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「解説『スートラ・サムッチャヤ』」第二回(7)

 あともうひとつ、これも有名な話で、これはあの……ナーグ・マハーシャヤの話だったかな? 誰の話だっけ? 盗賊に連れてかれた話。あれ、誰の話だっけ? 盗賊に連れてかれた話って覚えてない?

(T)ああ、覚えてます。

 覚えてる? あれ、誰の話だっけ?

(T)ラーマクリシュナが……

 ラーマクリシュナが言った話だっけ?

(T)言った話……ナーグの話ではないと思います。

 ナーグのじゃないか。じゃあまあ、ちょっと名前は知らないけどある人の話として、ものすごく純粋なね、信を持ち、かつ非常に心の綺麗な人がいたと。で、その人はまあ……

(T)思し召しの男……

 ん? そう、思し召しの男(笑)。

(一同笑)

 常にその、「すべては神の思し召しである」っていうそのことを言っている男があったんですね(笑)。もうこれ、言っただけでみんな「ああ、あの話か」って(笑)。

(一同笑)

 常連の人はね。
 その男は非常に正直者でね――いつも布か何か売ってたのかな?――インドって商売ですごくだましたりするわけだけど、その人はそういうだましたりもしないと。で、本当に与えられたものだけで生きていたと。で、あるときそこに、その男が商売が終わって、ちょっとこう夜ね、ひと休みしてたら――まあ食事を終えてね、ひと休みをしてたら、盗賊の一団がやってきたと。盗賊の一団がやってきて、で、その正直者の男を「ちょっと人手が足りないから」と言って、さらってっちゃったんだね。自分たちの仲間にするためにさらっていった。で、さらっていってみんなでお金持ちの家に押し入って、お金持ちのいろんな金品を強奪してね。で、その正直者の男にも、「おまえ、これも運べ!」って言って頭に金品を乗せさせたと。そしたら、ちょうど警察がやってきてしまったんだね。警察がやってきて、みんなワーッて逃げていったんだけど、その正直者の男だけが頭に金品を乗せて立っていた(笑)。で、警察に捕まっちゃったんだね。しかしそれを知った村人たちは、「あの男が強盗で捕まったらしい」と。みんなそれを信じなかったんだね。「いや、そんなはずがない」と。「あんな正直者の純粋な男が、そんなことをするわけがない」と。「だから何かの間違いだろうから、ちゃんと調べてください」って警察署長に言ったわけですね。それを聞いた警察署長は、その男に事情聴取にいったわけですね。「お前は悪いようにはしないから、昨日のことを全部正直に話せ」って言ったんですね。そしたらその男が言うには、「はい、署長さま」と。「わたしは昨日、神の思し召しにより仕事を無事終え、神の思し召しにより美味しい食事を頂き、神の思し召しによりそのあと、たたずんでおりました」と。「そしたら神の思し召しにより強盗がやってきて、神の思し召しにより連れ去られました」と(笑)。で、「神の思し召しにより、強盗たちに自分の頭に金品を乗せられて、神の思し召しにより警察がやってきて、神の思し召しによりわたしは逮捕されました」と。で、「神の思し召しにより、今あなたとこう話しているんです」っていう話をしたんだね(笑)。で、これを聞いた署長は、「あ、こいつは本当に純粋な信仰者だ」と見て、その男を釈放したわけですね。で、その男が釈放されたあとに「ああ、神の思し召しにより釈放された」と言ってたと(笑)。
 つまり、この人にとってはすべてがオールオッケーと。「すべてが神の愛だ」っていう考えなんだね。これくらいの投げ出した心っていうか、すべてを信じる心がなきゃいけないんだね。
 だからこれは、さっきの「信の力」とも関わってくるけども、そういう思いで生きる。すべての――すべては神の愛なわけだけど、同時にすべてはカルマなんです。この二つっていうのは同時に存在する。だからカルマ自体が神の愛なんだけどね。神の愛によって、自分の過去の悪しきカルマが清算されてるわけですね。だから「ありがとうございます」と。
 例えば、自分の仕事が大失敗したら、「おお、神よ。本当にありがとうございます」と。「あなたは、またわたしに悪しきカルマの浄化をさせて下さったんですね」と。「もう、これでわたしの未来は本当にバラ色じゃないですか」と。ね。でも次、バラ色じゃないかもしれないよ。また苦しみがやってくるかもしれない(笑)。そしたら、「ああ、神よ」と。「こんなところまで、本当にわたしを徹底して浄化しようとして下さっているんですね」と。もちろん、幸福がやってきたらやってきたで、「ああ、本当にありがとうございます」と。「本当にわたしは、神や仏陀に見守られていて本当に幸せです」と。こういうような純粋な、純真な心ね。これによって一切の……なんていうかな、さっきから言っている、自分に自然に現われる苦しみや喜びに動じないっていうかな。堂々とそれに立ち向かっていくっていうかな。そういうような力ね、ここはね。

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