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カル・リンポチェ(1)

◎名前の物語

 カル・リンポチェは、タチョと呼ばれる山脈にある東チベットに位置する州、カムで生まれた。彼の姓は「ヤギの皮」を意味する「ラツァ」という言葉を崩した「ラタク」といった。われわれがこの名前の起源を知るには、トゥースム・キェンパ(カルマパ一世)の時代にまでさかのぼらなくてはならない。

 トゥースム・キェンパは、山腹で家畜を育てる貧しい家庭に生を受けた。この地方では、衣服によって貧しい人々と裕福な人々を見分けており、貧しい家庭の者たちはヤギの皮でできた上着を身に着ける一方で、裕福な家庭の者たちは羊の皮をまとっていた。この些細な事柄は、この物語において重要な部分である。

 トゥースム・キェンパが生まれたとき、聖者が誕生したと気付いた者はいなかった。彼は人々から特別な注目を集めるような子ではなかった。トゥースム・キェンパは同じ年頃の多くの子供たちのように、牛やヤギの世話をし、その群れを守っていた。しかし、人々が彼を非凡な存在であると認めざるを得ない出来事がいくつもあった。

 例を挙げるならば、この地域において水は大変貴重であり、水を必要とする人々や動物は困難に陥っていた。ある日、人々は将来カルマパとなるその若者が、小さな岩の周りの地面をかいているのに気付いた。彼は来る日も来る日もそれを行なった。彼は地面を掘って、何を探していたのか? 子供たちや他の人々は不思議に思い始めた。しかし皆が驚いたことに、水を秘めているとは到底思えなかったその地から、瞬く間に水が噴き出しはじめたのだ。

 未来のカルマパは家が貧しかったがゆえに、他の子供たちにからかわれていた。子供たちは時折、彼を追いかけては石を投げつけた。そして彼はさまざまな場面において驚くべき性質を示したのだった。ある日、彼は投げつけられた石を避けようとして、瞬間的に崖にもたれかかった。その崖には今日に至るまでトゥースム・キェンパの背中の跡が残っている。また別の折りには、彼がいじめっ子たちに石を投げ返すと、いじめっ子たちは逃げたが、彼らがどんなに遠くに逃げようとも、その石は彼らに当たった。これらの変わった出来事は、貧しい家の目立たない子供の一風変わった行為に過ぎないとみなされていた。
 しかし未来のカルマパであるその若者が、深刻な水不足に苦しむ土地に水を掘り当て、人々や動物に安堵をもたらして以来、人々は彼に好意を示すようになったのである。そしてのちに人々は、この水が病に対する治癒力を有していることに気付き始めた。特に消化器系の腫瘍を患っている人々を治癒した。現在でもなおその泉は湧き出ており、病を治癒する水として、人々が訪れ、飲み続けている。

 大人になったカルマパは、中央チベットを訪れた際、並外れた能力を有したラマであるとすぐに認められた。彼には大勢の弟子ができ、彼の人柄は人々に大いなる信仰心を生じさせた。さらに彼の偉大な成就により、「三世(過去・現在・未来)を知る者」と名付けられた。

 カルマパの偉業に関するニュースは、彼の生まれ故郷へと届き、故郷の人々は遂には、何らかのかたちで彼に崇敬の念を示す決断を下したのだった。

「今日、チベットにおいて実に名高き偉大なこのラマは、われわれの村の子供でした。われわれと共に家畜の群れを世話していたころは、彼の壮麗さを理解することができませんでした。今現在、彼は遠く離れたところにいて、われわれは彼に会うことができません。われわれも彼の存在を喚起する方法を見いださなければなりません。われわれの信仰の支えとなる物を探さなければならないのです。」

 こうして彼らは、ラマが子供のころに身に付けていた物を探し始めた。しかしトゥースム・キェンパは貧しかったがゆえに、身の周りの品はごく僅かしかなかった。村人たちはようやく、カルマパが幼いころに身につけていたヤギの皮の上着を見つけた。
 話によると、彼らはその上着を神聖な拠り所とすることを望んで、10万もの小さな欠片に切り分けると、同じ数だけの小さなカルマパの像を作り、その像の中にヤギ皮の欠片を納めた。そして彼らは、像を安置するためのストゥーパを建立すると、ヤギ皮の10万の像のストゥーパ(チベット語でラツァ・クムブム・チョーテン)と名付けた。こうして、その場所はラツァとして知られるようになったのである。そして、カルマパ一世の親類縁者はその名を受け継ぎ、一族はラツァと名乗るようになった。のちにそれがラタクへと変化し、そのラタクこそがカル・リンポチェの姓なのである。

 後年、カルマパの父母がこの世を去ると、地域の人々は、聖なる魂をこの世に誕生させた両親に対して感謝の意を表し、メインのストゥーパの右側と左側に、彼らの栄誉を讃える二つの小さなストゥーパを建立した。この三つのストゥーパは、今日でも目にすることができる。

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