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「ナーグ・マハーシャヤ」(7)

 ラーマクリシュナの指示により、世を捨てて出家修行者となることは諦めたナーグでしたが、それでも彼は、家族を養う仕事が生活の中心となっている限り、霊的な完成に至ることは不可能ではないかと感じ、仕事をやめ、人生のすべてを瞑想と祈りに捧げる決心をしました。
 
 ナーグの雇い人であったパルス氏は、もはやナーグは通常の仕事を続けることは不可能であると理解し、今まで長年貢献してくれた御礼として、その後もナーグに給料を払い続けることにしました。こうしてナーグは、一日のすべてを修行に捧げつつ、家族を養っていくこともできることになったのでした。

 すべてのわずらいから解放されたナーグは、いっそう厳格な修行に打ち込み始めました。また、ラーマクリシュナのもとにも、以前以上に頻繁に訪れるようになりました。

 また、このころからナーグは、シャツを着ることと靴を履くことをやめ、代わりにただ布を身体に巻きつけていました。

 また、美味に対する欲望をコントロールするために、食事は、塩や砂糖などの一切の味付けをしませんでした。
 ナーグはこう言いました。 
「もし私が昼夜食事のことばかり考えなければならないなら、いつ私は神を思うことができようか。いつ礼拝することができようか。常に食事の質を考えることは、人に一種の狂気を作り出すのである。」

 ナーグは、お菓子なども一切とりませんでした。プラサード(神に捧げられたお供物のお下がり)以外は、決して甘いものをとらなかったのです。このように、彼自身は決しておいしい食物をとることはなかったのですが、尋ねて来る客人のために、いつもおいしいものを用意していました。

 ナーグは、家の一部を米商人のキルティヴァス一家に貸していたので、家には米ぬかが大量にありました。あるときナーグは、自分はその米ぬかだけを食べて暮らすべきだと考えました。彼はこう自問しました。
「私の肉体と精神をどうにか保つためには、それで十分である。味の良い料理の必要がどこにあろうか。」
 こうしてナーグは、米ぬかだけを食べて暮らし始めました。しかし数日後、それを知ったキルティヴァスは、米ぬかを全部売り払い、その後も家に米ぬかが残らないように配慮したのでした。

 キルティヴァスは、ナーグのことを深く尊敬していました。ナーグの家は大通りに面していたため、多くの乞食の群れが毎日のようにナーグの家を訪れましたが、誰一人手ぶらで帰る者はありませんでした。貧しいナーグは、乞食に施す一握りの米さえもないときもありましたが、そのような時はキルティヴァスが代わりに乞食に施しをしました。
 ある日、年老いた行者がナーグの家に物乞いに来たとき、ちょうど家にはナーグ自身が食べるための一食分の米しかなく、またキルティヴァスも不在でした。ナーグはその米を持って物乞いのところにいくと、謙虚な態度で、
「家には今、わずかな米しかございません。この米だけでも受け取っていただけるでしょうか」
と哀願しました。年老いた行者はナーグの謙虚で優しい心遣いに驚き、賛嘆の念とともに、米を手にして立ち去りました。

つづく

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