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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(51)

◎ルントクの母からの贈り物

 パトゥルとニョシュル・ルントクは、パトゥルの生まれ故郷ダチュカにある、人里離れた山の隠遁地、カルチュン・コルモ・オルに滞在していた。
 ルントクの母が、贈り物としてバターを送ってきた。ルントクはそれを受け取るや否や、バターの塊をパトゥルに供養した。それは本当に大きな塊だった。

 パトゥルは、しばらくバターの塊をじっと見つめていた。

「ルントクよ、なぜお前の母親のバターは、高僧がかぶる黄色い帽子みたいなのだろうか?」

 そう言うと、さらにパトゥルはつけ加えた。

「うむ、毛皮の飾りの代わりに、周りにルバーブの葉が巻いてあるな。」

 ルントクはパトゥルに、このバターは地元の伝統に則って作られたのだと説明した。毎日、ルントクの母は濃厚な夏のミルクを撹拌してバターにし、撹拌後、そのバターを一層目として敷いた。そして翌日は甘いミルクを撹拌してバターにし、二層目として重ねた。そのときに、一層目と二層目の間に慎重に葉を挟んだ。息子に栄養のつくものをあげようと、ルントクの母は、愛情をこめて毎日毎日、前日のバターの上にその日のバターを、慎重にたっぷりと塗り重ね、新鮮な葉で、優しくそれぞれを包んでいった。それがその地の遊牧民の伝統であった。
 ルントクの母の骨身を惜しまぬ仕事に感銘を受け、心を動かされたパトゥルは、ルントクにバターの塊を返した。

「アーディ!」

 パトゥルは大声で言った。

「お前の母親が、お前のためにどれだけ愛情を込めてこれを作ったか、お前に分かるか? 私には、このバターを食べることなどできぬよ!」

 ルントクは、バターをまた返しながら、こう言った。

「どうか、このバターの供養を受けとってください!」

「いいや、ならぬ。」

 パトゥルは言った。

「とにかくそれは、私の性に合わん!」

 ルントクは強く頼み込んだ。

「どうか、お受け取りください! もし、あなたがこのバターを受け取って、召し上がってくだされば、それは吉兆なる縁を作ることとなりましょう。どうか、これを受け取り、私の母をご加護ください!」

 これにパトゥルは折れて、ルントクの母親と縁を作るために、手作りバターをひと塊受け取ったのだった。

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