クリッティヴァーサ・ラーマーヤナ(1)「ナーラーヤナの四つの顕現の降誕」
クリッティヴァーサ・ラーマーヤナ(ベンガル語版ラーマーヤナ)
第一話「ナーラーヤナの四つの顕現の降誕」
ゴーローカ、またはヴァイクンタ(宇宙の最高位の世界)――その主ガダーダラ(ヴィシュヌ)が、妃のラクシュミーと共にカルパヴリクシャ(如意樹)の下で住まわれる地は、常に太陽と月に照らされている。
そこで、ヴァナマーリーとも呼ばれるナーラーヤナは、美しき王座にヴィーラーサナ(勇者の姿勢)で座りながら住まう。
かつて、彼は地球に降誕しようと考え、ラグ族の家系にラーマ、バラタ、シャトルグナ、ラクシュマナという四つの姿で降誕された。
ラクシュミーはシーターとして化身された。彼女は黄金の日傘の下でラーマの左側に座し、ハヌマーンに恭しく礼拝されていた。バラタとシャトルグナは蠅払いを持って彼女にお仕えしていた。
そこはナーラーヤナの住居であるヴァイクンタの威厳に満ち溢れていた。
聖仙ナーラダは、あるときそこへ行き、ハリの御名を唱え、ヴィーナを弾いた。
パンチャーヤタナ(ナーラーヤナ)の威光を見るなり、聖仙ナーラダの心は歓喜で圧倒され、眼からは涙が溢れた。
ナーラダは、ナーラーヤナの御姿に驚嘆しながら、過去・現在・未来を知り、アンタラーヤミン(内なる感情を知る者)であり、疑念を取り除く御方であるシヴァの住処へ行こうと考えていた。
最終的にそう決めると、彼はカイラーサ山へと旅立ち、その途中でブラフマー神に会った。
彼は自分の気持ちをブラフマー神に語り、ブラフマー神と共にそのシヴァ神の住処へと向かったのであった。
そこで彼ら二人は、カイラーサ山の頂上に座すシヴァとパールヴァティーを見て、彼らに礼拝を捧げた。
するとシヴァは、彼ら二人に訪問の理由を尋ねた。
ブラフマーはボーラーナート(シヴァ)にこう語った。
「ゴーローカで、ナーラーヤナの驚くべき姿が目撃されました。彼は四つの姿をお取りになったのです。われわれは以前に、ナーラーヤナご自身にお目にかかったことがありますが、どうしてあの御方は四つの体に姿を変えられたのでしょうか。」
クリッティヴァーサは言う。このブラフマーの言葉を聞いてシヴァはこう仰った。
「あなたが見たナーラーヤナの御姿は、彼が六万年後に化身されたものである。
地上界には、ラーヴァナという恐ろしい悪魔がいて、ナーラーヤナはその悪魔を征服するために地球に降誕され、悪魔という重荷から地球を救ったのだ。
アヨーディヤーのダシャラタ王の家系に、ナーラーヤナは四人の姿(ラーマ、ラクシュマナ、バラタ、シャトルグナ)としてお生まれになった。
このようにして、ナーラーヤナは四つに分かれて、吉兆な兆候と共にダシャラタの三人の王妃たちから誕生されたのだった。
ラーマは父の言葉を重んじて、シーターとラクシュマナを連れて森へ行かれた。
そしてシーターを救うために、ラーヴァナを滅ぼされたのだった。
シーターはラヴァとクシャという名の二人の息子を生んだ。
人は一度ラーマの御名を唱えることによって、牛殺しのような極悪の罪から救われる。――さらにまた、ラーマの御名を唱えることによって、すべての罪は洗い流される。
あの大罪人でも、ラーマの御名を唱えるならば、輪廻の海を安全に泳ぎ渡り、彼岸(解脱)に達するのだ。」
ブラフマーは微笑みながら、トリローチャナ・シヴァに、その地上にいる大罪人とは誰かと尋ねた。
シヴァは耳を傾けて聞くように言い、このように話し始めた。
「マディヤ・パタ(中道)において、あの大罪人はラーマの御名を唱えることによって救われる。
さあ、あの大罪人に、罪を取り除くラーマ・マントラを与えてくるのだ。」
ナーラダは、その罪人というのは、聖仙チヤヴァナの息子のラトナーカラに違いないと思った。
その男は、森に住んで他人の所有物を強奪することを生業としている、罪深い追剥であった。
ナーラダとブラフマーは苦行者に姿を変えて、ラトナーカラの住む森へと向かった。
折よく、その日は誰も道も通らなかったので、ラトナーカラは何も略奪することができなかった。
そこで彼は樹の上に登り、一緒に彼の方に向かってくるナーラダとブラフマーを見つけたのだった。
ラトナーカラは森に身を隠して、その二人の苦行者の衣を強奪しようと考えた。
そして彼は鉄の棒を持ってその二人を襲撃したが、ブラフマーの魔力により、その鉄の棒は彼ら二人を傷つけることはなく、ラトナーカラの手から離れなくなってしまった。
ブラフマーは愛情をこめて彼にこう言った。
「お前は誰だね? 何の目的で、わしらの衣を奪い取ろうと思うのかね?」
ラトナーカラはこう答えた。
「俺はその衣を奪う。そしてお前たちには死んでもらう。」
ブラフマーはそれを聞いて、こう尋ねた。
「わしらを殺すなどという大罪を犯して、一体いくら儲かるというのだね?
百の敵を殺す罪は一頭の牛を殺す罪に等しく、女殺しは百頭の牛を殺すほどの重罪。
ブラーフマナを殺す罪は百人の女を殺す罪に等しく、ブラフマチャーリーを殺す罪は百人のブラーフマナを殺すのに等しい。
そしてお前がサンニャーシーを殺したときのその罪の重さは、克服不可能なものとなるだろう。
実際に、サンニャーシーが歩いた道は、聖都カーシーの四つのコーシャを歩いたのと同じ価値がある。
それでもお前の心が罪を犯すことを考えているのならば、そうするがよろしい。」
それを聞くと、追剥のラトナーカラは笑いながらこう言った。
「俺は毎日のようにお前のような苦行者を殺しているぞ。」
ブラフマーはこう答えた。
「それでもわしを殺したければ、虫がいず、臭気や愛欲のない聖地で殺しておくれ。
ガダー(棍棒)の一振りでわしを殺せば、きっと虫は死なないだろう。
おお、愚か者よ、人々から強奪して犯した罪を、一体誰がお前と分けあってくれると言うのか?」
ラトナーカラはこう答えた。
「俺、家内、親父、御袋――この四人で奪った食いものを分ける。
あいつらはきっと罪も分け合ってくれるだろうよ。」
これを聞いて、ブラフマーは笑ってこう言った。
「彼らがその罪を分け合ってくれるものか。
罪を犯すのはお前だ。どうして他人とその果報を共有できるというのか。
その家族のところへ行って、聞いてくるがよい。
そして帰ってきてからわしを殺せばよいだろう。
それまで、わしはその樹の下で座って待っておる。」
ラトナーカラは混乱しながらも、こう考えた。
「あれは俺を騙して逃げるつもりだな。」
するとブラフマーはこう言った。
「まあ信じなさい。わしは逃げぬよ。
さあ、妻、息子、父、母に聞いて来てごらんなさい。」
そして追剥は、苦行者たちが逃げていないかどうか、彼らが座っている樹の方を振り返って確認しながら、家に帰って行ったのだった。