☆上に引き抜くこと(ポワ)
☆上に引き抜くこと(ポワ)
死に際して意識を上に引き抜くというこの教えは、無上ヨーガタントラの大きな特徴の一つである。これは非常に大きな意味のある教えなので、努力して修習しなければならない。
ポワの法を死の際に実際に実践するには、身体の気道が浄化されていなければならない。浄化されていないのにイメージだけでポワを行なっても、それは意味がない。
よって生きているうちに、チャンダーリーの火の修行によって、気道を清浄にしておく必要があるのである。
実際のポワの法の修習の仕方は、流派によってさまざまな方法があるが、ここではその一例を紹介しよう。以下に示すものはあくまでも概要であり、実際の細かいポイントは、熟練した師の指導を受けるべきである。
一般に、天界に対して転移(ポワ)をするという教えもあるが、タントラ部の意図は、グルと同一であるイダムに対して転移(ポワ)するということであり、そのためには頭頂のブラフマ・ランドラより意識を引き抜かねばならず、その他の九つの門からエネルギーや意識が出ることを防がなければならない。そのためには、頭頂以外の九つの門に種字を観想することで蓋をすることと、壺の呼吸法を行なうことが有効である。
自分をイダムとして明らかに観想し、へそに赤いア字、心臓に濃いブルーのフーム字を観想する。
次にアパーナ気を上に引き上げて、へその炎を上昇させ、心臓のフーム字に溶け込ませる。
さらにフーム字を上昇させ、頭頂に到達させ、また心臓に下ろす。
この修習を、頭頂がかゆくなったり、震動が生じたりなどの兆候があらわれるまで、何度も繰り返す。
その後、帰依と発菩提心を念じ、前方上方の空間に、グルと同一であるイダムの姿を観想し、強い信と尊敬の思いを呼び起こさせる。
次に「ヒック!」と何度も唱えながら、アパーナ気を引き上げ、へその炎が上昇して心臓のフーム字に溶け込むことを観想する。
次に「ヒック!」と7回から21回唱えることで、心臓のフーム字が上昇して、頭頂のブラフマ・ランドラを突き抜ける。このとき、ブラフマ・ランドラは、ちょうど日の光が差し込む天窓のように白く光り輝いていると観想する。
さらに「ヒック!」と強く数回唱えることで、頭頂から出たフーム字はさらに上昇し、グルと同一であるイダムの心臓に溶け込み、無分別の状態にとどまる。