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ライトエッセイ い・・・イーシュワラ

 自在神、自在主。ヨーガスートラの勧戒にはイーシュワラプラニダーナ(自在神の祈念)というのが入っていますね。

 ヨーガスートラといえば……最近、多くの一般のヨーガ教室でも、アーサナだけではなく、聖典の勉強もするようになってきていますね。それはよいことだと思いますが、自分たちのヨーガの原典をヨーガスートラに求めようとする人が多いようです。しかしそもそもヨーガスートラでいうアーサナとは瞑想の座法のことであり、今の日本や西洋で流行っているようなアーサナはヨーガスートラ系ではありません。それらは系統としてはハタヨーガ系ですね。
 また、ハタヨーガ系では、「ハタヨーガはラージャヨーガへ至るための基礎である」などと説かれていますが、ここでいうラージャヨーガをヨーガスートラのヨーガととらえ、ハタヨーガはヨーガスートラのヨーガの準備段階だなどと言っている人たちもいますが、もちろんそれは全く間違いです笑。全然違う系統ですから。ハタヨーガでいうラージャヨーガとは、ヨーガスートラのヨーガのことではありません。堂々と本などに書いている人もいますので、間違えないようにしてください。
 

 さて、太陽礼拝その他の現代的なアーサナは、最近の研究では、その多くが、ヨーロッパから伝わってきた体操やボディビルのものであり、本来のヨーガのものではないようです。
 本来のヨーガのアーサナ、これはハタヨーガ・プラディーピカーなどの聖典に載っていますが、これらは似たものが仏教の密教にもあります。これは、

1.ヨーガ(ヒンドゥー教)で生まれたアーサナが、仏教(密教)に取り入れられた
2.仏教(密教)で生まれたアーサナが、ヨーガ(ヒンドゥー教)に取り入れられた
3.ある時期、ヨーガ(ヒンドゥー教)と仏教(密教)にそのような流れが同時に起きた

この三つのどれかだと思われますが、最近の研究では、意外にも、2が正しいのではないかという見方が多いようです。つまりアーサナはヨーガスートラでもナータ派等のハタヨーガ系起源でもなく、仏教が起源だという説です。

 しかしこの「どっちが先か」というのはどちらでもいいと思います。実際、同時期にヨーガも仏教も密教化し、同じような修行をお互いに刺激を与えながら、取り入れあったり批判しあったりしながら、追及していったのでしょうから。

 たとえばハタヨーガの開祖的存在であるゴーラクシャターナは、仏教でも密教の聖者の一人として数えられています。
 またこのゴーラクシャターナが載っている仏教の密教聖者伝の最初の方に、ミーナパという聖者が出てきますが、この聖者のグルはなんとシヴァ神なんです笑

 また、初期の仏教の密教寺院には、シヴァの像が飾られたりしていました。

 しかし仏教(密教)は、その後、ヒンドゥー教に対する仏教の優位性を示すために、仏教の神がシヴァ神を踏みつけている姿を定型として作ったりしました。でもそんなことはどうでもいいことです。ヒンドゥー教に詳しい人ならわかるように、シヴァ神は踏みつけられるのは得意ですから笑

 さて、話をイーシュワラに戻しますが笑、イーシュワラ(自在神、自在主)とはまあ大雑把にいえば至高者、絶対なる神といっていいと思いますが、狭い意味ではシヴァ神のことを指します。

 ヨーガスートラでは、イーシュワラは、カルマや煩悩によって汚されていない魂であり、古のグル方のグルであると定義されています。

 しかしイーシュワラがシヴァだとしたら、シヴァは苦行者の姿で現されるわけですが、なぜカルマや煩悩で汚されていないシヴァが修行をしなければいけないのか?

 それは皆への見本を示すためですね。

 ところで観音様はアヴァローキテーシュワラといいますが、これはアヴァローキタ・イーシュワラ(観自在)ということです。

 つまり「観るシヴァ」とも言えます笑

 なぜ観音様を持ち出したかというと、観音様という存在が、このシヴァのイメージと被るからです。というのは観音様は「菩薩」、つまり、みんなを救済するためにブッダになることを目指し、修行と救済に励んでいる魂――なわけですが、本当は観音様はもう菩薩を超えてブッダ、如来なんだといわれます。
 ではなぜブッダの境地に達しているのに、菩薩のフォームをとり続けるのか? それも皆への見本のためです。

 観るシヴァ。何を見るのか? 衆生の苦しみをでしょうね。
 この観音様の慈悲の涙から生まれたのが、ターラー女神です。

 ところで、資料を調べていないのでうろ覚えですが、チベット密教やインド密教の世界観でも、色界の最上位の世界に、シヴァを思わせる名前を当てていますね。たしか原始仏教でもそういうのが出てきたように思います。
 
 ライトエッセイなのにちょっと長くなってしまった笑! 

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