ナーラーヤナの鎧
以下はヒンドゥー教の重要経典「バーガヴァタム」にある「ナーラーヤナ・カヴァチャ(ナーラーヤナの鎧)」といって、ナーラーヤナ(至高者ヴィシュヌ、クリシュナ)の様々な御名とマントラを唱え、加護を祈る儀式のマントラと詞章を要約したものです。実際にインドの僧がこの儀式をおこなうときはもう少し複雑なプロセスがいろいろありますが、最低限の内容をまとめてあります。
実はこの内容は、ちょうどあの地震が起きる日の朝に、まとめたものです。
特にヨーギーやバクタの方は、衆生が主に守護されることを願い、唱えてみるといいかもしれません。
鎧をつけるマントラも、自分だけではなく衆生がその鎧で守護されることを観想しながら唱えるといいでしょう。
ナーラーヤナ・カヴァチャ
手などを洗い清め、「ケーシャヴァ、ナーラーヤナ、マーダヴァ」と唱えながら口をすすぐ。
北の方角に向いて座る。
「オーム・ナモー・ナーラーヤナーヤ」
と唱えながら、身体の各部に鎧が着けられることを観想する。
オーム 足
ナ 膝
モー 腿
ナー 腹
ラー 心臓
ヤ 胸
ナー 口
ヤ 頭頂
「オーム ナモー バガヴァテー ヴァースデーヴァーヤ」
と唱えながら、両手の五本指と両足の親指に鎧が着けられることを観想する。
オーム
ナ
モー
バ
ガ
ヴァ
テー
ヴァー
ス
デー
ヴァー
ヤ
オーム 心臓を思念する
ヴィ 頭頂を思念する
シュ 眉間を思念する
ナ 後頭部を思念する
ヴェー 目を思念する
ナ すべての関節を思念する
「マハ アストラーヤ ファト」
と唱えながら、親指と中指を十の方向に向けて鳴らす。
そして、次の詞章を繰り返し唱える。
「神秘の聖音オームであらわされる主シュリー・ハリよ、
蓮華の御足をガルダの背におかれて、
八本の腕には、法螺貝と円盤、盾、剣、鎚矛、矢、弓、そして網を持たれて、さらに八つの神秘力を持つお方よ、
どうかすべての方位と危険から、我々をお守りください。
神聖なる魚の姿で、水の中で主が我々を、ヴァルナの綱である水棲動物から守ってくださいますように。
ヴァーマナの姿でこの地上で、空中ではトリヴィクラマの宇宙体で、どうか我々を守ってくださいますように。
四方をすさまじい笑いでふるわせ、ヒラニヤカシプを殺された主ナラシンハが、森や戦いの地など危険に満ちたすべての場所で、どうか我々を守ってくださいますように。
その身に供儀を体現されて、牙で地球を持ち上げた神聖なるヴァラーハが、どうか道上で、パラシュラーマが山頂で、ラーマがラクシュマナと共に、我々が家から離れているときに、どうか守ってくださいますように。
人の不幸を呪うような悪意ある宗教行事や怠慢の罪から、神仙ナーラーヤナが、どうか我々を離してくださいますように。
聖仙ナラが、慢心からどうか我々を離してくださいますように。
ヨーガの大師ダッタートレーヤが、ヨーガの実習の放棄から、どうか我々を守ってくださいますように。
プラクリティの主であるカピラが、カルマの束縛から、どうか我々を守ってくださいますように。
神仙サナトクマーラが、愛欲から、どうか我々を守ってくださいますように。
主ハヤグリーヴァが、道で出会う神像への無視から、どうか我々を守ってくださいますように。
神仙ナーラダが、神への礼拝法における過ちから、どうか我々を守ってくださいますように。
神聖なる亀の姿のハリがすべての地獄から、どうか我々を守ってくださいますように。
主ダンワンタリが不健全な食べ物から、どうか我々を守ってくださいますように。
心を制圧した主リシャバが、相対する二相の恐れから、どうか我々を守ってくださいますように。
主ヤジュニャが、公衆の面前での不名誉から、バララーマが、人間の手による死から、シェーシャが、クローダヴァシャという蛇族から、どうか我々を守ってくださいますように。
主ヴィヤーサが、無智から、どうか我々を守ってくださいますように。
主ブッダが、外道の教えと、使命の放棄から、どうか我々を守ってくださいますように。
ダルマの保護のために現れる主カルキが、最悪の時代カーリー・ユガのけがれから、どうか我々を守ってくださいますように。
主ケーシャヴァが昼の一番目の時間に、ゴーヴィンダが二番目の時間に、槍を手に持ち水に住むナーラーヤナが三番目に、スダルシャナを持つ主ヴィシュヌが四番目の時間(正午)に、我々を守ってくださいますように。
恐ろしき弓を持つマドゥスーダナが五番目の時間に、我々を守ってくださいますように。
ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァの三つの気高き姿で現れるラクシュミーの夫が、六番目の時間に、我々を守ってくださいますように。
主フリーケーシャが夜の一番目の時間に、主パドマナーバが二番目と三番目の時間に、我々を守ってくださいますように。
シュリーヴァッツァを持つ主が四番目の時間に、手に剣を持つジャナールダが五番目の時間に、ダーナモーダラが六番目の時間に、我々を守ってくださいますように。
カーラとして現れるヴィシュヴェーシュワラが夜明けと夕暮れに、我々を守ってくださいますように。
鋭き刃を持つスダルシャナよ、宇宙崩壊時に現れる火のように、主の御手にて投げられて、火が風にあおられて干し草を燃やすように、すべての場所で回転して、すべての敵を燃やし尽くしたまえ。
ヴァジュラのごとき力を持つ、主の愛する鎚矛カウモーダキーよ、先から火花を散らして、クースマーンダを、ヴァイナーヤカを、ヤクシャとラークシャサを、ブータを、グラハを、滅ぼしたまえ。殲滅したまえ。粉みじんとしたまえ。
法螺貝の王パーンチャジュニャよ、主クリシュナに吹かれて、恐ろしきとどろきにて、敵を震え上がらせたまえ。人食い鬼を、プラマタを、マートリカーを、悪霊を、ブラフマラークシャサを、子鬼どもを、その他邪悪な目をする霊どもを、ことごとく除きたまえ。
鋭き刃を持つ最高の剣ナンダカよ、主に指示されるがまま、我が敵の群れを刈り取りたまえ。
月のように輝くシャタチャンドラよ、悪しき敵の目を覆って、邪悪な目を持つ霊を盲目としたまえ。
悪霊、彗星、邪悪な者、爬虫類、肉食獣、亡霊、恐るべき罪など、それら我々の幸福を邪魔するすべてのものが、主の御名を唱えることによって、直ちに滅ぼされますように。
賛歌で称えられるヴェーダの体現、栄光に満ちた強大なるガルダが、そして主の従者ヴィシュワクセーナが、ただその御名を唱えるだけで、我々を危険から守ってくださいますように。
すべてのハリの御名とハリのお姿、そしてその武器が、主を背に乗せるすべてのものが、どうか我々を困難から守ってくださいますように。
主の従者の最高者が、我々の理性とインドリヤ、そして心と生命を、どうか保護してくださいますように。
主お一人だけが、姿持つもの持たぬもの、それらのすべてを構成される。その真実ゆえに、どうか我々のすべての困難が、終わりを迎えることができますように。
自分は主と一体であると悟るなら、主は彼にとって区別されて見えぬものの、主はマーヤーによって、様々な能力と姿、名称、宝石と武器を持って顕現されるのです。どうかこの真実ゆえに、全能で遍満される主シュリー・ハリが、そのすべての顕現によって、いつでもどこでも、我々を守ってくださいますように。
咆吼にて信者の恐れを吹き消し、その輝きで天体を覆われる主ナラシンハが、上でも下でも、内でも外でも、世界の四隅とその間のすべての場所で、どうか我々を守護してくださいますように!」