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M――使途にしてエヴァンジェリスト(3)

M――使徒にしてエヴァンジェリスト  
続・ラーマクリシュナの福音

「目的と手段――神の悟りと無私の行為」(1)

 ほうきで庭を掃除しているブラフマチャーリーは、Mにそばに呼ばれ、何かを耳元でささやかれた。ブラフマチャーリーはすぐに沐浴をして礼拝部屋に入る。午前8時である。
 礼拝部屋は、ついたてによって仕切られたMの居間のほんの一部分である。荷箱に1枚の布がかけられ、その上には赤ん坊のクリシュナの陶製の像と、シュリー・ラーマクリシュナの写真が置かれていた。どちらとも南に面している。信者たちは写真と像の方を向いて、床の上にひかれたブランケットの上に座っている。祭壇と信者たちの距離は約6フィートである。真ん中には僧のための敷物があり、その両側にはさらに瞑想用の座が2つある。左のものはMのために取っておかれている。朝夕、そこでお香が焚かれている。正午には、いくつかの果物と甘い菓子が捧げられる。朝にはMはここに座り、ウパニシャッドを声に出して読んで解説し、そして夜にはコタムリト(シュリー・ラーマクリシュナの福音)を解説している。ときどきは、ほかの者が読んで、Mが解説している。

 この聖堂にはなんの装飾もないが、神聖な雰囲気に満たされ、見事なだけではなく、いつの間にか皆の気持ちを高めている。入ってくる者はそれを感じる。ガンガーでの沐浴が身体を元気にするのと同じように、このシンプルな聖堂に入ることで、心は非常に純粋な感覚に圧倒され、喜びに満たされるのである。

 Mは自分の席に座り、ブラフマチャーリーに、正面に座るよう指示される。両者とも静かに瞑想する。このようにして1時間があっという間に過ぎる。ベルル・マトの信者でありシュリー・マハラジ(ブラフマーナンダ)にイニシエートされた弟子であるプリン・ミトラと彼の義理の息子ラナデがやってきて、タクルの前のブランケットに座る。ラナデは大学の最も高い試験に合格した。プリンは、望ましくない世俗的な状況に直面しなければならなくなり、不安の犠牲者となっている。

 彼は言った。

「さて、マスターマハーシャヤ! タクルはなぜわたしたちにそのような困難をお与えになるのでしょうか?」

 Mは答えた。

「荒れ狂う波がなくては、人は逞しい船乗りになることができない。だから、人生での波瀾も必要なのだよ。これらの試練を通じて、真理の道が見出される。
 ほら、生きている間に偉大になった人々は、どのように無数の困難を経験しなければならなかったかね? やさしい航海は弱さの源だ。神は、引き上げたいと望む者を困難の中に投げ込まれるのだ。絶え間なく燃え上がる火で焼かなければ、マカラドワージャは作ることができない。危険な波が人を強くするのだよ。グルやそのような人の人生の出来事は、事細かに学んで考えるべきだ。彼らが越えてきた試練や苦難について考えなさい。そうしてのみ、人の力は増大し、心は強化されていくであろう。
 マハラジ(スワミ・ブラフマーナンダ)の人生を見てみなさい。彼はなんと深い愛情を妻に抱いていたのだろう! しかし、彼はまさにその妻を放棄して僧になったのだよ。さらに彼は放浪僧をしている時に、妻の死の知らせを聞いたのだ。彼はラホーレでその知らせを電報によって知り、空を見つめて立しつくしていた。そのあと再び、あなたはヴリンダーヴァンのクスム湖でタパシャーを実践している彼に会っている。――なんと厳しい苦行をされていたことか! わずかのパンの托鉢で生活し続け、朝しばらくの間それらを水に浸して、夜にそれらを食べていたのだよ。このような人生の波を経験してはじめて、人は偉大になることができるのだ。
 常にグル、パラマハンサデーヴァ(ラーマクリシュナ)の唇から、『わが子よ、人生の唯一の目的は神の実現なのだよ。もしそれがなければ人生は無駄だ』と聞いていたマハラジが、一体そのほかに何をすることができたというのだろうか? シュリー・グルデーヴァのこの教えを受け入れて、非常に多くの困難や苦難を経験して、彼はとても偉大になったのだよ。
 パラマハンサデーヴァは親しい弟子たちにこのように仰っていなかったかね?

『本当に、本当に、わたしはあなたに誓って言う。わたしを思う者はだれでも、まさに息子が彼の父親の財産を相続するように、わたしの財産を相続するだろう。つまりわたしの財産とは、ジュニャーナとバクティ(叡智と信仰)、ヴィヴェーカとヴァイラーギャ(識別と放棄)、シャーンティとスカ(平安と至福)、プレーマとサマーディ(愛とサマーディ)だ。』

 人は、自分のグルの人生を深く学ばなければならない。そのときに初めて、強さを受け取るだろう。わたしはまったく何もしていなかったのに、早急な結果を期待していた――なんと信じ難い考えを持っていたのだろうか! 前には世俗の荒波が広がり、中間ではグルの指示という船があり、そして最後に神の悟りだ。」

ラナデ「西洋の歴史家は『6人の偉大な人物』というタイトルの本を書きましたが、タクル(ラーマクリシュナ)の名前がそこにはありませんでした。」

M「タクルと等しいものがどこにあるのだね? 誰が彼について説明することができたのかね? 彼らはどのようにして彼を知るというのだろうか? 彼らに何の過ちがあるというのだね? 彼だけが彼ご自身と等しいのだよ。スワミジ(ヴィヴェーカーナンダ)でさえかなわなくて、タクルを語ることがなかったのだから。」

プリン「スワミジがラージプタナにて、異なる言語で融通が利かない議論の中で、バクティの教義の素晴らしい解釈を与えて聴衆を魅了されたと聞きました。スワミ・ニランジャナーナンダはそのためにスワミジへ大きな称賛を示されました。これを聞いたスワミジはおっしゃいました。

『ヴィヴェーカーナンダ、ヴィヴェーカーナンダと、なんとつまらないことを繰り返すのだろう! グルの恩寵によって、学問の女神サラスヴァティーが私の舌先でお遊びになっておられたのを知らないのですか。一握りの塵から、彼――このラーマクリシュナは、ヴィヴェーカーナンダの刺繍を作ることができるのです。』」

M「スワミジは、タクルのほかに何も知らなかったのだよ。彼によって書かれた(タクルへの)賛美と献身の賛歌を読んで、あなた自身の目で確かめてみなさい。献身の賛歌の中で、彼は言っている。

『おお、貧者の友よ! 汝だけがわが避難所です。』

 またさらに彼はこう言っている。

『汝の御足は生と死の鎖を断ち切って、人間に不死を授けられる。』

 すなわち、彼を瞑想する者はだれでも、生と死の輪の中に再び落ちることがないということだ。死への恐れが消え去るのだよ。スワミジがこのように話すのは、何の不思議なことでもない。」

 現在はおよそ11時頃である。昼食の呼び声がかかり、さらにプリン・バーブの信仰歌の準備が進められている。たいていの日は11時までに昼食が終わる。

 Mは言った。

「人はパンだけで生きるものにあらず。」(マタイの福音 4:4)

 プリン・バーブは耳に心地よい声で、ハルモニウムの伴奏に合わせてチャンディへの賛歌を歌う。

 ――宇宙の太初の原因、偉大なる保護者、神聖な光輝の女神シヴァーよ、わたしは汝に帰依いたします。
 幾度も幾度もわたしは汝に帰依いたします。

 宇宙の偉大なる破壊者、さらに宇宙の育児婦である者、永遠なる実在者ガウリーよ、わたしは汝に帰依いたします。

 すべての徳性の授与者、すべての発展の原因、すべての奇跡的な力の源である母よ、わたしは汝に帰依いたします。

 不運の女神アラクシュミー、またさらに繁栄、王たちの豊かさであるラクシュミーである母よ、私たちは頭を垂れて汝に敬礼します。おお、大いなる導く力であるシヴァーよ!

 得るのが非常に難しい、すべての困難を除き去る御方、すべての力強さ、一切衆生の父親、すべての名立たる者たちの真我――
 永遠なる黒、煙の色の闇、優雅かつ恐ろしい母よ、私は汝に帰依いたします!

 宇宙の物質的な原因、宇宙に充満している活動的な神聖なる力よ、わたしは汝に帰依いたします。

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