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「アドブターナンダ」(8)

 1897年2月18日、スワーミー・ヴィヴェーカーナンダは、大成功した欧米の布教の旅から、インドのカルカッタへと戻ってきました。兄弟弟子やその他多くの人々が彼の元をたずねてきましたが、その中にアドブターナンダはいませんでした。
 ヴィヴェーカーナンダは、アドブターナンダはどこかとたずね、戸外の群衆の中にいると知ると、自らアドブターナンダを探しに出かけました。

 ヴィヴェーカーナンダはアドブターナンダを見つけ出し、たずねました。
「他の者はみな来た。どうして君は来なかったの?」
 アドブターナンダは答えました。
「あなたはいまや男や女の西洋人の弟子たちを抱えている。私はあなたが私を覚えているのかどうか、いぶかったのだ。」
 ヴィヴェーカーナンダは、アドブターナンダの手を握り締めて、言いました。
「君は私の同じ昔のブラザー・ラトゥだ。そして私は君の同じ昔のブラザー・ロレンだ。」

 ヴィヴェーカーナンダはまた、カルカッタに着くとすぐ、西洋で身につけていた高価な洋服をやめて、以前と同じように、粗末な布と靴だけを身につけていました。こうしてアドブターナンダは、ヴィヴェーカーナンダと話すことで、彼が西洋で大成功して多くの弟子たちを得ても、自尊心に心が曇らされることがなく、以前と同じように自分たちを見ていること、名声も地位も彼の自分たちに対する愛を損なわなかったということを理解したのでした。

 アドブターナンダは、ラーマクリシュナの教えを守り、色欲に心がやられてしまわないように、女性に近寄ることを極力避けていました。ある日、ヴィヴェーカーナンダとアドブターナンダがハウスボートに乗っていたとき、ヴィヴェーカーナンダは面白がって、ハウスボートの主人の若い娘に、アドブターナンダにキンマ巻きを渡してくるように頼みました。アドブターナンダは、ヴィヴェーカーナンダが自分をからかっているのだと気づいていましたが、彼はこの種の悪ふざけが大嫌いだったので、娘が近づいてくると、泳げないのに、氷のように冷たい水の中に飛び込んでしまいました。ヴィヴェーカーナンダは、アドブターナンダのこのような極端な反応は予想していなかったので、ボートの主人の助けを借りて、あわててアドブターナンダを救助しました。

 またあるとき、ヴィヴェーカーナンダは、ある古い寺院を訪ね、戻ってくると、その寺院はおそらく3000年前のものだろうと言いました。
 アドブターナンダが、
「どうしてそれがわかったのか」
とたずねると、ヴィヴェーカーナンダは冗談交じりにこう答えました。
「それを君に説明することは不可能だ。もっとも、君が少しでも教育を受けていたら、やってみないでもないが。」
 それを聞いて、アドブターナンダは言いました。
「わかった! やっと君の学識の深さがわかった。あまりにも深いので、私のような愚か者に説明するために浮かび上がってくることができないのだ。」
 これを聞いて、居合わせた者たちは大笑いしました。

 またあるとき、ヴィヴェーカーナンダと同様に西洋に布教の旅に出ていたサラダーナンダが、帰国し、そのころラーマクリシュナの弟子たちの僧院として使われていたベルル村のガーデンハウスに住み始めました。
 サラダーナンダはすっかり垢抜けて、部屋や持ち物をきちんと整理していました。
 アドブターナンダはよくサラダーナンダの部屋にやってきては、本を机からベッドに移したり、インク壷を片隅に隠したり、そんなことをして、整然と整理された部屋をかき回していました。それはほとんど彼の日課になっていました。
 また、サラダーナンダのベッドのシーツは清潔で真っ白でしたが、アドブターナンダは時々、清潔なベッドの上をわざと汚れた足で歩き回り、汚れた体でごろごろと転げまわり、そのあいだ笑い通しでした。
 サラダーナンダが、
「何をしているんだ、ブラザー・ラトゥ?」
と言うと、アドブターナンダは、笑ってこう答えるのでした。
「何もしていないよ。ただ、君が私たちの前の暮らし方を覚えているか試して、君がどれだけ西洋かぶれしたかを調べているのさ。」
 これを聞いてサラダーナンダも笑いました。

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