yoga school kailas

ジャータカ・マーラー(9)「ヴィシュヴァンタラ王子」⑤

 さてある時、マドリー妃が木の根や果実を求めて出かけた時、ヴィシュヴァンタラ王子は二人の子を保護するために住居にいました。
 するとそこへ、疲れやせた顔をした一人のブラーフマナがやってきました。菩薩は、久しぶりに托鉢者が来るのを見て、歓喜の心から目も顔も輝きを増して、出迎えて歓迎の優しい言葉をかけた後で、来訪の目的を尋ねました。
 するとブラーフマナは、妻を愛するが故に、恥も外聞も捨てて、次のように言いました。

「私は妻から、召使を見つけてくるように、きつく言われてきました。
 布施の勇気より生じたあなたの輝かしい名声は、余すところなく知られています。
 それゆえ、恥を知りつつも、私はあえてお願いします。あなたの二人の子供を、召使として私にください。」

 こう言われて菩薩は、
「愛するわが子を二人とも差し上げよう。」
と答えました。

 しかし、自分たちが連れて行かれることを知って目に涙を浮かべた二人の子を見ると、ヴィシュヴァンタラ王子は彼らへの愛の衝動で心沈み、こう言いました。

「この二人はお前に差し上げよう。しかし今、この二人の母は、森に木の根や果実をとりに出かけている。夕暮れには戻るでしょう。
 母が子供たちに花飾りをつけ、着飾った子供たちにキスをしたうえで、ここで一晩休息し、明日、お前は私の子供たちを連れていくがよい。」
 
 しかしブラーフマナは言いました。
「あなたはそんなに執着するのはやめなさい。
 女をあらわす『ヴァーマ』という言葉は、『扱いにくい者』という隠喩を持つ。
 よって、あなたの妻は、あなたの布施の障害になるだろう。だから私は、彼女を待ちたくない。」

 菩薩は答えて言いました。
「彼女が布施の障害となると懸念するのをやめよ。彼女は私とおなじ義務を分担する者なのだから。
 しかし、お前の好きなようにするがよい。
 ところでブラーフマナよ。この私の子供たちは、全く幼稚で、召使の仕事についても経験もないのだが、どのようにしてお前に満足をもたらすことができるだろうか。
 しかしもし私の父であるシビ族の王が、このような状態にある二人を見たら、きっとこの二人の身代金として、お前の欲しいだけの財物を与えるであろう。
 だからお前は、この二人を連れて、シビ国に行くがよい。そうすればお前は大きな財産を得るであろう。」

 ブラーフマナは言いました。
「王の所にこの二人を連れて行ったら、王は私に罰を下すかもしれない。だから王のところへは行けない。私はこの二人を召使として妻の所へ連れて行くだろう。」

 そこで菩薩は、二人の子供に、召使としての仕事を順守するように愛を持って教えました。そのとき菩薩の両目から、自然に涙が流れ出ました。

つづく

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする