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「シヴァ神の武器」

(24)「シヴァ神の武器」

☆主要登場人物

◎ユディシュティラ・・・パーンドゥ兄弟の長男。クンティー妃とダルマ神の子。
◎ビーマ・・・パーンドゥ兄弟の次男。クンティー妃と風神ヴァーユの子。非常に強い。
◎アルジュナ・・・パーンドゥ兄弟の三男。クンティー妃とインドラ神の子。弓、武術の達人。
◎ドゥルヨーダナ・・・クル兄弟の長男。パーンドゥ兄弟に強い憎しみを抱く。
◎ドラウパディー・・・パーンドゥ五兄弟の共通の妻。

 森に住み始めた最初のころ、ビーマとドラウパディーは、ユディシュティラと時々口論をしました。ビーマとドラウパディーは、悪に対して義憤を感じるのは武士としては当然の感情であり、それを辛抱するとしたらその人はもう武士としての価値はない、と主張しました。一方のユディシュティラは、たとえ相手が悪であろうとも約束したことは守らねばならず、忍耐こそが最高の徳であると、きっぱりと主張しました。

 ビーマはもう我慢できず、すぐにでもドゥルヨーダナを攻め滅ぼしたいと思い、かっかしていたのでした。ビーマはユディシュティラに言いました。

「兄上の頭は、どうかしてしまったのではございませんか? 兄上は武士(クシャトリヤ)として生まれながら、武士らしい考え方をせず、僧侶のような気性を持っておられる。しかし聖典には、武士は武士らしく、厳しく行動的な気性を持つように勧めています。
 よこしまなドゥルヨーダナ一味に、勝手なまねをさせておくべきではございません。人をだます敵を打ち負かさない武士など、武士として生まれた価値はございません。兄上は、ドゥルヨーダナを打ち倒すことを、即座に決意すべきです。それこそが、武士の果たすべきつとめです。」

 しかしユディシュティラはさまざまな理由を述べて、彼らのはやる心を何とか抑えていたのでした。

 ある日、アルジュナは、神々に新たな武器を授けてもらうために、ヒマラヤに苦行をしに向かいました。
 アルジュナは、深い森を抜け、インドラキーラという山にたどり着き、そこで一人の年老いた苦行僧に出会いました。この苦行僧は実はアルジュナの父であるインドラ神の化身で、息子に会うのを楽しみにやってきていたのでした。
 アルジュナは、この苦行僧がインドラ神であることを見抜き、言いました。
「どうか、神々の武器をおあたえください。」

 インドラ神が答えました。
「アルジュナよ。武器などを手にしてなんになろう。何かほかの楽しみを求めたらどうじゃ。あるいはこの世よりももっと高い喜びのある、天の世界に行ってみたらどうじゃ。」

 アルジュナは言いました。
「おお、神々の王よ。私はこの世の楽しみも、天の世界も求めるつもりはございません。私はただ神の武器を求めて、兄弟や妻を森に残して、一人ここへやってきたのです。」

 インドラ神は答えました。
「もしお前が、三眼の神シヴァのお姿を見、その恩寵を得ることができたなら、お前は望みの武器を手にすることができるだろう。シヴァ神を念じて苦行に励むがよい。」
  
 こう言うと、インドラ神は姿を消しました。アルジュナはヒマラヤの奥深くに入り、シヴァ神の恩寵を得るべく、苦行に励みました。

 ある日、アルジュナが苦行をしていると、一匹のイノシシが、アルジュナめがけて突っ込んできました。アルジュナはとっさに弓でそれを射ましたが、それとまったく同時に、別の方向から矢が飛んできて、イノシシに刺さり、イノシシは倒れました。
 見るとそこには、一人の猟師が立っていました。アルジュナは言いました。
「おぬしは何者じゃ? なぜこんな山奥をうろついているのだ? 私が狙った獲物を横取りしようとするとは、不届きではないか?」

 その猟師は、笑って答えました。
「獲物のいっぱいいるこの森は、すべて私のものだ。お前は森の住人と言えるほど頑丈ではないようだし、お前の体つきや身のこなしからは、軟弱で贅沢な暮らしぶりが知れようというもの。むしろ私のほうが、お前がここで何をしているのか聞きたいものだ。」

 馬鹿にされたような気がしたアルジュナは、むっとして、矢を雨のようにその猟師に打ち込みました。しかし驚くべきことに、それらの矢はまったくその猟師の体に刺さることなく、みな吹き飛ばされてしまいました。
 矢が全部なくなってしまうと、アルジュナは弓でその猟師に襲いかかりました。しかしその猟師はあっさりとアルジュナの弓を奪い取り、大声で笑いました。
 森の中のごく普通の猟師のように見えるこの男に軽くあしらわれたアルジュナは、大変驚きましたが、それでもひるむことなく、今度は刀を抜いて戦いを続けました。しかしアルジュナの刀が猟師の体に当たると、なんと刀の方が粉々に砕けてしまいました。
 ついにアルジュナは、素手でこの猟師に立ち向かいましたが、猟師に力強く締め上げられ、アルジュナはまったくなすすべがなくなってしまいました。
 
 完全に打ちのめされたアルジュナは、もはやこれまでと観念して神の助けを乞い、シヴァ神を一心に念じました。
 するとそのとたん、一条の光がアルジュナの心に射し込み、この猟師の姿をとっている者こそが実はシヴァ神であるということがはっきりとわかったのでした。

 アルジュナはシヴァ神の足元にひれ伏し、後悔と畏敬のあまり、途切れ途切れしか出ない声で、神の許しを乞い願いました。シヴァ神は微笑んで、「許してつかわそう」と言うと、アルジュナに弓を返し、また、パーシュパタという不思議な武器を、アルジュナに授けました。

 負傷を負っていたアルジュナの身体は、シヴァ神が御手を触れると元通りとなり、以前よりも百倍も強く輝かしくなりました。

 シヴァ神はアルジュナに、
「天界に行き、お前の父親であるインドラ神に敬意を表するがよい。」
というと、姿を消しました。

 アルジュナは、喜びのあまり、思わず叫びました。
「シヴァ神の尊顔を拝し、御手に触れていただいたのは、まことであろうか? これ以上の幸せがまたとあろうか!?」

 その瞬間、インドラ神の御者であるマータリが、天の馬車を引いて現われ、アルジュナを神々の王国へと連れて行きました。

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