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「協議」

(34)協議

☆主要登場人物

◎ユディシュティラ・・・パーンドゥ兄弟の長男。クンティー妃とダルマ神の子。
◎アルジュナ・・・パーンドゥ兄弟の三男。クンティー妃とインドラ神の子。弓、武術の達人。
◎ドゥルヨーダナ・・・クル兄弟の長男。パーンドゥ兄弟に強い憎しみを抱く。
◎ヴィラータ王・・・マツヤ国の王。
◎ビーシュマ・・・ガンガー女神と、クル兄弟・パーンドゥ兄弟の曽祖父であるシャーンタヌ王の子。一族の長老的存在。
◎ドラウパディー・・・パーンドゥ五兄弟の共通の妻。
◎クリシュナ・・・至高者の化身。
◎バララーマ・・・クリシュナの兄。
◎ヴィドラ・・・ドリタラーシュトラ王の主席顧問。マハートマ(偉大なる魂)といわれ、人々から尊敬されていた。
◎ドローナ・・・クル兄弟とパーンドゥ兄弟の武術の師。
◎ドルパダ・・・パンチャーラの王。ドラウパディーの父。
◎ドリシュタデュムナ・・・ドルパダ王の息子。ドローナを殺すために生まれてきた。
◎シカンディン・・・ドルパダ王の娘。ビーマを殺すために生まれてきた。もとは女性だったが、苦行によって男性になった。

※クル一族・・・盲目の王ドリタラーシュトラの百人の息子たちとその家族。
※パーンドゥ一族・・・ドリタラーシュトラの弟である故パーンドゥ王の五人の息子たちとその家族。パーンドゥの五兄弟は全員、マントラの力によって授かった神の子

 パーンドゥ一家が身を隠していなければならなかった13年目は無事終わり、もう変装の必要もなくなり、彼らは堂々と本名を名乗って、マツヤ国のウパプラヴィヤに居を定めました。

 そしてアルジュナの息子のアビマンニュと、ヴィラータ王の娘のウッタラー姫との結婚式が、厳かに執り行なわれることになり、パーンドゥ一家の親戚や友人たちが、ウパプラヴィヤに集まりました。

 ドワーラカーからはクリシュナとバララーマが、アルジュナの妻スバドラーと息子のアビマンニュをつれ、大勢のヤドゥ族の戦士たちを引き連れて到着しました。
 インドラセーナ他、去年パーンドゥ兄弟を森に残して一時帰国していた大勢の仲間たちも、集まってきました。
 カーシー(現在のヴァラナシ)の王子とシャイビャの領主もやってきました。
 パンチャーラ国からはドルパダ王が、ドリシュタデュムナと、ドラウパディーの息子たちと、シカンディンなどとともに、大勢の軍隊を引き連れてやってきました。
 
 こうして、パーンドゥ一家に友好的な王族武将たちが大勢列席する中、アビマンニュとウッタラー姫の結婚式が執り行なわれました。

 そして式典が終わると、集まった勇者たちは王宮の大集会室に入り、会議が始まりました。

 まずクリシュナが立ち上がり、話し出しました。

「諸君もすでにご存知のとおり、ユディシュティラはさいころ賭博で詐欺にかけられ、領土を騙し取られた上、弟たちやドラウパディーともに森へ追放された。だが彼は約束の言葉を守り、十三年の間あらゆる困苦を耐え忍んで暮らしてきた。
 さてこの先、どのようにすればダルマに合致するか、パーンドゥ・クル両家の名誉と幸福を保つためにはどのような方法をとればよいか、みなでよく考え、相談しよう。
 なぜなら、ダルマ神の子であるユディシュティラは生まれつき無欲で、自分に正当に与えられたもの以外は何一つ要求しようとしないし、自分に極悪非道なことをしたドゥルヨーダナたちに対してさえ、好意を示そうとしているからだ。
 その辺を考え合わせた上で、ぜひとも公正で立派な解決方法を考え出してほしい。
 ドゥルヨーダナがどんな考えつもりでいるかはわからないが、私としては、まず有能で誠実な使者を送って、平和的解決のために領土の半分をユディシュティラに返すようにと、ドゥルヨーダナを説得すべきだと思うのだが・・・。」

 するとバララーマが立ち上がり、言いました。

「今クリシュナが提出した案は、賢明で的を得たものだと思います。
 そしてその使者の役割を果たす者は、決して腹を立てない、冷静な人物でなければなりません。
 ところで、ユディシュティラは友人たちの忠告を聞かずに、自国の領土を賭けてさいころ賭博をし、そして失ってしまったのですから、ある意味、自業自得です。彼には自分の領土を返せという権利はないと、私は思います。ただドゥルヨーダナに嘆願するのみです。
 ゆえにこの使者は、戦争屋ではつとまらないのであって、困難にめげずに辛抱強く粘って、平和的解決を勝ち取ることができる人物でなければなりません。
 そのためにまず、ここにいる王族方が、ドゥルヨーダナに近づき、親交を深めるのが良いのではないでしょうか。何はともあれ、全力を尽くして武力紛争を避けることです。平和のうちに手に入れたものだけ、価値があるのです。戦争からは悪しか出てきません。」

 バララーマは、同族であるクル族とパーンドゥ族の間の戦争は、どんなことをしてでも避けたいという考えなのでした。しかしこれを聞いていたヤドゥ族の偉大な戦士サーティヤキは、バララーマの言葉に我慢ができず、立ち上がって激しい言葉で意見を述べました。

「バララーマが言ったことは、全く理解しがたい。私は納得できません。断固として反対します。
 クリシュナの言葉はダルマの精神に基づいたものでしたが、バララーマの意見は全く価値のないものです。
 ドゥルヨーダナは、パーンドゥ家の領地を騙し取ったのですぞ! にもかかわらず彼らを容認することは、強盗が盗んだ物を正当な所有物として認めるようなものではござらぬか? ユディシュティラのほうが間違っていたなどと言う者は、単にドゥルヨーダナを恐れているに過ぎません。
 ユディシュティラは、自分の自由意志ではなく、クル族に無理やり誘われて、さいころ賭博が下手なのにも関わらず、いかさま師を相手に勝負をさせられたのです。その彼がなぜ、ドゥルヨーダナに頭を下げて嘆願しなければならないのですか? 不当とはいえ誓約も十分に果たしたというのに。
 ユディシュティラは約束を守り、弟たちとドラウパディーをつれて12年もの間、森で不自由な生活を送り、13年目を身分を隠してすごしました。それなのにクル族は、恥知らずにまた誓約違反だなどと言ってよこした。私は断じてこの厚顔無恥な悪漢どもと戦って打ち負かし、ユディシュティラの許しを乞うか一族滅亡かの、どちらかを選ばせてみましょう。
 いずれにせよ、ダルマに基づいた戦いは、悪ではありません。悪人である敵に嘆願することこそ不名誉のきわみです。
 もしドゥルヨーダナが戦いを欲するなら、われわれは準備を整えて、受けて立とうではありませんか。今すぐ戦いの用意をすべきでありましょう。ドゥルヨーダナは領土を返すはずがない。時間を無駄にするのは愚かなことです。」

 サーティヤキのこの言葉を聴くと、ドルパダ王の胸は嬉しさに満たされました。彼は立ち上がって言いました。

「サーティヤキの意見は全く正しい。私は賛成だ! ドゥルヨーダナに道理を聞き分けさせるには、優しい言葉では駄目なのですよ。さあ、一刻も早く戦争の準備を始めよう。一人でも多くの兵を集めよう!
 もちろん、その前にドリタラーシュトラ王には使者を送らなければならない。私のお抱えのブラーフマナは、学識も深く信頼のおける男だから、彼を使者にするのがいいと思う。」

 クリシュナは、ドルパダ王に言いました。

「あなたの提案は全く実際的であり、また王のダルマにもかなっていると思います。
 だが私と兄のバララーマは、クル族とパーンドゥ族の両方の親戚なのです。
 しかも私たちがここに来たのは、アビマンニュとウッタラー姫の結婚式のためなのだから、今日のところはわれわれはいったん国に戻ろうと思います。
 ドルパダ王よ、あなたは数ある領主の中でもとりわけ立派な領主であり、また年齢といい智慧といい、私たちみなに助言をする資格のあるお方です。ドリタラーシュトラ王も、あなたを深く尊敬しています。またドローナとクリパは、あなたの幼友達でもあります。これらの点からしても、あなたがお抱えのブラーフマナにいろいろと指示をして、平和の使者として派遣するのが一番いいと思います。
 しかしもし彼がドゥルヨーダナの説得に失敗して、抜き差しならない事態になったならば、王よ、どうかわたしのところへご一報ください。」

 会議が終わると、クリシュナはお供の者たちとともにドワーラカーへと帰りました。

 ドルパダ王とパーンドゥ一家、そしてその同盟者たちは、早速さまざまな準備に入りました。すべての友好国に使者を送り、事情を知らされた王族たちは軍備増強の準備に入りました。

 ドゥルヨーダナとその同盟者たちも、ぼんやりしていたわけではなく、彼らもまた友好国に使者を送り、戦争の準備を始めていました。

 さて、ドルパダ王はお抱えのブラーフマナを呼んで、こう言いました。

「あなたはドゥルヨーダナとパーンドゥ兄弟の性質を、よく知っていることと思う。どうかパーンドゥの使者として、ドゥルヨーダナのもとへ行ってほしい。
 クル兄弟はパーンドゥ家の領地と財産を騙し取った。父親のドリタラーシュトラは、ヴィドラの賢明な忠告も聞かずに、息子たちの悪行を黙認したのだ。息子のために邪道に入ったこの老王に、ダルマと智慧の道を教えてやってくれ。この仕事にはヴィドラも大いに力になってくれると思う。
 あなたが使者に行くことで、向こう側では、ビーシュマ、ドローナ、クリパといった老政治家たちの間で、意見の相違が表面化するかもしれない。他の武将たちの間でもさまざまな意見が出てくるだろう。これもまた使者の重要な役目の一つなのだ。向こうが意見の調整に戸惑っている間に、こちらは戦争の準備をいっそう固めることができるからな。
 もちろん、もし奇跡が起こって、満足のいく講和条件が成立したとすれば、それはそれでまことに結構なことだ。まあ、ドゥルヨーダナがこちらの条件を飲むとは思えないがね。」

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