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「グル・リンポチェ」(6)

 ティソン・デツェン王やシャーンタラクシタ僧院長、グル・リンポチェ、ヴィマラミトラ師と、インドやチベットの学者たちの支援のもと、仏教はチベットにおいて確実に確立されていきました。学者たちはスートラとタントラの両方の教えを説き、多くのチベット人が偉大な学者や成就者になりました。ヴァイローチャナをはじめとした多くの偉大なチベットの翻訳者たちは、ヴィマラミトラやシャーンタラクシタ、グル・リンポチェ、そしてカマラシーラといった偉大なインドの学者たちの指揮のもと、多数のスートラやタントラをチベット語に翻訳しました。

 シャーンタラクシタは、チベットで最初の仏教僧として、七人の若いチベット人を選びました。彼らが僧院の規律に従い、合格したあと、数百人がそれに続き、世界で最も巨大な僧院組織のひとつになりました。

 グル・リンポチェは、ティソン・デツェン王やその家臣たちに、さまざまな教えやエンパワーメント、そしてタントラの伝授、特にグル・リンポチェがインドで八人の偉大な師から受け取った八つのマンダラの偉大なサーダナを授けました。このエンパワーメントの多くの受取り手の中で、八人がそれら八つのサーダナの有名な熟達者となりました。
 この時期のあいだに、サフラン色の僧衣をまとった僧院に住む禁欲主義の出家修行者と、白衣をまとい長髪で寺や村に住む在家の修行者という二つの体系が確立されました。
 白衣の在家の修行者の体系の導入により、ダルマは草の根レベルで保持され広がりました。

 グル・リンポチェと彼の配偶者のイェシェー・ツォギャルは、神通力を使ってチベット中を移動し、チベット人や他の生類の幸福、安全、未来の智慧のために絶えず働きました。二人はサーダナを行い、祝福を与え、体や手足の印を残し、そしてたくさんのテルマを隠していきました。

 グル・リンポチェは、たとえばタクツァン(今のブータン)などの13の異なる場所で、ドルジェ・トロ(気の荒い激怒のヴァジュラ)として憤怒の姿で現われ、すべての非人間的存在を調伏しました。
 グル・リンポチェがチベットを訪れているあいだ、彼は主な三つの目的を成就しました。
 はじめに、チベットでの仏法の確立の障害となっていた人間や非人間的存在の力を、霊的な力によって制圧しました。
 次にグル・リンポチェは、多くのチベット人弟子たちや支持者たちのために、一般的には仏教の教えを伝達し、特別にはタントラの祝福された力をもたらしました。

 そして、遠い将来において深遠な教えや神聖な書物などが雑に混合したり損なわれたりしないよう、また未来の支持者たちに彼らの祝福の力が再び注がれるように、グル・リンポチェは、ツォギャルと共に深遠な教えをテルマとして隠しました。グル・リンポチェの支持者たちは、彼のテルマの伝承によって、今日でもありありとした祝福の力と共に、彼の教えと予言を適宜に受け取っています。

 テルマの発掘方法は、主に二つに分類されます。第一は地球上の物質的テルマ(サテル)で、たとえば黄色い紙の巻物に書かれた象徴文字などがあります。しかしその象徴文字は、単なる発掘のための鍵に過ぎません。テルトンが象徴文字を発掘したとき、象徴文字を読み取り、ありのままの智性によって、彼の中に隠されていたグル・リンポチェのヴァジュラの説法の智慧の力を呼び起こします。象徴文字の熟考は、言葉の解読を可能にし、テルトン自身に隠された成就と隠された教えの伝達を次々と呼び覚まします。テルマやテルマの実体を支えるものとして、象徴文字に加えて、岩や湖、土や空から発見された完全な書物や薬材、画像や儀具、儀式の道具といった何千もの発見物もあります。

 二番目のカテゴリーは、精神的テルマ(ゴンテル)で、外的な要素に頼らないこと以外は、地球上の物質的テルマと同様です。 
 精神的テルマの多くは、発掘の要因となる象徴的な言葉や音をヴィジョンで見たり聞いたりしますが、テルマを発見する方法として、通常は外界の情報源に頼りません。テルトンは、環境や機が熟したときに、彼自身や内在的覚醒の広がりから無意識のうちに、伝達の覚醒によって精神的テルマを発見します。

 また、「純粋なヴィジョン」として知られる、教えの神秘的発見の三つめの重要な体系があります。それはテルマではありませんが、仏陀やダーキニー、ヴィジョンの中の師によって与えられる教えです。
 ただし、これによってテルマが発見される場合もあります。

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