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「ヴィヴェーカーナンダ」(14)

 さらに激しい修行に励んでいたナレーンドラは、あるとき、自分の中に強烈な霊的な力が生じるのを感じ、それは他の人にも伝えることができると感じました。
 そこでナレーンドラは、兄弟弟子のカーリーを呼び、彼の体に触れて、深い瞑想に入りました。するとカーリーは電気ショックのような衝撃を感じ、考え方が全く変わってしまいました。
 しかしこれを知ったラーマクリシュナは、ナレーンドラを叱りました。それはまず、十分に霊力が蓄えられないうちにそのようなことで霊力を浪費するべきではないということ。
 そしてもう一つは、実はカーリーはそれまで、二元的なバクティの修行の道で、かなりいいところまでいっていたのです。しかしナレーンドラのエネルギーを受けたせいで、不二一元論の考え方にガラッと変わってしまいました。しかし二元的信仰ではかなりいいところまでいっていたけれど、不二一元の道ではまだ未熟だったので、ただ言葉で不二一元的なことを繰り返すだけの男になってしまい、それはラーマクリシュナが意図していた方向ではなく、結果的にカーリーの成長を妨げる結果になってしまったのでした。

 このように、ナレーンドラは、すでに他者にも大きな影響を与えることが出来る霊的エネルギーの充実を自らの中に感じていましたが、同時にその危険性も知り、また、それらに疲れてもいました。ナレーンドラはあくまでも、不二一元の境地、無分別サマーディの体験にあこがれていたのです。それはかつて、ラーマクリシュナが半年間に渡って入り続けた境地でした。自分もそれを経験したいとナレーンドラはラーマクリシュナに願いましたが、ラーマクリシュナは黙ったままでした。

 しかしある夜、その体験が突然ナレーンドラにやってきました。
 いつものようにナレーンドラが瞑想に没頭していると、突然、あたかもランプが頭の背後で燃えているように感じました。その光はどんどん強くなっていき、最後に破裂しました。圧倒されたナレーンドラは、意識を失って倒れました。そして意識が戻り始めたとき、ナレーンドラは、自分の頭以外の肉体の感覚を全く感じることが出来ませんでした。
 ナレーンドラは興奮した声で、同じ部屋で瞑想していた兄弟弟子のゴーパールに、
「私の体はどこにあるのだ!」
と言いました。ゴーパールは、
「ここにあるよ。どうしたのだ、ナレーンドラ。わからないのかね?」
と答えました。
 ゴーパールは、ナレーンドラが死にかかっていると思い、ラーマクリシュナの部屋に走っていきました。ラーマクリシュナは言いました。
「しばらくの間、そのままにしておきなさい。長いこと彼はそれをしつこく私に求めていたのですから。」

 ナレーンドラはしばらく、通常意識を失ったままでした。普段の意識に再び戻ったとき、彼はこの上もない安らかさに浸っていました。
 ナレーンドラがラーマクリシュナの部屋に行くと、ラーマクリシュナは言いました。
「今、母なる神が、お前にすべてをお示しになった。しかしそれには宝石箱のように鍵をかけられ、お前から隠され、私の管理の下に置かれることになる。鍵は私が預かっておく。お前がこの世での使命を遂行し終わったときにはじめて、その箱の鍵は再び開けられ、お前は今経験したすべてのものがわかるだろう。」

 後にラーマクリシュナは、他の弟子たちに言いました。
「ナレーンドラが自分の真の本性を悟ったとき、彼はこの世にとどまるのを拒み、自らの意志で肉体を放棄するでしょう。しかし彼がこの世でなさなければならない仕事はたくさんあります。だから私は、絶対者の叡智に彼を近づけず、彼の目をマーヤーのヴェールで覆ってくれるように、母なる神に祈ったのだ。だがそのヴェールは、私も知っているが、いつでも引き裂くことが出来る、とても薄いものです。」

つづく

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