろうが、その超集中を二十四時間向け続けたおかげで、すべてがヴィシュヌだと悟ったんだね(笑)。これはスケールの大きな話だね。うん。つまりもう理由がなんであろうと、至高者を二十四時間思い続けることができたら、悟るんです。これがこの話だね(笑)。
