yoga school kailas

「第三日目 全力を尽くすことと、ビーシュマの歓喜」

(44)第三日目 全力を尽くすことと、ビーシュマの歓喜

☆主要登場人物

▽パーンドゥ軍
◎クリシュナ・・・パーンドゥ兄弟のいとこ。実は至高者の化身。
◎ビーマ・・・パーンドゥ兄弟の次男。クンティー妃と風神ヴァーユの子。非常に強い。
◎アルジュナ・・・パーンドゥ兄弟の三男。クンティー妃とインドラ神の子。弓、武術の達人。

▽クル軍
◎ドゥルヨーダナ・・・クル兄弟の長男。パーンドゥ兄弟に強い憎しみを抱く。
◎ビーシュマ・・・ガンガー女神と、クル兄弟・パーンドゥ兄弟の曽祖父であるシャーンタヌ王の子。一族の長老的存在。
◎ドローナ・・・クル兄弟とパーンドゥ兄弟の武術の師。

 戦争三日目、ビーマが放った矢がドゥルヨーダナに当たり、ドゥルヨーダナは気絶してしまいました。彼の御者は急いで戦車を戦場から遠ざけました。ビーマはこの機を逃さず、逃走するクル軍に大打撃を与えました。

 意識を回復した後、ドゥルヨーダナはビーシュマに言いました。
「わが軍の見苦しい敗走をご覧になって、どう思われますか? あなたはよく我慢ができますね。パーンドゥ軍の連中の中には、本気になったあなたに太刀打ちできる者など一人もいないはずです。あなたは彼らをいとも簡単にやっつけられるはずなのに、なぜそうしないのですか? あなたはパーンドゥ兄弟たちを愛しているので、彼らの軍と本気で戦うことができないのでしょう。そうならそうと、はっきりとおっしゃってください。」

 敗戦の悔しさと、ビーシュマが常々自分のやり方を非難しているという不満が重なって、ドゥルヨーダナはこんなひどい嫌味をくどくどとビーシュマに述べました。しかしビーシュマは怒りもせず、にっこりと笑ってこう答えました。
「わしは腹蔵なく、はっきりと忠告したではないか? その忠告を受け入れずに、お前は戦争を始めたのだよ。わしは戦争をやめさせようとしたが、力及ばずにこうなってしまった。だが、こうなってしまったからには、わしは力の及ぶ限り義務を果たしているつもりだ。老人のわしには、これが精一杯なのだよ。」

 こう言うと、ビーシュマは戦列に戻りました。

 ドゥルヨーダナの小言に刺激されたビーシュマは、猛烈な勢いでパーンドゥ軍に攻め入りました。この日の戦況が予想以上に有利に動いていたので気を緩めていたパーンドゥ軍は、隙をつかれた形になりました。ビーシュマがいくつもの分身を使っているのではないかと疑われるほど、この日のビーシュマの動きは早く、あちこちでパーンドゥ軍に大打撃を与えました。

 パーンドゥ軍の危機を見て、クリシュナはアルジュナに言いました。
「アルジュナ。危機到来だ。今こそ君は、君がなした決心を忠実に守りなさい。
 ビーシュマ、ドローナ、そして大勢の友人や親族たち、尊敬している長老たちを、戦闘で殺すことにしり込みするな。君自らがそれを誓ったのだ。今こそ、それを実行したまえ。さあ、ビーシュマじい様を攻撃するのだ。」

 アルジュナを乗せたクリシュナの戦車がビーシュマに向かって突進しました。ビーシュマは無数の矢をアルジュナ放ちました。アルジュナも矢を放ち、その矢はビーシュマの弓に当たり、それを壊しました。ビーシュマが新しい弓を手に取ると、またアルジュナはその弓に矢を命中させて、壊してしまいました。
 アルジュナの弓術の見事さを見て、ビーシュマは喜びました。そして再び新しい弓を取り上げ、アルジュナに向かって矢を浴びせながら、
「いいぞ! 勇ましい戦士よ!」
と叫びました。

 クリシュナは、アルジュナの戦い方に不満がありました。一見、熾烈な攻防を繰り広げているように見えますが、ビーシュマは全力でアルジュナに向かってきているのに対し、アルジュナのほうは全力を尽くしていない、つまり、気が入っていないのがわかったからです。アルジュナは、偉大なビーシュマ爺さまのことを、あまりにも尊敬していたのです。

 実際、ビーシュマの矢は、アルジュナとクリシュナの体に、いくつも当たりました。ついにクリシュナは叫びました。

「アルジュナよ! なぜ君は、なすべきことに全力を尽くさないのだ! 君がやらないのなら、私がビーシュマを殺す!」

 こう叫ぶと、クリシュナは戦車から飛び降り、ヴィシュヌ神の必殺の武器である円盤を取り出して、ビーシュマに向かって走り出しました。

 クリシュナが自分を殺そうと突進してくるのを見て、ビーシュマは、少しも狼狽しないどころか、歓喜に包まれた様子で、こう叫びました。

「おお! 蓮華のような目をしたお方よ!
 ようこそ、クリシュナよ!
 世界の主よ、あなたは本当に私のために、戦車から降りてくださったのですか?
 私は喜んで、あなたに命をささげます。もしあなたに殺していただいたなら、およそ三界において、これほど光栄なことはありません。なにとぞその恩寵を私にお授けください。願わくばあなたの手でこの命を召され、永遠の救いを与えたまえ!」

 しかしアルジュナはあわてて戦車から飛び降りると、クリシュナに追いついて、戦車に戻ってくれるようにと懇願しました。
「どうか、お許しください。私は全力で戦います。なすべきことを全力でなします。決してしり込みしませんから、どうか戦車に戻ってください。」

 こうしてクリシュナとアルジュナは再び戦車に戻り、戦闘は再開されました。 

 この日、アルジュナは、ビーシュマを倒すことはできませんでしたが、クル軍の数千の兵士を殺戮しました。こうして三日目は、クル軍がアルジュナ一人に手痛い打撃を受けてしまったのでした。

 日が沈んだ後、クル軍の兵士たちは、互いに言い合いました。
「今日のアルジュナの戦い方を見たか? アルジュナにかなう者がいるのだろうか? あれでは向こうが勝っても不思議ではない。」
 
 この日のアルジュナの活躍は、それほどすさまじかったのでした。

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする