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アディヤートマ・ラーマーヤナ(17)「ラーマの旅立ち」

◎ラーマの旅立ち

 さてラーマは、シーターとラクシュマナと共に、父の宮殿へと真っ直ぐ向かい、カイケーイーにこのように言った。

 「ああ、母上よ! われわれ三人は、あなたが望まれる森へ行く準備ができました。ただちに父君にわれわれに御命令するようにお尋ねください。」

 ラーマのそのような言葉を聞くと、カイケーイーは即座に立ち上がり、ラーマとラクシュマナとシーターのそれぞれに、苦行者がまとう木の皮の衣を渡した。
 ラーマは王家の衣服を脱ぎ捨て、木の皮を着た。ラクシュマナも同様に倣った。しかしその種の衣の着方を知らないシーターは、それを手に持って、ラーマのお顔を見つめながら、戸惑って立ちつくしていた。そこでラーマは、その木の皮をとると、それをシーターの衣服に巻き付けたのだった。
 この哀れな場面を見て、宮殿内のすべての女性は声を上げて泣き始めた。グル・ヴァシシュタは彼女らの泣き声を聞くや否や、宮殿に入ってきた。彼は状況を理解し、非常に憤慨した様子で、カイケーイーにこう言った。

「おお、邪悪な女よ! そなたの請うた願いによれば、ラーマのみが森へ行くことになるはずだ。ならば、なにゆえにこの苦行者の衣をシーターにも与えるのか?
 もしラーマの貞淑な妻であるシーターが、ダルマの遂行の上で彼につき従って森へ行くことを選んだのならば、彼女に素晴らしい衣服を着せ、すべての装飾で飾り立てさせなさい。彼に同行することで、彼女は森での生活に付随して起こる苦しみの多くを、ラーマから取り除くことができるであろう。」

 そして、ダシャラタ王は、スマントラ大臣を呼んでこう言った。

「森の苦行者たちにとって愛しい存在であるこの三人は、ここから森へと馬車に乗って向かうべきである。」 
 そう言うと、彼はラーマとシーターとラクシュマナを見て、すぐに地面に倒れ込むと、声を上げて泣きながら、悲しみに打ちのめされ、自らの涙で溺れかけたのだった。

 そしてまずシーターが、ラーマの御前で馬車へ乗りこんだ。
 ラーマは、父の周りを回ると、同様に馬車に乗り込んだ。ラクシュマナも、剣、弓、矢筒をそれぞれ一組ずつ身につけて、ラーマに倣った。
 彼らが出発するように御者に指示したとき、ダシャラタ王は、「スマントラよ! 止まれ、止まってくれ!」と泣き叫んだ。しかしラーマはもう一度出発を命じ、そして御者は馬車を出発させたのだった。彼らがある程度の距離を走ると、ダシャラタ王は気を失って、床に倒れてしまった。
 子供、老人、敬虔なブラーフマナなどの多くの民たちは、「ああ、ラーマ様! お止まりください! どうかお止まりください!」と泣き叫びながら馬車の後を追いかけて行った。
 長い間泣いた後、ダシャラタ王は従者たちに、ラーマの母カウサリヤーの部屋に自分を連れていくように頼んだ。

 彼は言った。

「カウサリヤーの宮殿にいれば、私の悲しみに打ちひしがれた命は、もう少しばかり存続するかもしれない。ラーマと離れていては、私はもう長くは生きられないだろう。」

 カウサリヤーの宮殿に到着すると、彼はまた気を失って倒れた。長い時間の後に意識を取り戻すと、彼は何も言葉を発することなく、放心状態でそこへ座ったのであった。

◎グハ王との出会い

 タマサ河の岸辺に着くと、ラーマは幸せそうにそこで一晩を過ごされた。河の水を飲んだ以外に食物を一切とることなく、彼は木の下で休まれたのだった。シーターもまたそのようにした。そして一切のダルマを知るラクシュマナは、スマントラと共に、手に弓を持って見張りをした。
 悲しみに打ちひしがれた民たちも、ラーマに従った。彼らは、ラーマを都に連れて帰るか、あるいはそれが失敗したら、彼と共に森へ行こうという決心と共に、その夜はその近くで休んだ。

 彼らのその決意に驚いて、ラーマはこう仰った。

「私は都に戻ることもできないし、もしこれらの人々が森へついて来たら、彼らは大きな困難を被ることであろう。」 

 その結果、彼はスマントラにこう話された。

「ああ、スマントラよ! 馬車の準備をしてください。われわれは、人々が眠っているうちに、今すぐにでもここから離れましょう。」

 スマントラは、命令通り、馬を馬車に繋ぎ、ラーマとシーターとラクシュマナは大急ぎでそこを発ったのだった。
 馬車はアヨーディヤーの方向に少し進むと、そこから方向転換して森へと向かった。民たちは朝起きると、そこにラーマがいないことに気付き、ひどく悲しみに打ちひしがれたのだった。彼らは馬車の車輪の跡に従ってラーマの跡を追おうとしたのだが、それは彼らをアヨーディヤーへと連れ戻すこととなった。そして彼らは運命を受け入れて、ラーマとシーターを絶えず思いながら、都にとどまり続けたのだった。
 さて、スマントラは馬車を高速で走らせ、豊かな村々を通過して、シュリンガヴェーラとして知られるアシュラムがあるガンガーの岸に到着した。ラーマは聖河ガンガーを見て、そこで沐浴し、シンパラの樹の下にとどまることに大いに喜ばれたのだった。
 さて、次にそこの地域の族王のグハが、人々からラーマの到来を知らされると、友であり師であった彼に会いに向かった。果物、蜂蜜、花などを手に持って運び、彼は極度に意気揚々とした気分で急いでやって来たのだった。
 それらすべての供物をラーマに捧げると、彼はラーマの御足に完全なる礼拝を捧げ、大地に身体全体を投げ出した。ラーマはすぐに彼を起こすと、彼を抱きしめられたのだった。
 ラーマが彼の繁栄について尋ねられると、グハは合掌して礼拝し、ラーマにこう言った。

「ああ、世界を神聖にされしお方よ! 私は本当に幸運であります。今日、狩人の部族の中での私の生は、その達成を得ました。
 ああ、ラグ族の中で最も気高きお方よ! 私は今日、あなたの身体に触れることで、霊的な喜びに感動を覚えました。この狩人の国は、あなたのしもべである私が所有しております。ゆえに、これらの場所はあなたの支配下であるのです。ああ、ラグ族の気高き子孫よ! どうかここにおとどまりになり、われわれを支配してください。町へ行きましょう。そこで私があなたのために集めたこの果物と根の供物をお受け取りになった後、あなたの存在によって、私の家をどうか聖別してください。――ああ、尊者様よ! 慈悲深く、あなたのしもべを祝福してください。」

 グハの言葉を喜ばれたラーマは、彼にこう言った。

「友よ! 私の言うことを聞きなさい。十四年間、私は村や家には入らない。そして他者から施された果物や根も食べない。このすべての王国が私のものであることは真実である。あなたは私の心にとって、真に愛しい存在である。」

 ラーマは次に、バンヤン樹の樹液を持って来て、彼とラクシュマナはそれで髪を絡ませ、冠のようにそれを頭の上で結んだのだった。
 そのラグ族の王子は、食料として水だけをとり、ラクシュマナがこしらえた草のベッドの上で、シーターと共に一夜を過ごした。そのようなベッドの上でも、ラーマとシーターは、宮殿の上階にある豪華なベッドと同じようにくつろいで眠った。
 そして弓と矢と矢筒を身につけたラクシュマナは、完全装備をしたグハと共に、立ったっまで、その建物の中でラーマの警備をしたのだった。

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