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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(15)

◎あるゲシェーとの出会い

 ミンヤク訪問中に、パトゥルは、ゲルク派の偉大な学者(ゲシェー)である、ダワ・ゲーシェー・ツルリム・ナムギャルを訪ねた。二人はプラジュニャー・パーラミター(智慧の完成)についてさまざまな見地から論じ合った。

 パトゥルの学識と深遠な理解に感銘を受けたそのゲシェーは、パトゥルに名前を尋ねた。

「私はパルゲ。カムのダチュカ出身です。」

 パトゥルは気軽な調子でこう答えた。

 パトゥルが去った後、ゲシェーは自分の従者にこう言った。

「スートラに関しては私は少しばかり学んでいるが、スートラとタントラの両方に関しては、パルゲという男の学識に勝るものはいない! 彼は別格だ!」

◎「お前はそれを台無しにしおった!」

 あるとき、みすぼらしい身なりの放浪ラマが、裕福な遊牧民の家族の巨大な野営地に着いた。彼はメインのテントを訪ね、数日間宿を借りてもいいかと聞いた。その家族は、字の読み方を知っているなら歓迎すると言った。彼は、「はい、文字の読み方は知っています」と言った。その家族は、メインのテントの入口の隅のわずかな場所を彼に提供した。彼はそこに腰を据え、読経や祈りの読誦を始めた。

 メインのテントの中では、この野営地で非常に重要なある儀式を指揮するためにやって来る予定の、ゲルク派の大学者ミンヤク・クンサン・ソナムを迎え入れるための準備に、皆が忙しくしていた。その準備は何日間も続いた。

 そしてある日、突然皆が外に一斉に飛び出していったのを、放浪ラマは見た。偉大なるラマの御一行が、ちょうどやって来るところだったのである! 偉大なるラマを歓迎し、彼の祝福を受けるときがやって来たのだ。

 人々は、みすぼらしい放浪ラマにも、すぐに外に出るようにと大声で叫んだ!

 ミンヤク・クンサン・ソナムは、それぞれが長い儀式用の旗を持った大勢の立派な従者たちを引き連れて、馬の背に乗って到着した。そこに集まった全員が、すでにそのラマに向かって五体投地を始めていた。

 ミンヤク・クンサン・ソナムは、ふと、テントの中からみすぼらしいラマが出て来るのを見た。すると突然、人々から非常に尊敬されているその大学者が、かなり背の高い馬から飛び降りて、そのみすぼらしい放浪ラマに五体投地をし始めたのだった。

 群集は、そのみすぼらしい放浪ラマが、実は偉大なるパトゥル・リンポチェであったことを知って、ひどく驚いた。

 群集全体の前で、パトゥルはその偉大なるミンヤク・クンサン・ソナムを叱り始めた。

「この一家の優しさによって、私は住みよい場所を見つけたのに、今お前はそれを台無しにしおった!」

 パトゥルはすぐに出ていこうとしたが、そこに居合わせた人たち全員の懇願に折れて、最後にはそこにもうしばらく居続けることに同意したのだった。

 そして偉大なるミンヤク・クンサン・ソナムは、もう二度と馬の背には乗らず、どこへでも歩いて行き、シンプルな隠者の生活を送ると誓った。

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