第一章 環境
パート2「瞑想」
第一章 環境
四季を通じて、心地の良い場所
――例えば山頂、密林、小島など
とにかく静かな場所、自分がよく集中でき、心が静まる場所において
あなたが言葉で学んだことを超える、完全な光輝を得なければなりません。
◎季節と環境
夏は、葦や竹などでできた小屋、あるいは氷河の近くや高山など、涼しげな場所を修行の場とします。
秋には、密林や、山の斜面や、洞窟など、暑さと寒さのバランスがとれた場所が適しています。また、食物や衣服や活動も、季節に応じたものにします。
冬にも、食物、衣類、寝具、その他を、季節に応じたものに調節しなければなりません
暖かい地方や低地に住むのがよいでしょう。例えば密林や、山の洞穴や、土の家などがよいでしょう。
春は、季節に調和した食物・衣服・活動を選択することが、最も重要な季節です。
山、森、小島など、どんな場所でもかまいませんが、暑すぎず寒過ぎない家を、修行の場とします。
このように、季節その他の条件に応じて、心地よく楽しい、閑静な場所を選ばなければなりません。
◎さまざまな良い環境
山頂は、智慧がクリアになり、心が拡大し、愚鈍さを払いのけることができ、瞑想のステージを進めていくのに適しています。
氷河の近くでは、氷の輝く透明さに影響されて、心や智慧もクリアになります。そこは広い見解を培う場所であり、障害がわずかな場所です。
密林の中では、認識能力はとても落ち着きます。そして心も安定しやすくなります。そこは内側の静けさを養う場所であり、深い喜びの感覚を得やすい場所です。
岩のある場所では、無常の観察と、現世放棄の念は増大します。心の落ち着きと、より広い見解を養うことができます。
河岸は、修行のエッセンスに心を集中しやすい場所であり、解脱の手助けとなる場所です。
火葬場は、大きな天の恩恵がある場所です。そこで修行するなら、素早い達成を得られるでしょう。そこは、生成のステージや完成のステージを達成するために、最も価値のある場所であるといわれています。
◎さまざまな悪い環境
村や町、市場などには、人間や人間でないものが多くいます。そのような騒がしい場所は、修行の初心者にとっては障害となり、彼らを不安定にさせます。
しかし修行において堅固な安定を得た人にとっては、逆にそのような場所は、最も価値ある場所であるといわれています。
間違った宗教の建物、死者の慰霊碑、その他の不浄な場所においては、心が良くない状態となり、嫌悪の心が増大するので、よくありません。
風通しが悪い、空気が淀んだ部屋や洞窟などにおいては、欲望が生じやすくなり、また心の愚鈍や興奮状態などが増大しやすくなります。
悪しき霊的雰囲気があるさびしい一本の木のそば、または同様に魔的な雰囲気がする岩や山などは、心にとって良くありません。多くの障害が生じ、修行にとってマイナスとなるでしょう。
浮浪者のいる場所、毒蛇のいる場所、土地の守護神のいる場所、湖岸、高山の草原、美しい花や果物に満たされた木々のある場所――これらの場所は、最初はとても気持ちが良い場合もありますが、のちに多くの障害が生まれるでしょう。
◎悪い・良い・中立の環境
「悪い環境」とされるものは、最初はとても好ましく感じられる場合もあるでしょう。
しかしのちには、それらは苦しみや障害を生み出します。
「良い環境」とされるものは、最初は恐ろしかったり、苦を感じることもあるかもしれません。
しかし喜びの心を持って修行を続けるなら、それらは最高の恵みを与えてくれ、修行は速やかに達成されるでしょう。
このどちらにも入らない、特に利益も不利益もない場所というものも多くあります。
心は、住んでいる環境に影響を受けます。また修行の進度、心身の健康なども、環境の影響を受けます。よって、修行をする場所の環境に心を配ることは、まず第一に重要なことなのです。
◎瞑想小屋について
瞑想のための小屋は、心の落ち着きを手助けしてくれるようなものでなければなりません。そして、窓や天井から、多くの光が差し込むような部屋ならベストでしょう。
また、「夜の瞑想」と呼ばれる暗闇での瞑想のためには、隙間からわずかな光さえも差し込まない、完全な暗闇の部屋が必要になります。
「昼の瞑想」の場合は逆に、多くの明かりが差し込み、氷河、滝、森などの美しい景色に囲まれ、寒過ぎることも暑すぎることもない部屋であればベストでしょう。
◎二つのタイプの瞑想と、環境の関係
心の安定の瞑想に集中している段階においては、人里離れた場所にあり、フェンスなどで囲まれ、あまり人が近付かないような小屋が必要になります。
心の拡大、あるいはより広い見解を育てていく段階においては、多くの光が差し込む、明るい小屋が必要になります。
また、森林や峡谷などの低くて影の多い場所は、内的な寂静の瞑想に適した場所です。
雪山などの高い場所は、心の拡大や、より広い見解を獲得するために適した場所です。
これらの関係性を知ることは重要です。
◎可能な範囲で適用を
以上、瞑想に適した環境についての一般的な提示を行ないました。
これらの教えの源は、パドマサンバヴァです。
しかし実際的には、これらのセオリーは時代や国その他の条件によって、柔軟に応用して適用させていかなければならないでしょう。
特に現代においては、これらの環境をすべての人が揃えるのは、不可能に近いでしょう。
環境は重要ですが、あくまでも二次的な条件なので、環境設定にのみ振り回されては本末転倒になります。上記の教えを参考に、可能な範囲で環境を整えていくのがよいでしょう。どうしても悪い環境しか設定できない時は、それを吹き飛ばすくらいの熱意と努力で修行しようと考えてください。
また、具体的に自分の瞑想環境をどう設定すべきかわからない時は、師の指示に従ってください。
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