yoga school kailas

パドマサンバヴァの秘密の教え(37)「内側のボーディチッタ」

◎内側のボーディチッタ

 ツォギャルは師にこう尋ねた。

「内側の方法でボーディチッタを生起させるとき、どのように訓練したらよいのでしょうか?」

 師はこうお説きになった。

「これについても、訓練のポイントは12ある。

①エッセンス

 そのエッセンスとは、内側の本質、つまり至高の意味においては、概念はまったく無いということに気が付いていない人たちを助けるという意図を生起させることである。

②定義

 身体または言葉による『外側の』行動に依存することがないので、それは『内側』と呼ばれている。なぜなら、それはあなたの心によってのみ発達するからである。

③分類

 二つの分類がある。大志と実践である。
 大志とは、この本質に気がついていない衆生がそれに気づきますようにと願うことである。
 ただ座ってこれをつぶやくだけでは充分ではない。あなたはすべての衆生がそれに気づくようにするための方法に力を注がなくてはならない。それが実践である。
 ツォギャルよ、あなたが二元的な固定観念から解放されない限り、その実践はかなり困難である。

④実践者の資質

 先に述べた説明に加え、この訓練を修習している者の資質は、概念的な考え方を僅かにしか持っていないことである。
 ツォギャルよ、あなたの心をしばし休養させなさい。

⑤あなたがそれを受け取るべき相手

 あなたがそれを受け取るべき師は、三つのタイプの智慧において訓練し、無我の二重の本質に気づいており、故に八つの世俗的関心事から解放されている師からであらねばならない。

⑥受け取るための儀式

 あなた自身を、主体・客体・行為という概念の三領域から解き放ちなさい。
 すべての世俗的な活動への関心を持つのをやめなさい。
 そして口頭の真の教えを求めなさい。

⑦修行の利点

 あなたの意志は、小乗と間違った道の遥か上に上昇するだろう。
 その効果は、利己心と二元の固定観念のすべてを捨てることと、無我の本質に気づくことである。

⑧修行する理由

 ボーディチッタを生起させる内側の方法を訓練する理由は、すべての衆生を真実の道、つまり、二つの無我の本質に確立させるためである。

⑨修行しないことで生じる欠陥

 これを修行しないことの欠陥は、あなたが無我の本質から外れるだろうということである。真理を学ぶことなく心を変えられていない普通の人々や、間違った哲学学派に入った外道にとっては、個人の自我は条件付けられた五蘊、十二処、十八界としてみなされる。その上、この自我を永久であり、具体的であるとみなすことにより、それを友か敵、自分か他人として固定化する。

 ツォギャルよ、この固定化の危険性を根絶しなくてはならないのだ。
 個々の自我といった概念をもつ危険性とは、エゴや自我の実存を認識することによって、対象物が「自分ではない何か」として現われる。この二元性を認識することによって、「自我」に利益となるものを友としてみなし、「自我」を害するものを敵とみなすだろう。かような渇愛と嫌悪の経験により、あなたは様々な種類の悪業を犯してしまう。これらの行為によって、あなたは輪廻をさまようことになるだろう。

 ツォギャルよ、あなたがこの邪悪な精神を駆逐しないうちは、幸せにはなれないだろう。

 どのようなタイプの人がこの自我を放棄できるのだろうか? 一般的には、全ての仏教徒がそれを放棄している。特に声聞は、明確にそれを捨てている。言うまでもなく、大乗の道に入った我々も個々の自我に意識を固定させることを放棄している。

 声聞は部分的には法無我を認識していると言われ、独覚も完全には認識していないとも言われている。すなわち声聞は法無我を理解せず、物事の存在を間違って主張し、独覚は正確な意味を理解することなく、空である心の本質に固着された状態に住している。

 ツォギャルよ、低い哲学学派を信じることから解放されない限りは、真の意味を認識できないだろう。

 現象そのものを概念化させる危険は、そのような主張と固定観念により、混乱した感情を引き起こすことである。これらにより、あなたは輪廻をさまようことになるだろう。たとえ何カルパの間努力したとしても、それは的外れな努力である。

 どのようなタイプの人が法我を放棄するのだろうか? 
 一般的には大乗の道を行く者すべてがそれを捨てている。
 もし秘密マントラの門をくぐった者が、現象の概念化に固着するならば、それは良くない表われである。

⑩守られるべきポイント

 あなたは無我の意義において自身を鍛えるべきである。それには、二通りある。大志と実践である。

 遵守されるべき大志には三つの重要なポイントがあり、以下に述べる。

①『すべての衆生が無我の意味を常に自覚しますように!』と願う大志を途切れることなく形成する。

②他の人が無我に関して瞑想するのを昼に三回、夜に三回、歓喜する訓練をする。

③無我の意味から外れないように常に懸命に訓練する。

 次に、実践に関する守られるべき二つのポイントには、外側と内側がある。

 四つの外側の訓練を以下に述べる。

①あなたがそれを悟るまで、無我の意味を教える師や法友から自分を分離させないようにする。

②住む場所、国、地域、身分、敵、友に関しての偏愛をやめる。

③無我と空を説いている教えを学び、熟考し、瞑想する。

④自分自身を名前、家族、役割、身体などとするアイデンティティを固定させない。

 四つの内なる訓練を以下に述べる

①外側の物事に関するすべてのラベルと名前は、あなたの心の中に何の実在性もないのだから、名前を存在するものとして捉えない。

②世界とその中に存在するものすべては、実体があるように見えるが、実体は何もない。ちょうど夢や魔法のようであることを認識する。

③どんなものであれ何も存在しないのだが、昼間に三回、夜に三回、様々な対象に固定されているその心を捜し出すこと。

④名前に実体はなく、極端さも無いという意味から外れることがないこと。たとえあなたが自分の心を捜しても、何であるかまったく見つからないのだから。

 この方法で勤勉に自分を訓練することが最も大切なのだ。このように努力することで、あなたは悪霊を殲滅し、輪廻から解脱するだろう。

⑪誓いを失うことと保持することの間の境界線

 あなたがあなたの師から口頭で教えを受けた時が、内側のボーディチッタの誓いを得た時なのである。
 それを失うというのは、自我の非実在性を理解せず、通常の二元的な固定観念を追いかける時である。その瞬間にそれは失われるのだから、確実に対抗策を適用しなさい!

⑫損なわれた時の修復方法

 これまで説明してきた趣旨から外れないようにする訓練をしなさい。そうすれば、二元性に固定された結び目は自動的に解かれるだろう。」

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする