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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(100)

◎蓮華の木立の戯れ

 カムのデンコク地方にある美しきディチュ渓谷には、ジムポン・ツァンという富裕で有力な一族が暮らしていた。その一族の顔立ちの美しい息子タシ・ゲレクは、ジュ・ツァン・ゴンポ・ダルギェーの若い娘と深く恋に落ちた。
 タシはその若い女に求婚した。家族は同意し、二人は結ばれたのだった。二人は非常に恵まれた夫婦だった。二人ともダルマに対して心が向かっていて、なおかつ愛し合っていたのだ。しかし、彼らの幸福は長くは続かなかった。恐ろしい伝染病がディチュ渓谷全土に蔓延し、多くの人々が突然健康を損ない、多くの人々が亡くなった。そしてタシ・ゲレクの最愛の若い新婦もその中に含まれていた。
 タシ・ゲレクは完全に悲しみに打ちひしがれてしまった。あとに残されたその新婚者は、隠者パトゥルを探し出して助言を求めるために、山へと向かうことにした。
 パトゥルはそのとき、標高の高い山の隠遁所に住み、大きな川谷を見下ろすことのできる聖地、「蓮華水晶の洞窟」で瞑想修行をしていた。
 タシの懇願に応えて、パトゥルは「蓮華の木立の戯れ」という作品を書いた。それは、二匹の蜂の寓話である。
 「大きく開いた蓮華の翼」という名の金色のオス蜂と、彼の恋人である「甘い蓮華のメロディ」という名の青緑色のメス蜂が、美しい蓮華の木立で一緒に暮らしていた。それぞれが素晴らしい性質を持っていた。オス蜂は、強く、若く、知性的で、気前がよかった。メス蜂は、生まれつき優しく、親切で、穏やかで、徳に満ちていた。夫婦として、二匹は仲睦まじく、円満であり、互いにずっと愛し合い続けた。
 オス蜂は、世界の無常性に気づいており、妻にダルマの教えを追求するように勧めた。彼女も、条件づけられた存在の不完全性に気づいていたので、心から同意した。彼女はこう言った。

「非常に美しいけれど、束の間のもの
 輪廻とはそのようなもの

 素晴らしいけれど、束の間のもの
 富という幻影とはそのようなもの

 楽しいけど、苦しい
 実体のない感覚の喜びとはそのようなもの

 本質的には、まったく何も存在していない
 ――それが輪廻の世界!」

 二匹の蜂は大聖者のもとへ行き、恭しく教えを懇願した。その聖者が彼らに教えを説き、すべての道の段階の重要なポイントを、最初から最後まで詳しく解説した。

「エマホ!
 素晴らしい!
 解脱への道の至高の光の導きは
 善き性質に恵まれた霊性の友である。
 この堕落した時代において、彼の行為は、ブッダのそれに等しい。
 彼の限りなき慈悲と慈愛は、ブッダよりもさらに偉大である。
 道を歩む本当の霊性の友に頼らないということは
 盲目の男が導き手なく、道を歩くというようなもの。
 
 (人間は)幸福を渇望しているのに、苦しみの因をずっと積み続けている。
 慈愛と慈悲で心を満たし、すべての衆生の苦しみを消し去ると誓い
 限りなき勇気という鎧を身にまといなさい!
 他者と自分とを等しく見る訓練をしなさい。
 自分と他者を交換する訓練をしなさい。
 そして、自分よりも他者を大切にしなさい。」

 二匹の蜂は、これらの教えを深く心に刻み込んだ。彼らは日々の大部分を教え通りに生き、世俗的な喜びや欲求については、かなり無関心となった。
 ある日、「甘い蓮華のメロディ」が野の花からおいしい蜂蜜を吸っているとき、「大きく開いた蓮華の翼」は、空を飛んでいた。そのとき突然、激しい雷雨が生じた。空は暗くなり、野の花の花びらは突然閉じてしまい、「甘い蓮華のメロディ」はその中に閉じ込められてしまった。そこから出ることができずに彼女は恐怖し、どうすることもできなかった。夫の「大きく開いた蓮華の翼」も同様に怯えていた。「甘い蓮華のメロディ」は「大きく開いた蓮華の翼」に向かって泣き叫び、「大きく開いた蓮華の翼」はその声を聞いた。「甘い蓮華のメロディ」は、もう聖者の教えを実践できなくなることを嘆いていた。徐々に息苦しくなっていくと、彼女は「大きく開いた蓮華の翼」に、彼女のように死の時に後悔しないように、ダルマを実践するよう願った。「大きく開いた蓮華の翼」は、どうやっても彼女を助けることができず、愛する人が苦しむ声を聞いて嘆き苦しんだ。
 そして「甘い蓮華のメロディ」は死んだ。「大きく開いた蓮華の翼」の悲嘆は、彼の心をダルマへと向けた。輪廻に対する強い反感が心に生じた。以下の詩は、「クンサン・ラマの教え」の要約版としての見解を含んだ教えを表わしている。オス蜂は、すべての状況を”道”にする方法を学んだ。

「状況が良いのは、悪い。
 状況が悪いのは、良い。
 状況が良いときは、五毒の感情が燃え上がる。
 状況が悪いときは、過去の悪しきカルマが焼き尽くされる。
 試練はすべて、師の慈悲。

 褒めたたえられるのは、悪いこと。
 けなされるのは、良いこと。
 称賛されると、エゴはさらに膨れ上がる。
 非難されると、弱点がさらに明らかとなる。
 誹謗中傷は、神々の祝福。

 ダルマを実践するために、これらは必要不可欠なこと。
 確信を作り上げるために、これらは必要不可欠なこと。
 隠遁地に住むために、これらは必要不可決なこと。
 放浪者として彷徨うために、これらすべては必要不可欠なこと。」

 これらの詳細な教えを聞き、それらを心に刻んで、オス蜂はそれらを実践することを誓うのだった。
 パトゥルはこれらのことを、若き寡夫タシ・ゲレクのために書き記した。タシ・ゲレクは、これらを心に刻み込み、残りの人生を修行に捧げたのだった。 

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