神通力と四つのサマーディ
修行をした人、あるいは修行をしなくても生まれつき、あるいは何らかのきっかけによって、さまざまな神秘的な力や霊能力が目覚める人がいますが、そのような人の言葉を鵜呑みにするのは注意が必要です。また、自分にそのような能力があったとしても、注意が必要です。
なぜなら、それらの能力が正確に発揮されるには、心の浄化すなわち悟りと、心の光すなわち功徳が必要だからです。
悟りとは心の透明さ、功徳とは心の光と言っていいでしょう。
たとえば、青の光があったとします。しかしそれを見る人の心が赤色をしていて、しかも光が弱かったらどうなるでしょうか。その対象は、暗い紫色に見えるでしょう。つまりフィルターがかかってしまうのです。そして心の光が弱いことによって、対象を誤認してしまいます。
お釈迦様も、さまざまな神通力の話をしていますが、お釈迦様の定義によると、これらの神通力が正しく発揮されるのは、四つの瞑想の段階を経た後なのです。それは簡単に書きますと、
①種々の愛欲と不善の法から遠く離れ、思索と煩悩捨断により、心の喜びと身体の楽に浸りきるサマーディ。
②心が静止し、一点集中し、サマーディから生じる喜びと楽に浸りきるサマーディ。
③心の喜びから離れ、捨の心にとどまり、念正智して、純粋な楽の状態に浸りきるサマーディ。
④苦楽を超越し、捨の心による純粋な念のみがあるサマーディ。
これらの四段階のサマーディを経験し、そのあとに出てくる神通力こそが本物なのであり、それ以前のさまざまな能力というのは全て不完全なものであるという認識が必要ですね。
自分自身が何らかの能力を身につけたり、神秘的体験をするようになってきた人は、それにとらわれたり慢心することなく、それをより完全で純粋なものにするために、正しい修行に励むことをお勧めします。そうでないと、その能力は、一時的には利益になるかもしれませんが、そのうちにその人の徳を食いつくし、心を汚し、迷妄を増大し、魔的な世界にその人を引きずりこむ結果となるでしょう。
だからまずはこの四つのサマーディを目指しましょう。そしてできればこの四つのサマーディへの入り方を教えてくれる、良い師匠を探すことです。
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