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クリシュナ物語の要約(28)「アクルーラ、ヴラジャに到着する」

(28)アクルーラ、ヴラジャに到着する

 気高き心を持つアクルーラは、クリシュナとバララーマを連れてくるようにというカンサの指示を実行するために、馬車に乗ってヴラジャへと出発しました。

 馬車に乗りながら、アクルーラは、次のような思いをめぐらしたのでした。

「今からクリシュナに会いに行けるとは、私は過去世においてどんな立派な行ないをして、どんな素晴らしい苦行を実践したのだろうか。あるいはどんな素晴らしい布施や供養を実践したのだろうか。
 感覚の楽しみに耽る私のような悪人が、クリシュナのお姿を目にできるとは、まるで奴隷の家に生まれた者が、聖典の朗誦を聞けるようなものではないか!
 今日、私の悪はすべて滅ぼされて、この世に生まれた意味が成就されるのだ。なぜなら私は今日、ヨーギーが瞑想する主の御足に、この頭を下げることができるからだ。
 ああ、カンサは私に何という善意を示してくれたのだろうか! 彼に遣わされたおかげで、私は人としてこの世に誕生されたシュリー・ハリの御足を拝むことができるのだ。今まで多くの人が、丸い爪が輝くその御足をあがめて、迷妄の闇を超えていったのだ。
 この地球の重荷を和らげるために、主ヴィシュヌは自らの意思で、この地上に降誕されたのだ。美の宝庫であるそのお方を見ることができたなら、そのときこそ、私の眼は目的を遂げられるのだ!
 あのお方は、自我の思いを少しも持たず、迷妄も差別観も、それらから生じる誤謬も、ご自身の輝きで駆逐されているのだ。そしてそのお方は今、マーヤーによってご自身のうちに発生させた子供たちとともに、木陰で戯れておられるのだ。
 すべての祝福の源であり、神々が賛美する至上の主は、神々の最高者たちを喜ばせるために、ヤドゥ族の中に降誕されたのだ。そしてこのお方は今、ご自身の栄光を世界に広めながら、ヴラジャで暮らしておられるのだ。
 ヴラジャに到着したなら、私は直ちに馬車から飛び降り、ヨーギーが真我の悟りを求めて瞑想する、あのお二人の最高者に礼拝するだろう。そしてあのお二人の友人やヴラジャの人々にも、心から挨拶するだろう。
 私がその御足にひれ伏したなら、庇護を求める者に安全を約束する蓮華の御手を、あのお方は私の頭に置いてくださるだろうか? カウシカはあの御手に礼拝の品を捧げて、インドラ神の地位を手にできたのだ。
 私がカンサの伝令としてやってきても、すべての心を知られる主クリシュナは、きっと私のことを悪くは思われないに違いない。
 私が心を落ち着かせて、合唱して足下にひれ伏したとき、慈悲に満ちた目であのお方が私にほほえまれたなら、そのときこそ私は罪から解放されて、恐怖を除かれ、最高の祝福を得ることができるのだ。
 あのお方が私を長い腕で抱きしめてくださったなら、そのときこそ、私の身体は聖域に変わり、カルマの束縛も外れてしまうのだ。
 抱きしめられた私が、合唱してお辞儀をしたなら、クリシュナは私を、『アクルーラおじさん!』と呼ばれるだろう。ああ、そのときこそ私の誕生は成就されるのだ。主に受け入れられない人生に、果たしてどんな意味があるだろうか?」

 馬車に乗ったアクルーラは、こうしてクリシュナのことだけを思いながら、やがてヴラジャの地に到着したのでした。
 そのときアクルーラは、ヴラジャの地のあちこちに、クリシュナの足跡があるのを目にしたのでした。それらを目にしたアクルーラは、喜びに感極まり、こみ上げる愛の思いで体中の毛をすべて逆立てて、歓喜の涙にあふれながら、馬車から飛び降り、「これが主の御足のチリなのだ!」と叫びながら、喜んでその上を転げ回ったのでした。

 そして彼はその後、蓮華のごとき目をされるクリシュナとバララーマの二人が、それぞれ黄色と青の衣を身につけて、牛の乳を搾る中庭に立たれているのを見たのです。
 そのとき二人はちょうどキショーラの年齢(11~15歳)にあり、美しいお顔と長い腕を持ち、最高の魅力をあたりに振りまいて、まるで美と優雅さの化身のようでした。
 二人のお姿を目にしたアクルーラは、激しい愛の思いに圧倒されて、丸太のように彼らの足下に身を投げ出したのです。
 主を見た喜びの涙にあふれたため、彼の目は見えなくなってしまい、体中の毛をすべて逆立てて、感動でのどを詰まらせたために、彼は自分の名を告げることもできなかったのです。
 叔父であるアクルーラの姿を認めると、クリシュナとバララーマは喜んで彼を抱きしめ、合唱する彼の手を取り、家の中へと導き入れたのでした。

 そしてナンダはアクルーラを見ると、このように言いました。

「ああ、アクルーラよ。あの冷酷なカンサの下で、あなたはなんと苦労されていることでしょうか!
 泣き叫ぶ妹の子供を殺した、自分勝手なあの悪人に支配されるあなた方に、果たして安全な生活などあるのか、私たちは本当に心配になるのです。」

 このように愛に満ちた言葉でナンダに歓待されると、アクルーラは今までの旅の疲れをすっかり忘れてしまうのでした。

つづく

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