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二つの菩提心

【本文】

 要約して言えば、二種類の菩提心を識別すべきである。
 それは、菩提を願う心と、菩提への前進とである。

 行こうと願う人と、行く人の間に区別が認められるように、知者はこの両者の区別を順次に知るべきである。

 菩提を願う心だけでも、輪廻界において大果をもたらす。しかしそれには、前進の心を持つ人のような、不断の福善は生じない。

 無辺の衆生界を救おうと、不退転の心でこの菩提心を受持すれば、そのときから、
 眠りを好み、たびたび放心の起こる人にすら、大空に等しい不断の福善の流れが生ずる。

 小乗を信解する衆生のために、如来自ら「善臂問経」に、これを、証拠を挙げて説かれた。

【解説】

 菩提心には二つあるということです。
 菩提心とは、もう一度復習すると、「衆生を救うために、私は完全な覚醒を得よう」という勇猛な心です。

 そのような概念を聞き、あるいはそのような菩薩の話を読み、それにあこがれ、私もいつかそのようになりたいものだ、いつかそのような道を歩きたいものだ、と願うのが、第一番目の、「菩提を願う心」です。

 そして単なる憧れではなく、「よし、私は菩薩の道を歩くぞ」と決心し、具体的にその努力を始めたなら、それは「菩提への前進の心」を持ったことになります。

 たとえば、「プロ野球選手になりたいな」という憧れを持つ少年は多くいるでしょう。
 しかしこの少年がその憧れを明確な目標に変え、必ずプロ野球選手になろうと決意し、何らかの努力を始めたなら、これが前進の心なのです。

 この前進の心においては、現在の修行ステージの高い低いは関係ありません。
 本文にも書かれているように、眠りを好む怠け者でも、このような決心をしたときから、不断の福善の流れが生ずるというのです。

 「衆生を救うために、私は完全な覚醒を得よう」

 この決心を、ぜひ多くの人に持ってほしいと思います。
 それはあなた自身にとって最高の幸福をもたらす道であると同時に、あなたと縁のある多くの人々に、光と至福と救いをもたらす、奇跡の絆であるといえます。

 それができるのは、あなたの周りで、あなただけかもしれない。ぜひ前進の菩提心を持ってください。
 数え切れない衆生を救うために、私は完全な覚醒を得るのだ、何があっても諦めないぞ、という不退転の菩提心を持ってください。
 実際、その道は、多くの失敗と挫折を伴うでしょう。しかし何度挫折しても、すぐにまた立ち上がり、どんなにボロボロでかっこ悪い状態であろうとも、歩き続ける決心をしてください。それを不退転の心といいます。

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