「五つの楽しみの歌」
わたしは、人として生を受けたものの中で、
最も恵まれた者の一人である。
わたしはグルに出会い、
今生のうちにブッダフッドを授かる真理を得、
世間を捨て、この静寂な山で瞑想し、
永遠の目的地へ至ろうと精進している。
衣食や地位を犠牲にし、それによってまさにこの生で、
感覚や偏見などの敵を滅しようとしている。
この世にわたし以上に、勇敢で高い望みを持った者はいない。
あなた方は、釈迦牟尼の教えの広まっている国に生まれながら、
瞑想することはおろか、ダルマを聴こうという気さえない。
そればかりかあなたたちは、悪魔のような宗教の中で、
地獄に落ちて長くとどまることに全力を傾けている!
悪業を少しずつ徐々に積み上げていく事ほど、危険な行為はない。
それは地獄の期間と深さを増す。
わたしは永遠に平安で、最高の至福を持ち、
今後の幸福が保証されている。
わたしの歌をお聞きなさい。
主、恵み深きマルパ! あなたの御足に礼拝します。
願わくば世俗の目的を放棄させたまえ。
この岩の洞窟は、中道の要塞である。
この中道の要塞の頂で、
わたし、麻布をまとったチベットの隠遁者は、
衣食とすべての思いと、この世の目的を放棄して
完全なる覚者の境地を求めて住む
楽しみは下に敷いた硬い座具。
楽しみは身を覆う麻布。
楽しみはひざを支える瞑想帯。
楽しみは節食に慣らされたこの体。
楽しみはリアリティーの洞察を得たこの心。
すべては楽しい。楽しみでないものはない。
もしわたしが幸福に見えるなら、わたしのようにするがよい。
もし修行の道を歩むだけの好運に恵まれないなら、
あなた方と、わたしと、すべての衆生の、
真の永遠の幸福を考えなさい。
わたしに、間違った同情をしないように。
日は沈みかけている。
あなた方は家路を急ぐがよい。
人生は短く、死は予告もなく襲って来る。
覚者の境地を目指して精進するわたしには、
無駄な会話に費やす時はない。
わたしに瞑想をさせてください。
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