聖者の生涯「ヴィヴェーカーナンダ」(4)
ラーマクリシュナは常に、ナレーンドラのことをあからさまに褒め称えました。
たとえばある日、ラーマクリシュナは、ブラーフモー・サマージの高徳な指導者であったケーシャブとヴィジャイの面前で、このように言いました。
「ケーシャブさんが具えている徳の、18倍の徳を、ナレーンドラは具えております。
私はケーシャブさんとヴィジャイさんのお二人の中に、ろうそくの炎のように燃えている聖なる光を見ますが、ナレーンの中の聖なる光は、太陽の光のように輝いています。」
ナレーンドラは、このように褒められても、喜ぶどころか、かえってわずらわしく思っていました。そして、師の自分へのあからさまな賞賛を愚かなこととみなし、師を厳しく非難しました。しかし非難されてもラーマクリシュナは、このように言い返しました。
「私はそう言わずにはおられないのです。
これは私の言葉だとでも思っているのかね?
母なる神が、お前のことをお告げになられたのだよ。それを繰り返しただけなのです。
母なる神は、ただ真実のみをお示しになられたのです。」
しかしナレーンドラは、ラーマクリシュナのそのような言葉を信用せず、それは幻想だと断定して、こう言いました。
「あなたが私を愛し、偉大な人間になるのを願うばかりに、そのような幻想が自然にあなたの心の中に生じるのです。」
子供のようなラーマクリシュナは、ナレーンドラにこのように言われて困惑し、母なる神に祈りを捧げました。すると母なる神は、ラーマクリシュナにこのように言いました。
「どうして彼の言葉を気にするのですか。ほどなく彼は、お前の言葉のすべてを真実だと認めるようになるでしょう。」
ラーマクリシュナの強烈な愛を受けても、ナレーンドラは口が悪く、師の宗教的体験を自制心の欠如だとみなし、批判しては面白がり、ラーマクリシュナのカーリー女神への礼拝をからかったりもしました。
あるときラーマクリシュナは、ナレーンドラに言いました。
「お前は私の母であるカーリーを信じないのに、どうしてここに来るのかね?」
ナレーンドラは答えました。
「私があなたに会いに来るからといって、カーリー女神を信じなければいけないのですか?
私はあなたが好きだから、あなたのところに来るのです。」
ラーマクリシュナは言いました。
「結構です。やがてお前は、私の母なる神を信じるばかりか、その名を聞いて涙を流すようになるでしょう。」
ナレーンドラは滅多に言葉に表わしませんでしたが、師に対して深い愛を抱いていたのです。あるときナレーンドラは、ラーマクリシュナについてこのように言いました。
「世間の人々は、愛とは何であるかを本当に知っているだろうか? 彼らはただ愛を見せびらかすだけです。師のみが、私たちを心から愛しているのです。」
つづく