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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(16)

◎パトゥルのお茶の贈り物

 偉大なるゲルク派の学者ミンヤク・クンサン・ソナムは、パトゥルの近しい弟子の一人であった。彼は十二年以上もパトゥルに師事し、パトゥルに身も心も捧げ切っていた。
 あるとき、彼らが共にしばらく時を過ごした後に、クンサン・ソナムが去ろうとしていると、パトゥルは彼に、別れの手土産として一冊の本をプレゼントした。そしてそれと一緒に、一塊の茶葉を両手にのせて(チベットでは、人に物をあげる際の礼儀正しい動作)、彼にプレゼントした。パトゥルは彼にこう言った。

「道中、お茶を飲むといい。」

 クンサン・ソナムの心に、パトゥルに対する強烈な信仰心が湧き上がった。クンサン・ソナムは一塊の茶葉を良質のフェルトの入れ物で包み、その良質なフェルトの入れ物を、色とりどりの絹の錦織袋で包んだ。彼はどこへ行こうとも、その絹の錦織袋を持っていった。どこで寝るときも、錦織袋を恭しく頭の上に吊るして寝た。ときどき、彼は頭の上にその錦織袋を当てて、パトゥル・リンポチェに祈り、信仰の涙を流したのだった。
 毎年、年はじめの日に、ミンヤク・クンサン・ソナムは色とりどりの絹の錦織袋を開き、そして良質のフェルトの入れ物を開け、茶葉を取り出した。

「今日は、パトゥル・リンポチェのお茶を入れよう!」

 彼は周りの者たちにこう言って、茶葉の塊から少し茶葉を崩した。そして、恭しくこう言うのだった。

「パトゥル・リンポチェご自身が私にこのお茶をくださったのだ。――ご自身の両手で渡してくださったのだ!」

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