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「ヴィヴェーカーナンダ」(23)

 世界宗教会議の終了後、ヴィヴェーカーナンダは、ある講演事務所から、アメリカ講演旅行の誘いを受け、それを了承しました。
 しかしまもなくヴィヴェーカーナンダは、この講演事務所が利己的な目的のために自分を利用していることに気づき、この事務所との縁を切りました。そして自分自身でスケジュールを決め、多くの講演を行なっていきました。
 彼はアメリカのさまざまな主要都市に、旋風のような講演の旅に出ました。人々は彼を「サイクロンのようなヒンドゥー教徒」と呼びました。
 また、多くのキリスト教徒の牧師たちが、ヴィヴェーカーナンダの熱狂的な友となり、教会で話をしてくれるようにと彼を招きました。

 ヴィヴェーカーナンダは、ラーマクリシュナの教えである万教同根を説き、キリスト教の信仰にも深い理解がありましたが、同時に、間違ったキリスト教信仰や、多くのキリスト教指導者たちの偽善的行為に対しては、歯に衣着せずに厳しく糾弾しました。
 また、西洋諸国の武力制圧とキリスト教の宣教師たちの活動は、実に奇妙にもしばしば平行して進んでいると、ヴィヴェーカーナンダは指摘しました。多くの国々で、多くの者たちが、世俗的な理由のためにキリスト教への改宗を余儀なくされました。ヴィヴェーカーナンダはこう言いました。

「そのようなものは倒れます。それらは砂上の楼閣であり、長くは続きません。エゴイズムを土台とし、地位や名誉のために競争をし、現世的快楽を目的と持つようなものは、遅かれ早かれ滅ぶに違いありません。
 もしあなたがたが滅びたくないならば、キリストに帰りなさい。
 あなた方はキリスト教徒ではありません。
 キリストに帰りなさい。どこにも身を横たえる場所さえなかったキリストに帰りなさい。
 あなた方の宗教は、贅沢という名の下に説かれた宗教です。何という運命の皮肉でしょう! あなたがたは滅びたくないならば、宗教を完全に変えなさい。正反対のものにしなさい。あなた方は神と物欲の両方に仕えることはできません。
 この繁栄のすべて――このすべてはキリストから来ているでしょうか? キリストはこのようなことのすべてを否定されたでしょう。あなた方がこの二つ、このすばらしい繁栄とキリストの理想とを結びつけることができるなら、それは結構なことです。しかしできないならば、キリストの下に帰り、こういった無駄な探求を諦められたほうがいいでしょう。キリストのいない宮殿に住むよりも、彼と一緒にぼろを身にまとって暮らすがよろしい。」

 またあるときヴィヴェーカーナンダはボストンで、師であるラーマクリシュナについて話してくれるように依頼されました。 
 しかしヴィヴェーカーナンダは、演壇に立ってラーマクリシュナのことを考えつつ、気取ったアメリカの人々を見たとき、ラーマクリシュナの限りない清浄さと、この西洋の人々の汚れを比べてしまい、感極まって、激しく西洋社会の物質文化を罵倒しました。聴衆は憤慨し、多くの人々が腹を立てて帰りました。
 ヴィヴェーカーナンダは家に帰ると、自分の行ないを後悔して泣きました。せっかくラーマクリシュナのことを学ぼうとして集まった人々を、激しい非難によって怒らせて帰らせてしまった。自分はまだまだ師には遠く及ばないと思い、この日からヴィヴェーカーナンダは、人前でラーマクリシュナについて語ったり書いたりすることをやめました。

 ヴィヴェーカーナンダの歯に衣着せぬ多くの発言は、キリスト教の宣教師や信者たちの間に、激しい敵意を呼び起こしました。彼らは悪意と憎しみをもって、ヴィヴェーカーナンダを批判しました。ありもしない話を書いたり、ヴィヴェーカーナンダの性格についての悪口を言ったりして、彼の名声を傷つけようとしました。
 インドにおいてさえも、ヴィヴェーカーナンダの人気に嫉妬した一部の宣教師やヒンドゥー教の指導者たちが、その中傷のキャンペーンに加わりました。
 しかしヴィヴェーカーナンダは、いかなる妨害にも心を乱されることはありませんでした。

 またあるときは、ある宗教団体の関係者たちがヴィヴェーカーナンダに近づき、『もし自分たちに協力するなら援助を惜しまないが、もしそれを拒んだら危害を加えよう』と脅して、ヴィヴェーカーナンダを自分たちの団体に抱き込もうとしました。しかしヴィヴェーカーナンダは、堂々とこう答えました。
「私は真理のために公然と戦います。真理は虚偽とは絶対に手を結びません。たとえ全世界が私の敵に回ろうとも、真理は最後には勝つに違いありません。」

 ヴィヴェーカーナンダの炎のような講演活動は、多くの敵対者を生む反面、多くの信者も獲得しました。その中でも特に熱心な者たちが、徐々にヴィヴェーカーナンダのもとに集まり始めました。ヴィヴェーカーナンダは彼らを、将来のアメリカにおける救済の働き手として、ラージャ・ヨーガやジュニャーナ・ヨーガなどの方法で訓練し始めました。

 

つづく

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