yoga school kailas

ヴィッダシャーゴル訪問(2)

 八月五日の午後、師はバヴァナートとMとハズラーを伴い、貸し馬車でドッキネッショルを出発なさった。ヴィッダシャーゴルは、ドッキネッショルから六マイル離れた中央カルカッタ、バドゥルバガンに住んでいた。途中、シュリー・ラーマクリシュナは連れと話をなさった。しかし、馬車がヴィッダシャーゴルの家に近づくと、彼の状態が突然変わった。彼は神聖な恍惚状態に圧倒されておしまいになった。このことに気づかないで、Mはラージャ・ラーモハン・ロイが住んでいた別荘を指さした。師はおっしゃった、「今はそんなものに興味はない」彼は忘我の状態に入ろうとしておられたのだ。

 馬車はヴィッダシャーゴルの家の前に止まった。師はMに支えられてお降りになり、Mは道案内をした。中庭にはたくさんの花が咲いていた。家に向かって歩いて行く途中、師はご自身のシャツのボタンを指し、子供のような様子でMにおっしゃった。

「シャツのボタンがかけてない。これはヴィッダシャーゴルの気に障るだろうか?」

「おお、いいえ! そんなことをご心配なさいますな。おんみの周りに何一つ、人の気に障るようなところはありません。ボタンをおかけになる必要はございません。」

とMは言った。師は子供のように素直に、その言葉をお信じになった。

 ヴィッダシャーゴルは62歳ぐらいで、シュリー・ラーマクリシュナより16、7歳年長だった。彼は四方に芝生があり、高い堀に囲まれたイギリス風の二階建ての家に住んでいた。二階への階段を上ると、シュリー・ラーマクリシュナと信者たちは一つの部屋に入った。その部屋の一番奥に、ヴィッダシャーゴルはテーブルを前にしてこちらを向いて座っていた。テーブルの右に一脚の椅子が置いてあり、主人の友人数人が他の側に置かれた椅子を占めていた。
 
 ヴィッダシャーゴルは立ち上がってシュリー・ラーマクリシュナを向かえた。シュリー・ラーマクリシュナは片手をテーブルに置き、長椅子の前にお立ちになった。彼は、前からの知り合いででもあるかのように、ヴィッダシャーゴルを見つめ、うっとりとした様子で微笑なさった。そのままの状態で数分間、じっと立っておられた。ときどき、心を通常の意識に戻そうとして、「水を一杯飲もう」とおっしゃった。

 その間に、家族の若い人々と、ヴィッダシャーゴルの友人や親類数名が周りに集まってきていた。シュリー・ラーマクリシュナはまだうっとりとした状態で、長椅子にお座りになった。
 ヴィッダシャーゴルに学費の援助を乞いに来た17、8歳の若者が、そこに座っていた。シュリー・ラーマクリシュナは若者からは少し離れて座り、放心状態でおっしゃった。

「母よ、この少年は世間に強く執着しています。彼はあなたの無明の世界に属しています。」

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする