yoga school kailas

要約・ラーマクリシュナの生涯(33)「弟子たちへの様々な指導」(2)

◎ハリシュの話

 ハリシュはたくましい若者だった。美しい妻と幼い息子がいた。しかしラーマクリシュナのもとを数回訪ねたことによって、世俗の生活に対して強い嫌悪感を抱くようになり、ドッキネッショルに滞在するようになった。
 単に社会生活から逃げたいがために家庭生活の義務を放棄してドッキネッショルに住みたがる家長の者などに対しては、ラーマクリシュナは滞在を許さなかった。しかしハリシュの思いは純粋で一途であり、また彼の家には彼がいなくても家族が暮らしていけるだけの十分な蓄えがあったため、ラーマクリシュナはハリシュの滞在を喜んで許した。
 ハリシュは一日のほとんどの時間を、師に対する奉仕と、ジャパや瞑想の実践で過ごした。何事も彼を思いとどまらせることはできなかった。義父は帰宅を求め、妻は激しく泣いたが、彼はどのような懇願も脅しも意に介さなかった。沈黙したまま、ただ自分の理想を貫き続けた。
 ラーマクリシュナは時々、他の弟子たちに、ハリシュの穏やかでひたむきな性質に注目するように言った。
「真の男は生きながらにして、俗事においては死んでいるべきなのだ。ハリシュのようにね。」

 ある日、「ハリシュが完全に家長の責任を放棄して修行に専念しているために、家族がひどく動転している」という知らせがドッキネッショルに届いた。妻は夫との長い別離を悲嘆して、飲食を拒んでいた。しかしそれを聞いても、ハリシュは沈黙したままだった。ラーマクリシュナはハリシュを試すつもりで、こう言った。

「お前の妻がひどく会いたがっているよ。一度帰ってやったらどうかね? 面倒を見てくれる人もいないようなものだ。少しくらいやさしくしてあげても何の害になろうか?」

 するとハリシュは恭しい態度で師にこう答えた。

「今はやさしくすべきときではありません。妻にやさしくすれば、私はマーヤーと執着に負けて、人生の大事な目標を忘れてしまうかもしれません。」

 ラーマクリシュナはこの返事に大変喜び、ハリシュの放棄の精神を称えながら、皆にハリシュの言葉を繰り返し聞かせた。

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