ソース
小さいころのこんな場面を覚えている。家族でレストランに食事に行ったときのこと、ウェイターが、私のズボンに、ソースか何かを少しこぼした。
ウェイターも、両親も、それに気づいていなかった。そして私は、とっさにそのズボンのシミになった部分を隠したのだ。この出来事を、誰にも悟られないように。
そのときの私の思いとしては、ただ単純に、これがばれたら、ウェイターさんが恐縮して悪い気持ちになるかもしれないし、私の両親に怒られるかもしれないな、それはかわいそうだ、と思ったのだ。
それから10年ほどたち、高校生くらいのころ、同じことが起きた。一人で喫茶店にいたとき、店員が、ソースか何かを、私のズボンにこぼした。そして店員は、それに気づいていなかった。
そのとき私は瞬間的に、
「ちょっと! こぼれましたよ!」
と、その店員に詰め寄った。
この私の被害を、加害者に主張しなければ!という強い気持ちで。
店員が恐縮して謝っているのを見て、私の心に、上述の子供のころの思い出がよみがえってきた。そして、
「ああ、私の心はいつの間にか汚れてしまった」と思った(笑)。
エゴを主張するようになってしまった今の自分より、子供のころのほうがずっと強く、純粋だったと感じた。
幸い、そのころすでにヨーガや仏教の修行を始めていた私は、これから修行によって、もっと心を浄化して行こうと思った。
それからさらに20年近く経った。
私の心は少なくともあの子供のころくらいには戻れただろうか。
子供のように楽しそうだとはよく言われるけど(笑)。
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