ラーマクリシュナ自身が語る修行体験(2)
ラーマクリシュナ「サーダナーの期間中、私はあらゆる種類の驚くべきヴィジョンを得た。私ははっきりと、真我との交流を感じた。私に生き写しの一人の人物が私の体内に入り、六つの蓮華の一つ一つと交流し始めた。これらの蓮華の花弁はつぼんでいたのだが、霊性の交流を経験すると、うつむいていた花は開いて上向きになった。このようにして、ムーラーダーラ、スワーディシュターナ、アナーハタ、ヴィシュッダ、アージュニャーおよびサハスラーラというもろもろの中心にある蓮華は開いていった。うつむいていた花は上を向いていった。私はこれらすべてを目の当たりに見たのだ。
サーダナーの期間中、瞑想をするときには、いつも風のない場所に置かれたランプのちらつかない炎を、心に思っていた。
深く瞑想しているときには、人は外界を全く意識しない。あるハンターが一羽の鳥を狙っていた。婚礼の行列が彼のそばを通り、花婿の親類や友達や、楽隊や馬車や馬などを伴った行列が全部通り過ぎるには相当の時間がかかったのだが、彼は全く気づかなかった。花婿が通り過ぎるのも知らなかったのだ。
ある男が湖で、たった一人で釣りをしていた。しばらくすると浮きが動き始めた。時々その先端が水に触れた。釣り人はしっかりとさおを握り締めて上げる用意をした。そのとき、一人の通行人が立ち止まって、『バネルジさんのお宅はどこか、ご存知でしょうか』と言った。まさにさおを上げようとしている釣り人から返事は来なかった。繰り返し、このよそ人は大声で問いかけた。『バネルジさんのお宅をご存知ではありませんか』だが釣り人は、周りの一切のことに無意識だった。手は震えているし、目は浮きに釘付けになっていた。よそ人はいらいらして立ち去った。
彼がかなりのところまで行ってしまったときに、釣り人の浮きは水中に沈み、さおのひとひきで、彼は魚を釣り上げた。彼はタオルで顔の汗を拭き、よそ人に向かって大声をあげた。
『おーい! ここにきてくれ! 聞いてくれ!』
でも男は振り返ろうとしなかった。しかしあまり幾たびも大声で呼ばれたので、彼は戻ってきて釣り人に言った、
『なぜそんなに大声で呼ぶのですか』
『あなたは私に、何を尋ねたのだね』
『あんなに何度も繰り返して尋ねたではありませんか。それを今になって、もう一度繰り返せというのですか』
釣り人は答えた。
『あの時は浮きが沈みかけていたのだ。だからあなたの言うことは一言も聞こえなかったのです』
人は瞑想の中で、見ることも聞くこともなくなるような状態に達することができる。触られてもそれを意識しないだろう。蛇が、彼の身体に這い上がっても気づかないだろう。彼のほうも、蛇のほうも、互いに相手に気づかないのだ。
深い瞑想状態では、感覚器官は働きをとめる。心は外界を見ない。家の外庭の門を閉めるようなものだ。かたち、味、匂い、手触り、および音という、五つの感覚対象がある。それらは全部、外に置き去りにされる。
瞑想のはじめには、感覚の対象物が、修行者の目の前に現われる。だが瞑想が深くなると、それらはもう彼の邪魔をしない。それらは外に置き去りにされるのだ!
私はなんと多くのものを、瞑想中に見たことだろう! 自分の前にお金の山や、肩掛けや、お菓子の皿や、そして花に飾り輪をつけた二人の女などをありありと見た。
『お前は何がほしいのか。これらのものの中のどれかを楽しみたいのか』
と私は心に尋ねた。
『いや、私は何もほしくない。神の蓮華の御足以外のものはほしくない』
と心は答えた。
私は、ガラス張りの部屋の中にあるものを外から見るように、女たちの内と外とを見た。そして彼女たちの内部にあるものを見た。内臓、血液、汚物、うじ、粘液およびそれに似たようなものだ。」
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