yoga school kailas

「ナーグ・マハーシャヤ」(13)

 ナーグは決して、自分のためにだれかを雇うことはありませんでした。自分の用事のために、他人に働かせるのを見るのに耐えられなかったのです。そこでナーグの妻は、家の修繕などが必要な時は、ナーグの留守を見計らって、業者を家に呼んでいたのでした。
 しかしある時、ナーグがほとんど家を空けず、そのためなかなか家の修理ができずに、家のほとんどの部屋がほぼ使用不能になってしまったときがありました。ついに妻は限界を感じ、屋根の修理のために修理人を家に呼びました。
 修理人が家に入ってきたとき、ナーグは、何かそこで極悪なことが行なわれようとしているかのように、苦しみ、悲鳴をあげました。修理人が屋根に上り、炎天下の中で仕事を始めると、ナーグは、仕事をやめて降りてくるように懇願しました。しかし修理人が構わずに仕事を続けると、ナーグはついに耐えきれなくなり、あたかも苦しみに打ちひしがれた者のように嘆きました。

「おお、主よ、なぜ汝は私に、家にとどまって、このみじめな家住者の生活を送ることを命じたのですか!? ああ、私の快適さのために働いている人――私がこのような光景を見なければならないとは! 何という家住者の生活だろう!」

 そう言ってナーグは、自分の額と胸を打ち始めました。ナーグの苦しむ様子を見て、ついに修理人は仕事をやめて、屋根から降りてきました。ナーグは修理人に日給を与えると、そのまま家に帰らせたのでした。

 ある時ナーグが買出しのために列車に乗っていると、同じコンパートメントに、高級売春婦を伴った男が乗り合わせていました。彼らにふと目をとめたとき、ナーグはあるヴィジョンをそこに見ました。それは、その男の首から血を吸っている恐ろしい悪魔のような幽霊の姿でした。しばらくすると、その男のすべての肉は殺げ落ち、残ったのは骨だけでした。ナーグは驚き、「マー(母なる神)! マー!」と叫びました。
 のちにナーグはこの経験についてこう言いました。
「本当のことなのだよ。私が、この目で、ありのままを、すべてを見たのだ。」

 ナーグは、あたたかい衣類を一切持っていませんでした。そのために、ナーグが冬の寒さに苦しんでいることを知ったギリシュ・バーブ(ラーマクリシュナの有名な信者の一人)は、デヴェーンドラという男に頼んで、ナーグに毛布を届けさせました。ナーグは、毛布をプレゼントしてくれたのが尊敬するギリシュであることを知り、深々と何度もお辞儀をしてから、その毛布を自分の頭の上に乗せました。
 ギリシュは、ナーグが贈り物を受け取らないということを知っていたので、ナーグが毛布を受け取ったという報告を聞くと、とても喜びました。
 しかし数日後、ギリシュが贈った毛布は本来の目的通りには使われずに、ナーグの頭上に乗せられたままである、という噂を聞きました。心配したギリシュは、真相を確かめるために再びデヴェーンドラをナーグの元に送りました。デヴェーンドラの報告によると、確かにナーグはあの毛布をずっと頭の上に乗せ続けていたということでした。

 
 ヴィヴェーカーナンダが最初の欧米布教の旅から帰国したとき、チャクラヴァルティは彼に会いに行きました。チャクラヴァルティがナーグ・マハーシャヤと親しく、定期的にナーグのもとを訪問していると聞くと、ヴィヴェーカーナンダはナーグについて、こう言いました。

「われわれの人生は真理の探究にむなしく費やされる。
 ただ我々の内で彼だけが、正真正銘、師の神聖なる息子である。」

 また、ヴィヴェーカーナンダはこうも言いました。
「私は地球上のさまざまな国を広く旅行したが、ナーグ・マハーシャヤほどの偉大な魂に出会えたことはなかった。」

つづく

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする