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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(26)

◎パトゥルがルントクに心の本性を経験させる

 パトゥルとルントクはよく、ゾクチェン僧院の上方にある草原ナクチュンに続いている坂を、大きなモミの樹があるところまで登った。毎日、パトゥルは新しい「誰もいない場所」へと出向いて行って、独りで修行した。ルントクは、松の木の下に座って修行した。やがてルントクはお茶を沸かし始め、パトゥルが帰ってくると、共に座るのだった。

 たそがれ時に、パトゥルはよく、草原の、ゾクチェン谷を見下ろせる崖の淵にある、視界が開けた場所に行った。そこにフェルトのマットを広げて、仰向けになり、三つの空の修行を行うのだった。

 ある晩パトゥルは、修行を終えて帰ってくると、こう言った。

「なあ、愛しきルントクよ。お前はまだ、心の本性を悟れていないと言っていなかったかな?」

「はい、そうです。」

「知るべきものなど、何もないのだよ。こっちに来てごらん。」

 そばにやって来たルントクに、パトゥルは言った。

「こんな感じで横になって、空を見上げてごらん。」

 パトゥルは仰向けに横になり、ルントクも同じようにした。

「空に輝く星々が見えるか?」

「はい。」

「ゾクチェン僧院の方から犬の遠吠えが聞こえるか?」

「はい。」

「われわれ二人が話しているのが聞こえるか?」

「はい。」

「うむ。それが”それ”だ。」

 ルントクは、後に自分の弟子にこう語った。

「あの瞬間、私は、裸の空の意識の智慧を経験したのだ! 揺るぎない確信が、私という存在の奥底から湧き上がってきて、私をすべての疑念から解放してくれた。」

 師匠の存在とルントク自身の長年の瞑想修行が、その瞬間、吉兆な縁を引き起こし、原初の智慧、意識と空性の不可分の合一という深遠な悟りを生み出したのだった。

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