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「ヴィヴェーカーナンダ」(6)

 ラーマクリシュナはナレーンドラを、人前でもあからさまに称賛し、また、常にナレーンドラに会うことを願い、長い間ナレーンドラが訪ねてこなかったりすると、人をやって呼び寄せたり、時には自分からカルカッタまで出向いて会いに行くことさえありました。

 そのような、傍目には溺愛とも見えるラーマクリシュナの態度が、一時、豹変したことがありました。

 ある日、ナレーンドラがラーマクリシュナの部屋にやってきたとき、ラーマクリシュナはナレーンドラを完全に無視しました。一言の挨拶の言葉さえ、交わされなかったのです。
 一週間後に再び訪ねたときも、ラーマクリシュナは無関心を装いました。
 三回目も、四回目も、ラーマクリシュナはナレーンドラに対してひたすら冷淡な態度をとり続けました。
 今までは信者の中で第一の者として最高の賞賛を受けていたナレーンドラが、急に、挨拶する価値さえない者のようにして扱われるようになったのです。しかしナレーンドラはそれに対して腹を立てることもなく、ドッキネッショルに通い続けました。

 そんな状態が一ヶ月以上続いたころ、ラーマクリシュナは、ナレーンドラに言いました。
「私が一言も言葉をかけないのに、どうしてお前はまだここに来続けているのかね?」

 ナレーンドラは答えました。
「あなたとお話しするためだけにここに来ているとお思いですか?
 私はあなたを愛しております。私がここに来るのは、あなたにお目にかかりたいからでございます。」

 それを聞いて、ラーマクリシュナは喜んで、こう言いました。
「お前が愛情と注目をもらえなくても、訪問をやめないかどうか、試したのだよ。
 お前ほどの器の修行者だけが、これほどの無視と無関心に耐えることができるのだ。他の者だったら、とっくに私の元を去って、二度と戻ってこなかっただろう。」

 またあるとき、ラーマクリシュナはナレーンドラに、こう言いました。
「ねえ、長い苦行の結果、私はあらゆる神通力を得ているのだ。しかし私のような人間がこんな力を持っていてどうするというのだ。腰布さえも巻きつけておけないのだよ!
 それだから母にお願いして、こういう力を全部お前に伝授しようかと思うのだ。お前が母のためにたくさんの仕事をなさねばならないのは、母ご自身から伺っている。神通力が得られると、必要なときに使うことができるだろう。お前、どう思うか?」

 こう言われてナレーンドラは、しばらく真剣に熟考した後、こう言いました。
「師よ。こうした力は、神を悟る助けになるのでしょうか?」

「いや、そういう助けにはならない。しかし神を悟って、神のお仕事を始めた後では、非常に役立つだろう。」

「師よ、私には必要ありません。まず神を悟らせてください。それからでも必要か否か考える時間は十分にあるでしょう。
 今の私がそんなすばらしい力をいただいてしまったら、人生の目的を忘れ、世俗的な欲望の満足を求めるかもしれません。それではわが身の破滅となりましょう。」

 ナレーンドラのこの言葉を聞いて、ラーマクリシュナは大変喜びました。

つづく

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