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要約「シクシャー・サムッチャヤ」(7)「回向」

◎回向

 そして、さまざまな布施によって、もろもろの功徳を積んだ菩薩は、次のような願いを発すべし。

「この功徳によって、清浄なる法において自在となりますように。
 この功徳によって、地獄の住人の悪業が皆、取り除かれますように。
 この功徳によって、動物界や餓鬼界や魔界のもろもろの苦しみが鎮まりますように。」

 また、菩薩は、日常の様々な動作において、次のような願いを起こすべし。

 どこかに行くときには、「願わくば、もろもろの衆生が、菩薩の境地を進み行きますように」と願うべし。

 夜、床に就くときには、「願わくば、もろもろの衆生が、ヨーガ安穏を得ますように」と願うべし。

 何かの光を見たときには、「願わくば、もろもろの衆生に智慧の光が輝きますように」と願うべし。

 稲光を見たときには、「願わくば、もろもろの衆生の無明の闇が破られますように」と願うべし。

 このように、さまざまな場面において、工夫して、単に言葉のみにあらず、強い思いをもってこのように思い、自己の功徳を回向すべし。
 向上心をもって回向すべし。
 歓喜の心をもって回向すべし。
 至高の喜びの心をもって回向すべし。
 正しい喜びの心をもって回向すべし。
 聖なる慈愛の心をもって回向すべし。
 純粋なる愛の心をもって回向すべし。
 守護の心をもって回向すべし。
 楽しい心をもって回向すべし。

 また、次のように願うべし。

「私の功徳によって、一切の衆生が浄土に向かいますように。
 私の功徳によって、一切の衆生が浄土に生まれますように。
 私の功徳によって、一切の衆生が清らかな功徳に満ちた身体を得ますように。
 私の功徳によって、一切の衆生が広大な布施行を成就しますように。
 私の功徳によって、一切の衆生が永遠なる心を得ますように。
 私の功徳によって、一切の衆生が正念を失うことがありませんように。
 私の功徳によって、一切の衆生が無量の悟りを得ますように。
 私の功徳によって、一切の衆生が身口意において完全なる功徳を積みますように。
 私の功徳によって、一切の衆生が無量の善根をもって、一切のブッダを供養し、ブッダと縁が深くなり、ブッダの法を聞いて一切の疑念を離れ、聞いた法を実践し、正しい行ないを具足し、自己の使命を果たし、正念し、精進し、修習し、一切の悪業を滅しますように。
 また、このような回向の功徳によって、私の信・戒・慚愧・教学・智慧・捨離が、完全になりますように。
 一切のブッダにお会いして、すぐれた善根を獲得し、あまねくよく広大なる一切智智を成就しますように。
 一切の世界においてけがれなき眼を得、清浄なる身体を得て、一切の功徳を積むことができますように。
 如来の十の力を完成しますように。
 そして、一切の如来が得ている素晴らしい至福を、一切の衆生もまた皆得ることができますように。」

 シャシュティー・パリナーマノークテーナ・ヴィディナー・パリナーマヤティ(六十回向儀軌)には、次のように説かれている。

「願わくば、一切の衆生が智慧という食物を獲得しますように。
 願わくば、一切の衆生が法の一味を得ますように。
 願わくば、一切の衆生が最上の法楽で充満し、一切のブッダの法をきわめてよく思惟し、とらわれを生ぜず、最上乗・最勝乗・速疾乗・大力乗等にありますように。
 願わくば、一切の衆生がブッダを見ることを熱望し、飽きることがありませんように。
 願わくば、一切の衆生が素晴らしき師と常にともにありますように。
 願わくば、一切の衆生が煩悩を終息させますように。
 願わくば、一切の衆生が無明の暗黒を破りますように。
 願わくば、一切の衆生が優れた光明を見、悩みや障害を見ず、ただ悦・賢さ・善・慈愛・優れた喜びを得て、一切のブッダに会うことができますように。
 願わくば、一切の衆生が戒という香りを具足し、菩薩の戒を破りませんように。
 願わくば、一切の衆生が布施を習慣とし、あまねく一切を捨てますように。
 願わくば、一切の衆生が忍辱を習慣とし、不動の心を得ますように。
 願わくば、一切の衆生が精進を習慣とし、大精進の鎧を身につけますように。
 願わくば、一切の衆生が瞑想を習慣とし、ブッダの現前でサマーディを得ますように。
 願わくば、一切の衆生が菩薩の回向を習慣としますように。
 願わくば、一切の衆生が一切の白い法を習慣とし、一切の不善の法から解脱しますように。
 願わくば、一切の衆生が菩提心をもってもろもろの外道を教化し、素晴らしい楽を得ますように。
 願わくば、一切の衆生がもろもろの輪廻のカルマの苦しみを離れて、安穏を得ますように。
 願わくば、一切の衆生が清らかな仏国土に住し、功徳の住居を得て、最上の一切のブッダの住居より離れることがありませんように。
 願わくば、一切の衆生がブッダに近づき、ブッダとともに遊戯しますように。
 願わくば、一切の衆生が無量の光を得て、ブッダのダルマの光を放ちますように。
 願わくば、一切の衆生が障害なき光を得て、法界の光を放ちますように。
 願わくば、一切の衆生が、至福に満ちた如来の身体を得ますように。
 願わくば、一切の衆生が病から解放され、全智を得て、至福の世界に至りますように。
 願わくば、一切の衆生が、一切の虚空に満ちる広大な正念を得て、あらゆる真理の法をあまねく具足し、妄念に陥ることがありませんように。
 願わくば、一切の衆生が清らかな器となり、過去・現在・未来のブッダの教えを悟り、清浄となり、とらわれから解放されますように。
 願わくば、一切の衆生があらゆる志を達成し、ブッダの境地に至りますように。
 願わくば、一切の衆生が他の一切の衆生の心を害することがありませんように。
 願わくば、一切の衆生が一瞬一瞬の心の中に法界を見て、衆生救済のために一切の世界に赴いても疲れなく、倦怠なく、嫌悪が生じることがありませんように。
 願わくば、一切の衆生がもろもろの素晴らしい至福の行を行ない、もろもろの菩薩の境地を進み行きますように。
 願わくば、一切の衆生が、素晴らしき師と同じ至福の境地を得ますように。
 願わくば、一切の衆生が歓喜して善を実践し、素晴らしき師や法友とともに、至福の中で功徳を積みつづけますように。
 願わくば、一切の衆生が、素晴らしき師が有する善根や清浄さを、同様に自分も得ることを願いますように。
 願わくば、一切の衆生が大乗の行に住して、憂いや闇から永遠に離れ、全智を得ますように。
 願わくば、一切の衆生がもろもろの如来によって守護されますように。
 願わくば、一切の衆生が智慧と徳を守り、世間の一切の感染から解脱しまづように。
 願わくば、一切の衆生が白き法を具足して、心の散乱を起こさず、壊れることなきブッダの法の実践を得ますように。
 願わくば、一切の衆生がブッダの十の力を得ますように。
 願わくば、一切の衆生がブッダの神通力を得て、もろもろの世界を見て、上記のような願いを発しますように。」

 このように、菩薩は、身と心において一切を放棄・布施し、回向すべきなのである。
 このようにする者は、三界のすべての苦しみの因から解脱する。
 そしてこの世にあるときには、その功徳によって、無量の富や幸福が、彼のもとに集まる。
 菩薩はその無量の功徳を使って、すべての衆生を救済する活動を行なうのである。

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